PRESS RELEASE (技術)
2013年3月19日
フラウンホーファー・ハインリッヒ・ヘルツ研究所
株式会社富士通研究所
光領域の周波数変換を用いて超高精度の周波数間隔で光信号を自在に合成する技術を開発
本技術の詳細は、3月17日(日曜日)から米国カリフォルニア州アナハイムで開催される国際会議「OFC/NFOEC2013(Optical Fiber Communication Conference and National Fiber Optic Engineers Conference)」にて発表します。
開発の背景
インターネットの急速なブロードバンド化に伴う情報量の急増に対応するため、光ネットワークの伝送容量の限界を拡大可能な新世代の光伝送技術が求められています。こうした要求に応え、光ファイバー内の伝送効率を向上するため、周波数利用効率を高めた高密度の光多重技術が必要となります。特に、コヒーレント光直交周波数多重(CO-OFDM)(注5)およびナイキスト波長分割多重(WDM)(注6)は、周波数利用効率が最も高い光多重技術であり、周波数間隔をシンボルレート間隔まで狭めた高密度光多重を実現することができます。一方で、こうした高密度の光多重では、隣接チャンネルとの混信を避けるためすべての光波の光周波数を精密に整列する必要があるため、極めて高い周波数精度での合成技術が必要です。
開発した技術
HHIと富士通研究所は、光領域での周波数変換により、光ファイバー内に極めて高い精度の周波数間隔で光信号を合成する技術を開発しました。本技術を用いて、離れた4地点から50 GbpsのナイキストQPSK光信号(注7)を、26 GHz間隔に順次光多重し、単一偏波の200 Gbps光スーパーチャンネルへ合成する実験に世界で初めて成功しました。
今回開発した技術により、各地点で安定した周波数源をもとに希望通りの周波数間隔の信号光を生成し、全光周波数変換により、狙った光周波数(波長)に極めて正確に信号を載せることが可能です。これにより、光源であるレーザーダイオード(LD)の発振波長に関係なく、光信号を光ファイバー内に自在に合成することが可能となります。
実験では、各地点に独立して配置した通常の発振動作状態のLDを波長選別することなく用いながら、高い周波数精度で安定に光信号を合成しています。
本技術により、通常の光送信機はもとより、ネットワーク内の離れた地点にある信号から、ナイキストWDMやCO-OFDMといった超高密度光多重信号を自在に合成可能であることを確認しました。
今後
本技術は、膨大な情報信号を光ファイバー回線に自在に多重・収容可能であり、次世代のフレキシブルな光ノードの実現につながる要素技術の1つと位置づけられます。今後は、さらなる高性能化など実用化に向けて研究を推進していきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 フラウンホーファー・ハインリッヒ・ヘルツ研究所:
- Fraunhofer Heinrich Hertz Institute。所長 Hans-Joachim Grallert、所在地 ドイツ ベルリン市。
- 注2 株式会社富士通研究所:
- 代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
- 注3 光領域での周波数変換:
- 電気処理を用いることなしに、非線形光学効果を用いて入力された光信号を異なる光周波数の光信号へと変換する技術。
- 注4 光スーパーチャンネル:
- 隣接チャンネルの周波数や位相を精密に調節することにより、同一の周波数領域で複数の信号を混信することなく合成した大容量光信号。
- 注5 コヒーレント光直交周波数多重(CO-OFDM):
- 複数の光信号を、直交性を利用して互いに干渉することのない最小の周波数間隔で多重する方式。
- 注6 ナイキスト波長分割多重(WDM):
- シンボルレート周波数まで帯域を制限した光信号を高密度に波長分割多重する方式。
- 注7 ナイキストQPSK光信号:
- ナイキストフィルタによりシンボルレート周波数まで帯域制限したQuadrature Phase Shift Keying(4相位相変調)光信号。
関連リンク
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所 フォトニクス研究部
aos-pr@ml.labs.fujitsu.com
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