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PRESS RELEASE

2012年2月21日
富士通株式会社

東北大学様と高精度三次元津波シミュレーションの共同研究を開始

市街地浸水のシミュレーションの精緻化および鉄筋コンクリートビルの被災メカニズム解明を目指す

当社は、国立大学法人 東北大学(所在地:宮城県仙台市、総長:井上 明久)様と、津波による浸水や河川の遡上を高い精度で計算できる三次元津波シミュレーションの共同研究について契約を締結し、主に市街地浸水、河川遡上のシミュレーションと、鉄筋コンクリートビルの被災メカニズム解明に貢献する技術の研究を開始します。

本研究では、当社が粒子法(注1)を用いて開発した、大規模並列コンピュータ用の三次元流体シミュレーション技術と、国内で津波研究の第一人者である東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター長の今村文彦教授が開発した津波伝播の二次元シミュレーション技術とを連携・融合して、今村教授と共同で新たに三次元津波シミュレーション技術を開発します。

本研究の成果を堤防や避難ビルの設計や、ハザードマップ、避難誘導ガイドラインの開発などに活用することが可能であり、信頼性の高い防災対策、減災対策の実現が期待できます。

当社は、本技術をコンピュータ処理に応用していくとともに、東日本大震災の被災地域の復興・新生に向けて、災害に強い地域社会の実現に向けた取り組みを、ICT面から継続的に支援していきます。

背景

2011年3月11日に発生した東日本大震災による津波は東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。特に宮城県女川町などでの津波による鉄筋コンクリートビル倒壊は世界的にも例のない被害であり、そのメカニズムの解明が求められています。津波対策のひとつとして津波シミュレーションの技術を、浸水の予測や施設の耐震性などの評価、建造物の被災メカニズムの解析などに活用することが、従来にも増して強く求められています。

課題

津波のシミュレーションは、以前から世界中で行なわれてきましたが、建物に及ぼす津波の力の計算、市街地の浸水、河川の遡上のシミュレーションに関しては、建物や堤防などの三次元的な形状が津波の威力や遡上速度に影響を与えるため、それらの情報を盛り込んだ三次元のシミュレーションが必須となります。このようなシミュレーションには500台のPCを利用して並列計算を行うPCクラスタの技術を利用しても5日間かかるほどの膨大な計算が必要となるため、ほとんど行なわれていないのが現状です。

共同研究内容


三次元津波シミュレーションのイメージ
拡大イメージ

今村教授は長年にわたって津波を研究されており、震源から伝わる津波の伝播を解析する津波伝播の二次元シミュレーション技術を開発されています。このシミュレーション技術は海岸部への津波の到達時刻や波高の計算に広く活用されていますが、建物や地形の影響を大きく受ける津波による都市の浸水や河川遡上を扱うには限界がありました。

一方、当社は粒子法をベースとしたシミュレーション手法を、大規模並列コンピュータでのアプリケーションのひとつとして開発を進めてきました。粒子法とは流体を多数の粒(粒子)の集まりとして表現する手法であり、他の解析手法が苦手としている砕波(注2)などの現象の解析を得意としています。この手法でシミュレートした波は、波が伝わる途中で徐々に減衰していくという課題がありましたが、この課題を解決する新規技術(注3)を開発し適用しました。この改良によって、正確に波の動きを再現可能な水槽実験結果と比較して10%程度の誤差で、波の動きを再現することに成功しており、この技術を津波による各種現象のメカニズムの解析に応用できると考えていました。

本研究では今村教授が開発した津波伝播の二次元シミュレーション技術と富士通が開発した粒子法によるシミュレーション技術とを連携させ、新たに三次元津波シミュレーション技術を開発します。具体的な共同研究内容は以下のとおりです。

  • 津波による市街地浸水、河川遡上のシミュレーション
  • 津波による鉄筋コンクリートビルの被災メカニズムの解明

当社は、本研究によって得られる技術をコンピュータ処理に応用していくとともに、各種メカニズムの解明によって、防災・減災に貢献することを目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 粒子法:
流体を多数の粒(粒子)の集まりとして表現する手法。水面が複雑に変形する挙動などの解析に適する。
注2 砕波(さいは):
沖合から浅海に進入した波は、水深の変化に伴って波高が変化し、水深が波高に近づくと、波の形が不安定になり、前方に飛び出すようにくずれる。この現象を砕波と呼ぶ。
注3 新規技術:
株式会社神戸製鋼所様との共同研究を通じて開発した、粒子法シミュレーションの減衰を抑える技術。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

富士通コンタクトライン
電話 0120-933-200
受付時間: 9時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日・年末年始を除く)


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