PRESS RELEASE
2011年11月16日
独立行政法人理化学研究所
国立大学法人筑波大学
富士通株式会社
京速コンピュータ「京」がHPCチャレンジ賞 4部門すべてで第1位を獲得
LINPACKに続き、スパコンの総合的な性能を評価するベンチマークでも高性能を実証
独立行政法人理化学研究所(理事長 野依良治、以下「理研」)、国立大学法人筑波大学(山田信博学長、以下「筑波大」)、および富士通株式会社(代表取締役社長 山本正已、以下「富士通」)は、理研と富士通が共同で開発中の京速コンピュータ「京(けい)」(注1)で測定した、スパコンの総合的な性能を評価するHPCチャレンジベンチマークの実測結果により、2011年「HPCチャレンジ賞(注2)」の4部門すべてで第1位を獲得しました。15日(米国太平洋標準時間:日本時間16日)、米国・シアトルで開催中のHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「SC11」で発表されました。HPCチャレンジ賞で第1位を獲得したのは、(1)大規模な連立1次方程式の求解における演算速度 (2)並列プロセス間でのランダムメモリアクセス性能 (3)多重負荷時のメモリアクセス速度 (4)高速フーリエ変換の総合性能の4部門すべてです。京は、LINPACKの演算速度のランキングであるTOP500リストでも6月と11月に連続して第1位を獲得していることに加え、汎用スパコンとしての総合的な性能においても高い評価を得たことになります。
理研と富士通は共同で、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」計画のもと、2012年11月の供用開始を目指し京速コンピュータ「京(けい)」の開発を進めています。
HPCチャレンジベンチマークは、科学技術計算で多用される計算パターンから抽出した28項目の処理性能によって、スパコンの総合的な性能を評価するベンチマークプログラムです。この中でも特に重要な (1)Global HPL(大規模な連立1次方程式の求解における演算速度) (2)Global RandomAccess(並列プロセス間でのランダムメモリアクセス性能) (3)EP STREAM(Triad) per system(多重負荷時のメモリアクセス速度) (4)Global FFT(高速フーリエ変換の総合性能)の4つについては、HPCチャレンジ賞(クラス1)として各部門の第1位が表彰されます。
筑波大は4つのプログラムのうちGlobal FFTの高速化に大きく貢献しました。その上でこれら4つのベンチマークプログラムの性能をHPCチャレンジ賞(クラス1)に登録しました。
2011年HPCチャレンジ賞(クラス1)4部門の上位3位は以下の通りです。
Global HPL | 性能値(TFLOP/s) | システム名 | 設置機関 |
---|---|---|---|
1位 | 2,118 | 京 | 理研 計算科学研究機構 |
2位 | 1,533 | Cray XT5 | オークリッジ研 |
3位 | 736 | Cray XT5 | テネシー大学 |
Global RandomAccess | 性能値(GUPS) | システム名 | 設置機関 |
1位 | 121 | 京 | 理研 計算科学研究機構 |
2位 | 117 | IBM BG/P | ローレンスリバモア研 |
3位 | 103 | IBM BG/P | アルゴンヌ研 |
EP STREAM(Triad) per system | 性能値(TB/s) | システム名 | 設置機関 |
1位 | 812 | 京 | 理研 計算科学研究機構 |
2位 | 398 | Cray XT5 | オークリッジ研 |
3位 | 267 | IBM BG/P | ローレンスリバモア研 |
Global FFT | 性能値(TFLOP/s) | システム名 | 設置機関 |
1位 | 34.7 | 京 | 理研 計算科学研究機構 |
2位 | 11.9 | NEC SX-9 | 海洋研究開発機構 |
3位 | 10.7 | Cray XT5 | オークリッジ研 |
HPCチャレンジ賞(クラス1)では、4つの異なった視点からスパコンの特性を多角的に評価しますが、そのすべてにおいて京はトップ性能を発揮しています。
京は、開発当初から、広く内外の研究者、技術者の利用に供することを念頭に、高い演算性能と幅広い範囲のアプリケーションに対応できる汎用性を兼ね備えたスパコンを目指して開発を進めてきましたが、今回の結果はそれを実証するものであり、京の汎用スパコンとしての総合的な能力の高さを示すものです。
以上
注釈
- 注1 京速コンピュータ「京(けい)」:
- 文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムのもと、理研と富士通が共同で開発しているスーパーコンピュータで、2012年の共用開始を目指している。「京(けい)」は理研が決定したスーパーコンピュータの愛称(2010年7月に決定)で、10ペタ(10の16乗)を表す万進法の単位であるとともに、もともとは大きな門を表し、「計算科学の新たな門」という期待も込められている。
- 注2 HPCチャレンジ賞:
- HPCチャレンジ賞にはベンチマークの性能値を競うクラス1と、実装における生産性の高さを競うクラス2がある。クラス1は以下の4つの部門で構成され、それぞれシステムを構成する主要な要素(CPUの演算性能、メモリへのアクセス性能、ネットワークの通信性能)の性能が評価される。
・Global HPL:大規模な連立1次方程式の求解における演算速度
・Global RandomAccess:並列プロセス間でのランダムメモリアクセス性能
・EP STREAM(Triad) per system:多重負荷時のメモリアクセス速度
・Global FFT:高速フーリエ変換(FFT)の総合性能
関連リンク
- 詳しいTOP500リストについて
- HPCチャンレンジについて
- 第38回TOP500リスト(2011年11月)の結果について
- 理化学研究所次世代スーパーコンピュータの開発・整備
- 計算科学研究機構
- 富士通「次世代スーパーコンピュータ」紹介サイト
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