PRESS RELEASE (技術)
2013年6月17日
Fujitsu Laboratories of America, Inc.
Massachusetts Institute of Technology
インターネット上のオンライン学習を効果的に進める学習基盤技術を開発
数十万単位の学習コンテンツのナビゲーションや学習効果の測定をシミュレーションで実現
Fujitsu Laboratories of America, Inc. (注1)とMIT(Massachusetts Institute of Technology) (注2)は、オンライン学習を効果的に進める学習基盤技術を開発しました。
近年、インターネット上には様々なオンライン学習のコンテンツが公開されていますが、無数に散在するコンテンツの中から学習者の目的に合ったものを簡単に見つけたり、理解度や嗜好に応じて最適な学習コンテンツや学習順序をシステムが提示してくれるなど、ICTをフルに活用した学習環境の提供は実現できていませんでした。
今回、大量の学習コンテンツを階層状のトピックでまとめてナビゲートする技術の開発により、学習者にとって困難であった数十万単位の学習コンテンツのナビゲーションを実現しました。また、学習者の学習行動をシミュレートする技術の開発により、システムの提供者にとって大きな課題であった学習効果の測定を、実際の学習者を使わずにシミュレーションにより実現しました。
Fujitsu Laboratories of America, Inc. とMITでは、今回開発した技術の実装をすすめ、大学や企業における大規模なオンライン学習システムへの適用を推進します。
本技術の詳細は、6月17日(月曜日)から米国・マサチューセッツで開催される国際会議「LINC 2013 (Learning International Networks Consortium 2013)」にて発表いたします。
開発の背景
近年、インターネット上には、OER(Open Educational Resources)(注3)と呼ばれる無料で公開されている優良な学習コンテンツや、10万人規模の生徒が一度に履修できるMOOCs(Massive Open Online Course)(注4)と呼ばれるオンラインの学習コースが米国の大学を中心に次々に公開されています。こういったインターネットの特長を活かした場所と時間を選ばない自由な学びのスタイルは、「オープンエデュケーション」と呼ばれ21世紀の教育のあり方を変える大きな潮流として注目されています。
Fujitsu Laboratories of America, Inc. とMITは、2010年より、オペレーションズ・リサーチの世界的権威であるMITのProf. Richard Larsonの研究グループと教育分野におけるヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現に向けた共同研究を推進してきました。
課題
インターネットの活用によって、世界中の学習者に、平等に学びの機会が与えられるようになった一方で、インターネット上に無数に散在するコンテンツの中から学習者の目的に合ったものを簡単に見つけたり、学習者の理解度や嗜好に応じて最適な学習コンテンツや学習順序をシステムが提示するなど、ICTをフルに活用したヒューマンセントリックな学習環境の提供はまだ実現できていません。今後、確実に広がっていくオンラインの学習環境の課題を調査し、学習者にとって理想的な環境として設計し、実際のサービスとして実装していくことが求められています。
開発した技術
本基盤は、検索エンジンやEコマースサイトなどで現在実現されているパーソナライゼーションの機能を学習の分野に適用して、学習者の理解度のレベルや嗜好に応じて最適な内容、種類、順序で学習できるように設計されています。今回、大量の学習コンテンツを階層状のトピックでまとめてナビゲートする技術の開発により、学習者にとって困難であった数十万単位の学習コンテンツのナビゲーションを実現しました。また、学習者の学習行動をシミュレートする技術の開発により、システムの提供者にとって大きな課題であった学習効果の測定を、実際の学習者を使わずにシミュレーションにより実現しました。開発した技術の特長は以下の通りです。
- 大量の学習コンテンツを階層状のトピックでまとめてナビゲートする技術
各学習コンテンツから分類に相当する概念レベルのトピックを抽出し、大分類、中分類など概念の大きさが異なるトピックを階層状に自動的に配置します。各トピックは対応する学習コンテンツに紐付いており、1つの学習コンテンツは複数のトピックに対応しています。例えば微分積分学における導関数について理解を深めようとした場合、微分学の講義ノートや、導関数を用いる力学についてまとめたビデオなどの学習コンテンツが学習者に推薦されます。図1の例では、物理学に該当するトピック、力学に該当するトピックを経て、実際の学習コンテンツであるビデオ教材 にアクセスできます。
- 大規模なオンラインシステムにおける学習者の学習行動をシミュレートする技術
学習者の知識量や正答率などを確率変数としてモデル化し、複雑な学習行動を再現するアルゴリズムを初めてシミュレーションに適用することにより、大規模なオンライン学習コースにおける学習者の学習過程をより現実に近い形でシミュレーションすることに成功しました。
図1 階層的なトピックを利用した学習コンテンツのナビゲーション
効果
今回開発した技術を用いることで、学習者にとって困難であった数十万単位の学習コンテンツのナビゲーションをコンテンツからの概念レベルのトピック抽出により実現し、システムの提供者にとって大きな課題であった学習効果の測定を、実際の学習者を使わずにシミュレーションにより実現しました。
学習者は従来型のキーワード検索では見つけ出すことができなかった学習コンテンツを簡単に見つけたり、複数のトピックに関連する学習コンテンツを利用することでより知識を深めることができます。また、システムの提供者はシミュレーションによって、大規模なオンライン学習システムの中から、学習者に対して最も学習効果が得られる最適な学習コンテンツを推薦する方法を簡単に見つけ出すことができます。
今後
現在、世界で最も注目されているMOOCsの一つであるedX(注5)プロジェクトへの導入を視野に入れながら、MITに設置されている将来の理想的な学習環境を検討する研究機関(OEIT (Office of Educational Innovation and Technology) 、 ODL (Office of Digital Learning))と協力して、本基盤の開発を進めていきます。また、富士通のお客様である大学や企業における大規模なオンライン学習システムへの適用を推進していきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 Fujitsu Laboratories of America, Inc.:
- President & CEO木村康則、米国Sunnyvale, CA。
- 注2 Massachusetts Institute of Technology:
- 学長 ラフェール・リーフ、所在地 マサチューセッツ州ケンブリッジ市。http://linc.mit.edu/
- 注3 Open Educational Resources (OER):
- 教育、学習、評価、研究などの目的で無償で公開され利用可能なビデオやドキュメントなどの教育コンテンツの総称。
- 注4 Massive Open Online Courses (MOOCs):
- 無償で参加可能なオンラインの大規模講義の総称。講義は主にビデオで構成されているが、課題提出や講義内容に関わる議論が可能なフォーラムなどを備え、インタラクティブに学習を進められるように設計されている。
- 注5 edX:
- MITとハーバード大学によって創立されたMOOCのプラットフォーム。https://www.edx.org/
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
インテリジェントシステム研究部
044-754-2674(直通)
fla_glp@us.fujitsu.com
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