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PRESS RELEASE (サービス)

2013年12月19日
富士通株式会社

東京大学 先端科学技術研究センター様のIT創薬研究向けシステムに
「TCクラウド」サービスを提供

クラウド上で日本最大規模(10,000CPUコア以上)のHPCサービスを提供

東京大学 先端科学技術研究センター(所在:東京都目黒区、所長:西村 幸夫、以下、東大先端研)様は、このたびIT創薬(注1)手法に基づく新薬研究の加速を目的に、当社の解析シミュレーション向けクラウドサービス「FUJITSU Technical Computing Solution TCクラウド(以下、TCクラウド)」を採用されました。

今回、当社が提供する「TCクラウド」サービスは、PCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY CX250 S2/CX270 S2」により構成され、230テラフロップス(以下、TFLOPS)(注2)を超える計算能力(CPUコア数10,000個以上)と、250TFLOPSを超えるGPGPU技術(注3)によるアクセラレーション機能を備えた日本最大規模(注4)のシステムとなります。

本サービスは、2014年1月1日から利用開始される予定であり、日本最大級のクラウド上のHPCサービスとして日本の創薬研究を支える基盤になると期待されています。

クラウド環境としたことにより、大学構内における電力使用の制約を受けることなく、大規模な計算環境の構築が可能となるとともに、大学構内に研究環境があるのと同様の利便性を持つサービスを実現します。また、今後の研究規模の拡大に応じた計算リソースの強化にも柔軟に対応できます。

当社は、東大先端研様向けのクラウドサービスをはじめとして、「TCクラウド」の創薬分野への適用拡大を進め、ICTによる健康かつ安心な社会の実現へと取り組んでまいります。

  1. 導入の背景

    東大先端研様では、コンピュータを利用して医薬品を開発するIT創薬に基づいて、がんや生活習慣病などを治療する画期的な新薬の研究に取り組んでいます。

    患者ごとのきめ細かな医療を実現するこれからの新薬研究には、従来の物理的な実験に加えて、コンピュータシミュレーションによる生体内でのタンパク質の振る舞いを理解することが必要となっており、発生する膨大な計算を処理するには、大規模、高性能なシミュレーション環境が必要でした。しかし、大学構内における電力使用量には制限があるため研究環境の構築には自ずと一定の制約が生じるという課題がありました。さらに、今後の研究規模の拡大に備えて計算リソースの強化にも柔軟に対応したいという課題もありました。

    図1: 「TCクラウド」上に構築されたIT創薬研究環境
    図1: 「TCクラウド」上に構築されたIT創薬研究環境

  2. 今回提供する「TCクラウド」サービスについて

    これらの課題に対応するため、東大先端研様は、日本で最大規模のIT創薬用シミュレーション環境をプライベートクラウドにより実現することを決定されました。

    今回提供する「TCクラウド」サービスの概要は以下のとおりです。

    1. 計算環境
      • ハードウェア:当社製PCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY(プライマジー) CX250 S2/CX270 S2」
      • CPU:10,000CPUコア以上、理論ピーク性能230TFLOPS超
      • GPGPU:理論ピーク性能250TFLOPS超
    2. 計算ストレージ
      • ハードウェア:当社製ストレージシステム「FUJITSU Storage ETERNUS(エターナス) DX80 S2」
      • ファイルシステム:スーパーコンピュータ「京」(注5)の技術を応用した高性能スケーラブルファイルシステムソフトウェア「FEFS(エフ・イー・エフ・エス)」 (注6)を適用。
    3. プレポスト環境

      動画や高精細な画像の表示に対応した仮想デスクトップ高速表示技術「RVEC(レベック)」(注7)により、東大ネットワーク上の端末からの入力データの加工(プレ処理)や、クラウド上のシミュレーションデータのリモート可視化(ポスト処理)に対応。

    4. ネットワーク接続環境

      東京大学のネットワークと当社データセンター間を、学術情報ネットワークSINET4(サイネット・フォー)(注8)を経由した高速専用ネットワークで接続。

  3. 今後の展望

    東大先端研様は2014年1月1日から本サービスの利用を開始する予定です。これにより、IT創薬研究でシミュレーションを本格的に利用できる環境が実現し、従来はシミュレーションに時間がかかりすぎることで普及が進まなかった実用研究での利用を促進し、従来の実験的手法に基づく創薬では発見することが難しかった画期的な新薬の開発に役立つことが期待されています。将来的には、本環境を用いて、製薬会社などの民間企業との共同研究などでも利用される予定であり、日本の創薬研究の基盤としての活用が見込まれます。

    一方、当社では、IT創薬における理論から実践までをカバーする世界トップレベルの技術と人材を保有しています。今回受注したサービスの構築、運用支援を通じて蓄積するノウハウと、当社の低分子医薬品の設計・評価技術(注9)を組み合わせることで、今後「TCクラウド」の創薬分野への適用拡大を進め、ICTによる健康かつ安心な社会の実現へと取り組んでまいります。

東京大学 先端科学技術研究センター 教授 児玉 龍彦様のコメント

コンピュータの性能向上により医薬品の候補化合物の生体内での効果を詳しくシミュレーションできるようになってきた。日本最大規模の創薬専用のHPCクラウドサービスの導入により、すぐれた医薬品をいちはやく開発するためのシミュレーション環境が利用できるようになった。東大先端研の創薬研究の蓄積と今回のクラウドサービスの活用で画期的な新薬の開発に取り組んでいきたい。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 IT創薬:
医薬品の候補となる低分子化合物などをコンピュータを利用したシミュレーションにより探索する手法。
注2 テラフロップス(TFLOPS):
1テラフロップスは毎秒1兆回の浮動小数点演算速度。
注3 GPGPU技術:
General Purpose computing on Graphic Processing Unit技術の略。本来、画像処理に用いられる専用プロセッサを、画像処理以外の一般計算用途に応用する技術。
注4 日本最大規模:
CPUとGPU合わせて480TFLOPS超の理論ピーク性能は、IT創薬用プライベートクラウド環境として日本最大規模。2013年12月19日現在。当社調べ。
注5 スーパーコンピュータ「京」:
文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、独立行政法人理化学研究所と当社が共同で開発を行い、2012年9月に共用を開始した計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。
注6 FEFS(エフ・イー・エフ・エス):
「FEFS」の名称は「Fujitsu Exabyte File System」の頭文字に由来。
注7 RVEC(レベック):
Remote Virtual Environment Computing。富士通研究所が開発した仮想デスクトップ高速表示技術。
注8 SINET4(サイネット・フォー):
日本全国の大学、研究機関などの学術情報基盤として、国立情報学研究所(NII)が構築、運用している情報通信ネットワーク。
注9 低分子医薬品の設計・評価技術:
疾患の原因となるタンパク質にもとづいて医薬品の候補化合物を設計する「OPMF(オー・ピー・エム・エフ)や、富士通研究所が開発した候補化合物の活性を実験に匹敵する高い精度で予測する「MAPLE CAFEE(メープル・カフェ)」などの当社独自技術。

関連リンク

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受付時間: 9時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日・年末年始を除く)


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