PRESS RELEASE (技術)
2011年9月26日
株式会社富士通研究所
世界初!高性能と柔軟性を同時に実現する次世代サーバの試作に成功
資源プール化アーキテクチャーより、新しいICTサービスの創出を可能に
株式会社富士通研究所(注1)は、資源プール化アーキテクチャーにもとづき高性能と柔軟性を同時に実現する次世代サーバの試作に世界で初めて成功しました。
クラウドサービスを提供するデータセンターでは、Webサービスなどを効率よく提供できるICTシステムを提供していますが、クラウドサービスの多様化にともない、さらなる性能向上と柔軟なシステム構築が課題となっていました。
今回、ICTインフラを構成するCPUやハードディスク(以下、HDD)などのハードウェア部品をプール化し、それらの資源を高速なインターコネクトで接続して組み合わせることで、ハードウェア本来のもつ機能や性能をそこなわずに高い性能のサーバとストレージをニーズにあわせて提供することを可能にしました。
本技術により、さまざまなクラウドサービスを柔軟に収容するICTインフラの構築が可能になります。現在クラウドで提供されているWebサービスはもちろん、新たに登場するサービスについても、その特性に応じて常に最適なサーバとストレージを迅速に構成できることにより、付加価値の高いサービスを提供できるようになります。これにより、ヒューマンセントリックコンピューティングに欠かせないビッグデータ処理への対応など、多様なクラウドサービスの提供が期待されます。
図1:資源プール化アーキテクチャー
開発の背景
クラウドコンピューティングの普及にともない、クラウドを提供するデータセンターに求められる役割が大きく変化しています。たとえば、これまで提供してきたWebサービスに加えて新しいサービスを提供するため、サービスを支えるバックエンド技術の重要性が高まっています。また、ライフログ・医療・農業など大量のセンサーから発信される大量のデータ(ビッグデータ)がデータセンターに集められて活用されるようになり、多様化するサービスを効率よく、柔軟に処理することが求められています。
課題
クラウドサービスを提供するデータセンターでは、多数のサーバとストレージをネットワークで接続し、ICTインフラを構築しています。このようなサーバやストレージの構成の多くは、Webサービスなどクラウド向けサービスの提供に適しています。しかし、クラウドサービスの多様化にともない、高いI/O性能が必要とされるデータベースや、サーバのローカルディスクを活用する大規模データ処理など、従来のクラウド向けシステムの構成では要求性能を満たすことが難しかったサービスについても、データセンターからの提供ニーズが高まっています。このため、データセンターのICTインフラについて、さらなる性能向上と柔軟なシステム構築が課題となってきました。
開発した技術
今回、CPUやHDDなどのハードウェア部品の間を高速インターコネクトで結合した、資源プール化アーキテクチャーを開発し(図1)、ローカルディスクを備えたサーバとしてもストレージ機能を搭載したシステムとしても構成可能な次世代サーバの試作に世界で初めて成功しました。
従来のWebサービスに適した一般的なシステム構成と比較して、ベンチマークで約4倍のI/Oスループット向上と、実アプリケーション実行時に約40%の性能向上を達成しました。
図2:同一システムでさまざまなサーバとストレージを構築可能
開発した技術の特徴は以下の通りです。
- プール管理機構
利用者が必要とするCPU数、HDD数などの要件に応じて、プールから要件に合った資源切り出しと、OSおよびミドルウェアの配備とを行い、必要とされる構成のサーバをオンデマンドで構築できます。
- プールから切り出したサーバ上に、ストレージ機能を提供するミドルウェア
プール管理機構によって構築したサーバ上に、HDD管理とデータ管理とを行うミドルウェアを構成することで、ストレージ機能を提供します。大規模データ処理に適した多数のローカルディスクをもつサーバや、データの信頼性を向上させるRAID機能を、性能や消費電力などの要件に応じて柔軟に構成できます。
- ディスクプールを接続する高速インターコネクト技術
多数のHDDを集積したディスクプールを、高速インターコネクト「ディスクエリアネットワーク」によりCPUのプールに接続します。ディスクエリアネットワークによってCPUに接続されたHDDは、通常のサーバのローカルディスクと同じディスクアクセス性能を持ち、他のCPUからの性能面の影響を受けません。今回、CPUと任意のHDD間を6Gbpsで接続するインターコネクトを試作し、ディスクエリアネットワークを実現しました。
図3:試作した次世代サーバ
効果
本技術により、データセンターのICTシステムを高性能かつ柔軟に構築できます。現在クラウドで提供されているWebサービスはもちろん、新たに登場するサービスについても、その特性に応じて常に最適なサーバとストレージを迅速に構成し、より付加価値の高いサービスを提供できるようになります。負荷変動の予測が難しい新規サービスでは、システム構成を柔軟に変更できるという特徴を活かして、設計時に必要な資源の見積もりをおこなうキャパシティプランニングを不要にします。
また、Webサービス、データベース、大規模データ処理などのワークロードの割合が日々あるいは年々変化していく場合にも、同じICTインフラを使用しつつサーバ、ストレージ構成を変化させることにより、常に最適なサービスを提供できるため、データセンターの利用率が向上します。さらに、CPUやHDDなどのハードウェア部品が故障しても、故障部品の接続を切り替えることによって部品交換の頻度を下げ、保守コストも低減します。
今後
今後は、機能や性能の検証をすすめ、2013年度の実用化を目指します。柔軟で高性能なITインフラを提供することで、ビッグデータへの対応など、新しいICTサービスの実現に貢献していきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ITシステム研究所 サーバテクノロジ研究部
044-754-2177(直通)
mangrove-pr@ml.labs.fujitsu.com
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