PRESS RELEASE (技術)
2012年4月12日
株式会社富士通研究所
富士通研究開発中心有限公司
業界初!部分的な形が似た3次元CADモデルを検索する技術を開発
部分モデルを複数再利用することで部品の設計期間を従来の約1/10に短縮
株式会社富士通研究所(注1)と富士通研究開発中心有限公司(注2)は、登録されている3次元CADモデルの中から、部分的な形が似たモデルを検索する技術を開発しました。
製造業などでは、新しい部品のCADモデルを設計する際に、部品を一から設計するのではなく、過去の設計ノウハウが詰まった既存部品のモデルの中から、形の似たモデルを検索して再利用することで設計期間を短縮しています。これまでは、全体の形が似ている部品の検索はできましたが、部分的な形が似ているだけでは検索することはできず、再利用もできないという課題がありました。今回、3次元CADモデルを突起形状などの特徴的な部分モデルに自動的に分割し、分割した部分モデルの向きや大きさや位置が異なっていても、形が似ていれば類似部分と判定して検索できる技術を開発しました。
本技術により、検索した部分モデルを抜き出し、複数組み合わせて再利用することが可能となるため、部品を一から設計する場合に比べて、設計期間を約1/10に短縮することが可能となります。これにより、設計コストの削減と製品の早期市場投入による競争力強化に貢献できます。
開発の背景
製造業などでは、競争力のある製品を短期間で開発して早期に市場投入するために、部品を一から設計するのではなく、過去の設計ノウハウが詰まった既存部品の3次元CADモデルを再利用することで、設計期間を短縮することが求められています。そのためには、再利用可能な3次元CADモデルを効率よく検索する技術が必要です。
従来、3次元CADモデルの検索では、部品名などのキーワードによるテキスト検索や、全体的な形が似た3次元CADモデルを検索する全体形状検索(図1)が行われていました。
図1 従来の全体的な形が似た3次元CADモデルの検索
課題
設計の現場では、たとえば図3のツメの部分のように、3次元CADモデルの部分的な形状を再利用することで設計期間を短縮したいというニーズがありました。しかし、従来の全体形状検索では、3次元CADモデル全体の形状を用いるため、部分的な形が似た3次元CADモデルを検索できないという課題がありました。
開発した技術
今回、登録されている3次元CADモデルの中から、部分的な形が似たモデルを検索する技術を開発しました。検索した部品は抜き出して、複数組み合わせることが可能になるため、部品を一から設計した時と比較して、設計期間を約1/10に短縮することが可能となります。
開発した技術の特長は以下の通りです。
- 3次元CADモデルを突起形状などの特徴的な部分に自動分割
3次元CADモデルを構成する面の位置関係などの構造を解析し、検索単位として適した突起形状などの特徴的な部分を自動分割する手法を開発しました。さらに、分割した部分モデルから凹凸などの形状の特徴を自動抽出し、検索キーの特徴と比較することで、向きや大きさや位置が異なっていても、形が似ていれば類似部分と判定できる技術を開発しました。まず事前処理として、データベースに登録されている3次元CADモデルを自動分割処理により部分モデルに分割しておきます(図2の)。設計者が検索キーとして形状を指定すると、分割したモデルの中から全体形状検索技術を用いて形が似た部分が検索されます(図2の)。
図2 特徴的な部分に自動分割後、形が似た部分を検索 - インタラクティブな検索インターフェース
設計者が指定した検索キーと部分的な形が似た3次元CADモデルを、仮想3次元空間に並べて一覧表示できます(図3)。また、形が似た部分を着色して強調することで、効率的な検索を可能にしました。
図3 部分的な形が似た3次元CADモデルを仮想3次元空間に表示
効果
今回開発した技術を用いることで、膨大な3次元CADモデルのデータベースから、指定した検索キーと部分的な形が似た3次元CADモデルを効率よく検索することが可能となります。実験では、1万個の3次元CADモデルを自動分割により約10万個の部分に分割しておき、その中から指定した検索キーと部分的な形が似た3次元CADモデルを検索した場合、約3秒と実用的な速さで検索することができました。本技術により、たとえば、検索した部分モデルを抜き出し、複数組合せて再利用することで、新たな部品を効率的に設計することが可能となるため、従来に比べ、部品の設計期間を約1/10に短縮することが可能となります。また、本技術により、標準部品の再利用率を高めることで、部品管理コストを軽減することができます。
今後
今後、実用化を進め、2012年度中に富士通株式会社の統合設計情報管理システム「PLEMIA」(注3)に搭載する予定です。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 株式会社富士通研究所:
- 代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市
- 注2 富士通研究開発中心有限公司:
- 董事長 佐々木繁、本社 中国北京市
- 注3 PLEMIA:
- PLEMIAの紹介サイト
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
メディア処理システム研究所 イメージコンピューティング研究部
044-754-2577(直通)
multimedia@ml.labs.fujitsu.com
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