PRESS RELEASE
2011年7月7日
株式会社早和果樹園
富士通株式会社
和歌山県 農林水産総合技術センター 果樹試験場
ICTを活用したみかん栽培の実証実験を実施
クラウド、センサー、スマートフォンで、美味しいみかんをたくさんつくる
株式会社早和果樹園(所在地:和歌山県有田市、代表取締役社長:秋竹 新吾、以下、早和果樹園)と富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本 正已、以下、富士通)は、このほど、「有田みかん」で知られる高品質で美味しいみかんの生産性向上を目指し、みかん栽培へのICT活用に関する実証実験を開始します。
本実証実験は、適切な作業の適切なタイミングでの実施、作業コストの把握、ベテランから若手へのノウハウ継承などを主な狙いとし、具体的には、クラウド、センサー、スマートフォン、パソコンなどを利用し、以下に取り組むものです。
- センサーで収集した園地の気温・降水量・土壌温度などのデータや、スマートフォンで登録した従業員の作業記録、園地で撮影した写真などをデータセンターに蓄積し、活用(先行実施)
- 5,000本におよぶ樹木の一本ごとにIDナンバーを付与し、日々変化する樹木の育成状況や病害虫の発生状況を詳細に管理
- 収集した膨大なデータや過去のデータを分析し、次期生産活動に活用
実証実験には、富士通のクラウド・コンピューティング(注1)技術、ならびに株式会社富士通研究所(注2)のセンサー技術、スマートフォン向け専用アプリケーションが活用されています。また、気象・育成データの活用方法や過去のデータの提供については、和歌山県 農林水産総合技術センター 果樹試験場(場長:大橋 弘和、以下、果樹試験場)が指導、協力しています。
なお、和歌山県有田市(市長:望月 良男)様には、本実証実験によって得られる結果を有田みかんブランドの強化や地域活性化などに活用いただくとともに、本実証実験で活用した技術について、有田市内のみかん栽培農家による理解促進や普及を支援いただきます。
早和果樹園が抱えている課題
みかん生産高で全国1位を誇る和歌山県において有田市に位置する早和果樹園では、6万平方メートルの広大な園地のもとに、高品質みかんの栽培やジュースやゼリーなどの加工品13種の生産を手がけています。1979年に専業農家として出発してから、2000年に有限会社、2005年に株式会社と拡大を続け、現在では年商4億円の実績を上げています。
早和果樹園では、長年積み重ねてきたノウハウや、従業員の経験、勘をもとに品質重視のこだわりの高品質みかんを栽培してきましたが、さらなる生産性向上に向け、作業の標準化や、各作業にかかるコストの数値化、ベテラン従業員のノウハウ継承、農業経験のない新入社員の人材教育などの課題を抱えています。
本実証実験について
[ 目的 ]
属人的な作業が多かった生産現場にICTを活用することで、高品質なみかんの生産性を向上させること。また、生産現場におけるICTの有用性を検証すること。
[ 概要 ]
- センサーやスマートフォンを用いてさまざまなデータを収集し、富士通のデータセンターに蓄積したうえ、従業員がパソコンとインターネットを用いて閲覧・活用します。
- 園地の5ヵ所に設置したセンサーで、気温・降水量・土壌温度などのデータを一定間隔で収集
- スマートフォンのアプリケーションに、作業履歴や園地見回りの際の気付き・異常を登録
- スマートフォンのGPS機能を用いて、作業場所や移動の履歴を自動的に登録
- 登録した作業時間や農薬・資材の使用量から作業コストを算出
- 5,000本におよぶ樹木の一本ごとにIDナンバーを付与し、樹木の育成状況や病害虫の発生状況を詳細に管理します。
従業員が利用するスマートフォンの
アプリケーション「おいしくしたい」
富士通研究所が開発したセンサー(写真右)と、
「おいしくしたい」を利用する従業員
- 収集した膨大なデータや過去のデータから、生産に関する規則性や兆候を発見し、次期生産活動に活用します。データの活用方法や過去のデータの提供については、果樹試験場が指導、協力しています。
- 膨大なデータやから規則性や兆候を発見し、次期生産活動に活用できるルールを作成
- 作成したルールに沿い、作業の適切な内容とタイミングを知らせるアドバイスを配信
[ 期待効果 ]
- 人が変わる
- 人材育成(ベテランから若手へのノウハウ継承、教育の場(気付きの場)の創出)
- 地域活性化への貢献(地域内でノウハウを共有)
- 園地が変わる
- 高品質なみかんの生産性向上
- 園地の見える化(樹木の生育状況を把握)
- 問題のある樹木に対する対処作業を確実に実施
- 農業が変わる
- 作業の標準化(肥料や農薬の散布など、適切な作業の適切なタイミングでの実施)
- 利益を出す農業の実現(作業コストの把握と、それによる従業員の経営意識の向上)
- データの有効活用(気象とみかんの生育状況にある規則性の発見)
富士通の農業クラウドの取り組みについて
富士通グループは、2008年より、クラウド・コンピューティングを活用して農業の経営や生産現場を支援する「農業クラウド」の実証実験に取り組んでいます。これまで、有限会社新福青果(宮崎県都城市)、有限会社フクハラファーム(滋賀県彦根市)などと協力し、ワークスタイル変革、生産性向上、後継者育成につながる一定の効果をあげてきました。今般、早和果樹園とも協力することにより、農業クラウドの導入効果をさらに検証していきます。
農業クラウドには、サーバやストレージなどのICTインフラを、富士通のデータセンターからネットワーク経由で利用できるクラウドサービス「FGCP/S5」(2011年6月に「オンデマンド仮想システムサービス」より名称を変更)の基盤が活用されています。
富士通はクラウドサービスの提供を通じて、社会が抱えるさまざまな問題をICT活用によって解決し、人々が豊かで安心して快適・便利に暮らせる社会「ヒューマン・セントリックなインテリジェント・ソサエティ」の実現を目指しており、農業クラウドはその一環です。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 クラウド・コンピューティング:
- クラウド=雲(インターネット)の向こう側に存在するICTリソースを、ネットワーク経由でサービスとして利用するというICTの利用形態。
- 注2 株式会社富士通研究所:
- 代表取締役社長 富田 達夫、本社 神奈川県川崎市。
関連リンク
本件に関するお問い合わせ
株式会社早和果樹園
0737-88-7279(直通)
和歌山県 農林水産総合技術センター 果樹試験場
0737-52-4320(代表)
富士通株式会社
富士通コンタクトライン
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