PRESS RELEASE(技術)
2011年11月7日
株式会社富士通研究所
CPUの廃熱を用いた冷却技術を開発
データセンターの空調電力を20%削減可能
株式会社富士通研究所(注1)は、CPUから発生する廃熱を利用して、サーバルームの冷却に使用する冷水を製造する技術を開発しました。
工場施設の冷却に使われる低い温度の冷水を製造するには、高いエネルギーが必要です。現在、電気あるいはボイラーなどの熱エネルギーで冷水は製造されていますが、熱源として高温の廃水に含まれる熱を利用する試みも始まっています。今回、これまで冷水の製造には利用できなかった低い温度の熱からも冷水を製造することができるようになりました。水冷式のCPUより排出される廃水は、55℃と温度が低く、負荷によって温度も変動しますが、この廃水からも連続的に冷水を製造することが可能になります。
本技術により、これまで利用していなかったCPU廃熱を冷却に利用でき、既存のデータセンターの消費電力の約40%を占める空調消費電力を最大で約20%削減することができます。これにより、サーバラック1台あたり、年間最大で1.2万kWh、杉の木360本分のCO2の削減に貢献できます。
本技術の詳細は、中国・上海で10月28日(金曜日)から開催された電子機器・エネルギー技術の国際学会「The 2011 International Conference on Power and Energy Engineering」にて発表いたしました。
開発の背景
クラウドサービスの進展に伴い、インフラであるデータセンターの消費電力が今後大きく増加すると見込まれており、データセンターの消費電力の削減が重要な課題となっています。データセンターで消費される電力の約40%はIT機器冷却のための空調に用いられており、空調効率改善による省エネルギー対策が必要です。
課題
施設の冷却のために冷水を利用する方法として、現在大部分の工場では電気で冷水を製造していますが、高い温度の廃熱を使って製造した冷水を利用する試みも始まっています。データセンターにおいても、CPUによる熱を有効利用して冷却用の冷水を製造することができれば、その分の冷水を製造するのに必要な電力を削減できます。しかし、冷水を連続的に製造するためには水温が65℃以上で安定しているという条件が必要です。そのため、65℃よりも温度が低く、CPU処理の負荷変動で温度が一定しないIT機器の廃熱の利用はむずかしく、空調装置の室外機から放熱するだけで、冷却には利用されていないのが現状です。
開発した技術
今回、CPUから発生する廃熱を利用して15~18℃の冷水を連続的に製造する技術を開発しました。開発した技術は以下の通りです。
- 55℃の低温で効率的に水を乾燥できる新素材の開発
廃熱を利用した冷水発生装置として、吸着材の水分吸着力によって水を蒸発させ、その際に周囲の熱を奪う性質を利用した吸着式ヒートポンプを利用しています。連続的に冷水を製造するためには、室温における吸着材への水の吸着と、廃熱を利用した乾燥のサイクルを繰り返す必要があります。今回、新素材の吸着材を開発し、室温における水の吸着性能、および、55℃での乾燥性能を向上させました。これにより、55℃での低温動作を可能にしました。
- 乾燥に必要な廃水の温度を維持する技術
CPUの温度は負荷により変動します。連続的に冷水を製造するためには、廃水の温度を吸着材が乾燥できる40℃から55℃の範囲に維持する必要があります。CPUの負荷に合わせて、廃水の流量を制御することで、冷水発生装置に供給される廃水の温度を40℃から55℃の範囲に保つ技術を開発しました。
図1 開発技術の概要
これら2つの技術により、冷水発生装置へ入力された廃熱量を100%としたとき、最大で60%の熱量に相当する量の冷水出力が得られることを確認しました。
効果
CPUの廃熱を利用して製造した冷水を空調装置で使用することにより、データセンターでの空調消費電力を最大で約20%削減することができます。これにより、サーバラック1台あたり、年間最大で1.2万KWh、杉の木360本分のCO2の削減に貢献できます。
今後
2014年ごろのデータセンターでの適用を目指して、大規模化、スペース効率の向上、信頼性の向上などの技術開発 を進めていきます。また、工場、オフィスビル、太陽熱発電システムなど、データセンター以外の用途において利用されていない低温廃熱への活用を目指します。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
環境・エネルギー研究センター
046-250-8257(直通)
pr_ene@ml.labs.fujitsu.com
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