このページの本文へ移動
  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. 京都大学において数式処理の世界記録を達成

PRESS RELEASE (技術)

2011年6月27日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

京都大学において数式処理の世界記録を達成

富士通のシステムを活用した16次方程式の判別式計算の成功により、「ものづくり」の品質向上に期待

国立大学法人京都大学(注1)(以下、京都大学)情報学研究科の木村欣司特定准教授が、数式処理による16次方程式の判別式計算に世界で初めて成功しました。今回の成果は、京都大学学術情報メディアセンター様に対して富士通株式会社(注2)(以下、富士通)が納入したサーバ『SPARC Enterprise M9000』とミドルウェア『Parallelnavi(パラレルナビ)』、および、株式会社富士通研究所(注3)(以下、富士通研究所)の数式処理技術を用い、木村欣司特定准教授が開発した新たな高速計算アルゴリズムにより、従来は15次方程式までだった判別式計算の世界記録を更新したものです。

方程式の判別式計算は、より高い次数で計算すればするほど、建築物から半導体にいたる「ものづくり」に関して、品質の向上や部材の削除、歩留まりの改善など、さまざまな課題を解決することができます。

富士通と富士通研究所では、今後も数式処理計算技術の開発と実用化を進め、新しい「ものづくり」支援サービスの提供を目指します。

背景

ものづくりにおいて、材料が持つ特性、組み合わせた時の強度やバランス、外部刺激に対しての耐久性などを解析する際に、コンピュータによる計算を用います。現在では、ものづくりで必要となる計算が複雑になっており、高性能なサーバや、専用のアルゴリズムを活用して計算します。

ものづくりに必要な計算の一つである方程式の判別式計算は、江戸時代の和算家(数学者)である関孝和の業績にルーツがあり、建築物の強度をそのままに材料を削減することや、半導体の製造時の歩留まりを向上させることなど、「ものづくり」の課題を解決するために必要な技術です。より高い次数の判別式計算ができれば、品質の高い製品を短期間で設計することが可能になります。

従来、コンピュータで計算可能な判別式計算は15次方程式までであり、複雑化・高機能化する「ものづくり」において、16次以上の方程式の判別式計算が求められていました。


図1 関孝和と2次方程式の判別式計算

今回の計算について

  1. 数式処理

    数値計算では数式の計算を数値で行い、割り切れない場合などには近似値を求めるのに対して、数式処理では数式を式のまま記号的に処理し、誤差なしで正確な計算が可能です。数式処理の技術は、数学の分野以外でも、インターネット社会のセキュリティ基盤である暗号技術の計算にも活用されています。さらに、近年では製品開発の工数やコストの削減、品質や信頼性の向上を目指し、数値計算とともに数式処理を活用して設計を行う「数式モデルベース設計」が行われています。


    図2 数式処理

  2. 方程式の判別式計算

    判別式計算は、方程式の係数であるa、b、c、・・・からなる式を数式処理によって計算します。判別式の計算で必要となる大規模な行列式を効率よく計算するための技術は、数式処理の基本をなす基盤技術です。16次方程式の判別式は、3,798,697,446個の項からなり、その大きさは88ギガバイトにおよぶ非常に大きな式です(15次方程式の判別式は、663,316,190個の項からなり、大きさは14ギガバイト)。


    図3 判別式

今回の成果

今回、木村欣司特定准教授が「多項式補間法」に基づく新しい計算アルゴリズムを開発し、従来は不可能だった16次方程式の判別式を高速に計算することに成功しました。木村特定准教授が提案した計算アルゴリズムは、行列式の数式処理に必要となる計算量を従来より大きく減らしたものです。

システムの概要

数式処理を実用化するには、大きな数式を効率良く計算できる大規模なメモリをもった高速な計算機環境と、効率的な数式処理計算のアルゴリズム開発が欠かせません。

今回の成果は、京都大学学術情報メディアセンター様に対し、富士通が大規模SMP(注4)クラスタ演算サーバとして納入した、サーバ『SPARC Enterprise M9000』とミドルウェア『Parallelnavi』を用いて計算したもので、富士通研究所の数式処理技術も記録達成に貢献しました。『SPARC Enterprise M9000』は、1台あたりSPARC64プロセッサ(128CPUコア)および1テラバイトのメモリを搭載しており、大規模なメモリ空間を必要とする科学技術計算に対応したものです。


図4 SPARC Enterprise M9000

今後

富士通は、今後も数式処理計算技術の開発および実用化を進め、新しい「ものづくり」支援サービスの提供を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 国立大学法人京都大学:
総長 松本紘、本部 京都市左京区。
注2 富士通株式会社:
代表取締役社長 山本正已、本社 東京都港区。
注3 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注4 SMP:
Symmetric Multi-Processor(対称型マルチプロセッサ)。複数のCPUが1つのメモリ空間を共有し、基本的に同等なものとして振る舞うことができるマルチプロセッシング方法。 複数のCPUを使って同時に処理を行うことが可能。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ITシステム研究所 デザインイノベーション研究部
電話 044-754-8830(直通)
メール t2k-mate@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。