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PRESS RELEASE (技術)

2011年6月1日
株式会社富士通研究所

世界初!手のひら静脈と指紋を用いた100万人規模の認証技術を開発

IDカード不要の手ぶら認証で特定の個人を2秒以内に識別可能

株式会社富士通研究所(注1)は、手のひら静脈情報と指3本の指紋情報を組み合わせた生体認証技術を世界で初めて開発しました。手のひら静脈と指紋の両方の情報を利用することで、100万人規模のデータの中から特定の個人を識別する処理を2秒以内に行うことを実現しました。

本技術を利用することで、入退室管理用の小規模なものから社会基盤システム向けの大規模なものまで、手ぶらで個人認証を行う生体認証システムを利用者の規模に合わせて構築することができます。また、すでに普及している指紋センサーに手のひら静脈認証を追加するだけで容易に導入することも可能です。


図1 手のひら静脈と3本の指の指紋を組み合わせた個人認証
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開発者インタビューおよびデモンストレーション
(再生時間: 2分3秒・音声あり)

開発の背景

近年、企業からの情報漏洩や金融機関での「なりすまし」による被害を防止する技術として、生体認証技術の普及が進んでいます。なかでも、富士通研究所が世界で初めて開発した手のひら静脈認証技術は、高い認証性能から金融機関のATMでの本人確認や企業のPCアクセス管理、入退出管理などで国内外を問わず幅広く活用されています。また、指紋認証は、認証処理の高速性からPCや携帯電話に内蔵されており、手軽で確実な個人のログイン認証として普及しています。

生体認証の特長の一つである、生体情報のみの手ぶらでの認証サービスは、身一つでサービスが利用できる利便性から、生体認証の普及をさらに加速させると期待されています。この普及を握る鍵として、大企業や行政サービスをカバーする100万、1億といった人の中から特定の個人を高速・高精度に認証する技術が注目されています。


図2 生体情報のみによる手ぶら認証サービスのイメージ

課題

金融機関での認証のようにICカードに登録された特定の生体情報であるかないかを判断する場合は、1種類の生体情報だけを利用する現在の1対1の認証方式でも十分です。しかし、多数の人の中から特定の個人を認識する1対Nの認証においては、母数が100万、1,000万と多くなると、精度の問題により1種類の生体情報だけでは他人との違いが明確に区別できない場合があります。1対Nの認証では全ての登録データと突き合せた認証を行うため、1対100万での認証精度は1対1に比べて100万倍高い精度が必要とされます。

このため複数の生体情認証方式を組み合わせ、認証を強固にする方法が提案されています。しかし,それぞれの入力作業が別々になると利便性が下がります。たとえば、手のひら静脈認証と虹彩認証(注2)を組み合わせた場合には、手と目を別々にかざす必要があり、簡便に利用することができません。このため複数の生体情報を組み合わせても簡単に利用できる技術が必要となっていました。

さらに1対100万の認証では、全部の登録データと突き合せるため従来の技術では認証処理に数十分かかります。このため処理を飛躍的に高速化するための技術が必要でした。

開発した技術

今回、すでに普及している指紋認証に、高い認証精度を持ちながら偽造や「なりすまし」などの不正行為に対して強堅な手のひら静脈認証を融合することにより、100万人の中から特定の個人を識別できるシステムを開発しました。本技術を用いて開発したシステムは、一度の操作で取得する片手の手のひらと3本の指の指紋情報を用いて、100万人の中から特定の個人を選ぶ認証を、複数サーバの並列処理により2秒以内で行うことができます。

開発した技術の特長は以下の通りです。

  1. 手のひら静脈と3指の指紋のデータを同時に安定取得する技術

    採取方式の異なる手のひら静脈と3指の指紋に対して、手を一度かざすだけで、安定して手のひら静脈と指紋のデータを取得する技術を開発しました。手のひら静脈の高速撮影の開発で蓄積したノウハウなどにより、手のひらを一度かざす一連の動作の中で手のひら静脈と指紋の情報を安定に取得し、一度の操作だけで高い精度の認証ができます。

  2. 識別対象数を高速に絞り込む技術

    100万人という識別対象の人数から、識別対象データを高速に絞り込むための技術を開発しました。手のひら静脈と3つの指紋から合わせて4つの絞り込み用特徴情報を抽出し、この情報を用いて、高速な識別対象数の絞り込みを実現しています。

  3. 手のひら静脈と複数指紋の融合で特定の1人を正確かつ安定に識別する技術

    識別の高精度化のため、手のひら静脈と3つの指紋情報を用いて、個人の特定を行います。絞り込んだデータを対象に識別処理を行い、手のひらと3つの指紋の識別結果を合わせて判定することにより、正確かつ安定に1人を特定する融合判定技術を開発しました。

  4. 識別処理の並列効果を高める技術

    識別処理を並列して行う技術を開発しました。識別すべき人数に応じて識別処理を行うサーバの数を増減させることも可能で、クラウド環境での利用に適しています。


図3 開発した認証システムの概要
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効果

本技術により、100万人規模のユーザーが手ぶらで本人確認できる認証サービスが提供できるようになります。たとえば、身分証明書などを持たずに生体認証だけで本人確認を行うことができるため、セキュリティと利便性が求められるさまざまなシーンでの利用が期待できます。サーバの台数を追加することで大規模な認証が可能なことから、住民登録が完備されていない国において、1人ずつにIDを付与して情報社会基盤を立ち上げる際の基本システムとしても利用できます。

また、本技術では、入国管理や社会IDなどで用いられている汎用製品の指紋センサーから出力される指紋画像データをそのまま利用することができます。したがって、すでに普及している指紋センサーに手のひら静脈認証を追加するだけで容易に導入することも可能です。


図4 大規模な生体認証サービスの適用イメージ
拡大イメージ

今後

本技術のさらなる高速化と高精度化を進め、2011年度中に1,000万人規模の認証を可能とするとともに、さまざまな利用シーンへの適用を検討していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 虹彩認証:
眼の表面から見える虹彩の模様を用いた認証。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ソフトウェアシステム研究所
電話 044-754-2670
メール LS-Multi-Bio-2011@ml.labs.fujitsu.com


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