PRESS RELEASE (技術)
2012年5月1日
株式会社富士通研究所
タブレット端末に内蔵可能な世界最小・最薄の手のひら静脈認証センサーを開発
厚さ 5mmの光学センサーにより、薄型モバイル機器にも組み込み可能
株式会社富士通研究所(注1)は、タブレット端末に内蔵可能な世界最小・最薄の超小型手のひら静脈認証センサーを開発しました。イメージセンサーなどの光学系部品を新たに設計することで、厚さ5ミリメートル(mm)の薄型化を実現しました。
従来と同等の認証性能を維持したまま、従来の二分の一以下の厚さを実現したことで、薄型化が進むタブレット端末やスレートPCなどのモバイル機器にも容易に組み込むことが可能となります。これにより、手のひら静脈認証の活用の範囲が広がり、多くのお客さまが簡単な操作で確実な認証を行うことができます。
開発の背景
近年、企業や金融機関での情報漏洩やなりすましによる被害防止のため、利用者の本人認証を行う技術として、生体情報を利用するバイオメトリック認証技術の普及が進んでいます。
当社は、バイオメトリック認証技術のなかでも、「高い認証精度」「体内情報を利用するため偽造が困難」などの優れた特長を持つ手のひら静脈認証技術を開発し、非接触型手のひら静脈認証装置「PalmSecure(パームセキュア)」として販売しており、金融機関の本人認証や企業でのPCログイン、入退室管理などに活用されています。昨年には、センサーの小型化・薄型化と、より手軽な認証動作を実現したセンサーを開発し、実用化されました(図1)。しかし、昨今のビジネスでは、タブレット端末やスレートPCの爆発的な伸びに代表される、より小型の端末機器でのセキュリティ向上への要望がこれまで以上に高まってきています。
図1 2011年に製品発表した手のひら静脈認証センサー
課題
従来、高い認証性能と利用者の操作性を両立した手のひら静脈認証センサーを実現するためには、受光面積の大きな高性能イメージセンサーが必要でした。しかし、これが小型化を進めるうえで課題となっており、A4サイズのノートPCへの内蔵が限界でした。また小型・薄型化しても、従来の手のひら静脈センサーで撮影した画像と差が生じると、従来の認証データとの互換性が保てなくなるため、システム構築時に制約が生じるという課題がありました。
開発した技術
今回、タブレット端末に内蔵可能な世界最小・最薄の超小型手のひら静脈認証センサーを開発しました。光学系を新たに設計することで、より受光面積の小さい小型イメージセンサーを採用した場合でも、従来と同等の認証性能を実現しています。開発した技術の特徴は以下の通りです(図2)。
- 携帯電話やWebカメラで使用される小型のイメージセンサーの利用技術
小型で低コストのイメージセンサーを採用することにより、静脈認証センサー全体のサイズの小型・薄型化を実現しました。また、このイメージセンサーから得られる撮影画像を認証に利用可能な品質に補正する技術を開発しました。
- 従来の手のひら静脈センサーとの互換性を実現するための光学設計技術
従来の手のひら静脈センサーの認証データとの互換性を保つために、シミュレーションを重ねることで小型・薄型化した場合でも従来と同等の画角を得る低歪広角レンズと、均一な照度分布を実現する拡散照明系を開発しました。
図2 開発した光学系の特徴
効果
本技術により、従来の手のひら静脈センサーとの互換性を保持しつつ、同等の認証性能と小型・薄型化の両立を実現しました。2011年5月に製品出荷した薄型手のひら静脈認証センサーに比べ、容積で80%減、厚さ5mmのサイズに収めることに成功しました。これは、従来のノートPCやスレートPCで指紋センサーを設置していた部分に格納可能なサイズであり、薄型化が進むタブレット端末などのモバイル機器にも容易に組み込むことが可能となります(図3)。これにより、手のひら静脈認証の活用の範囲が広がり、多くのお客さまが簡単な操作で確実な認証を行うことができます。
図3 試作した厚さ 5mmの超小型手のひら静脈認証センサー光学系
今後
富士通研究所では、引き続き、超小型手のひら静脈認証センサーの実用化に向けた研究開発を進めて、小型機器への組込み用として、早期の実用化を目指します。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ソフトウェアシステム研究所 セキュアコンピューティング研究部
Sensor-Bio-2012@ml.labs.fujitsu.com
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