PRESS RELEASE (技術)
2012年11月13日
株式会社富士通研究所
A4スキャナで簡単にA3資料をPDF化可能な画像復元技術を開発
A3両面紙資料を手作業の2割以下の労力でPDF化し、歪みの少ない画像を実現
株式会社富士通研究所(注1)は、複数枚のA3紙資料を、A4サイズのスキャナで一度にPDF化する画像復元技術を開発しました。
従来、たとえばA4サイズのスキャナでA3両面紙をスキャンする場合、紙を半分に折り1枚ずつ両面スキャンする作業を2回する必要がありました。今回、A3紙を半分に切断し、自動紙送り機能を利用してスキャンするだけで、元のA3紙を構成するスキャン画像の組み合わせを自動的に推定し、さらに、左右の画像の結合境界が目立たないように画像補正しながら疑似A3スキャン画像を生成する技術を開発しました。これにより、従来の方法に比べ、2割以下の労力でA3紙資料をA4サイズのスキャナでPDF化できるようになります。
本技術の詳細は、11月12日(月曜日)からつくば国際会議場で開催される国際会議「International Conference on Pattern Recognition(ICPR) 2012」、12月3日(月曜日)から横浜国立大学で開催されるCVIM2012年12月研究会にて発表します。
開発の背景
昨今、ペーパーレス化社会の浸透とともに、紙で配布された資料をPDF化し、電子的に保存することが多くなっています。事務机に小型文書スキャナを常設し、紙の資料を手早くPDF化することで効率的な管理ができますが、一般的にはA4サイズのスキャナが多く使われており、A3紙の資料は簡単に電子化できず不便を強いられています。従来方法では、A3紙を半分に折り、自動紙送り機能を使わずに1枚ずつ丁寧に両面スキャンしなければならず(図1)、特に複数枚スキャンする場合は、手作業に多くの時間を費やしていました。
図1 A4サイズのスキャナでA3紙をスキャンする方法
課題
複数枚のA3紙を半分に切断し、自動紙送り機能を利用して一括スキャンできれば、二つ折りと手差し両面スキャンの作業が省かれ、手作業の負担が軽減されます。しかし、同時に次の問題が発生します。
- 複数枚をまとめて一括スキャンするため、各A3紙の左部分画像と右部分画像が順不同で混在し、A3画像を復元するための画像の組合せが不明になります。
- スキャナが紙を引き込む際に、紙の滑りが生じたり、搬送速度に僅かな誤差が生じることがあります。そのため、A3紙の左部分と右部分を二回に分けてスキャンし画像結合すると、結合境界で文字や図形のずれが発生します。
開発した技術
今回、複数枚のA3紙資料を半分に切断し、それらを一括スキャンした後、元のA3紙のスキャン画像を復元する技術を開発しました。開発した技術の特徴は以下の通りです。
- A3文書画像を復元するための画像の組を自動推定
A3紙の左右の部分画像が混在したスキャン画像から、元のA3紙を構成するための画像の組合せを自動で推定します(図2)。
- スキャン画像に発生した局所的な伸縮を補正
元のA3紙を構成する左右のスキャン画像を結合するとき、結合境界部での罫線や文字や図形が自然につながるように、スキャン画像に発生している局所的な伸縮を補正します(図3)。
図2 画像の組を自動推定
図3 画像の局所的な伸縮を補正
効果
A4サイズの小型スキャナでも複数枚のA3紙を簡単にスキャンできるようになります。従来のA3紙を半分に折り1枚ずつスキャンする方法に比べ、手作業の時間が2割以下に抑えられ、さらに、従来の方法より結合部のずれの少ない疑似A3スキャン画像が得られます。
今後
富士通研究所では、処理速度の高速化を進め、A4サイズスキャナへの搭載を目指します。また、A3紙のスキャンだけでなく、さらに大きな用紙に対し、多分割した紙片をスキャンするだけで元の用紙サイズのスキャン画像を生成する技術への展開も進めていきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
メディア処理システム研究所 イメージコンピューティング研究部
044-754-2678(直通)
a3@ml.labs.fujitsu.com
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