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PRESS RELEASE (技術)

2010年12月6日
株式会社富士通研究所

運転体験が可能な広域道路交通シミュレーターを開発

渋滞しない未来の道路交通の実現にむけて

株式会社富士通研究所(注1)は、広域の道路上にある数万台の車両それぞれの挙動をリアルタイムで再現し、その中の1台に仮想的に乗車して運転体験することができる、広域道路交通シミュレーターを開発しました。

このシミュレーターにより、交通の円滑化に向けたさまざまな施策の事前検証を行うことができます。また、運転体験によって、実際のドライバー視点で施策の効果や問題点を評価でき、その道路の状況に合わせた適切な施策を設計することが可能です。

これにより、安全で快適、かつ、環境にやさしく、利用者も納得できる交通環境づくりを支援できます。


図1. 今回開発した交通シミュレーター

開発者インタビューおよびデモンストレーション
(再生時間 4分27秒・音声あり)

開発の背景

道路渋滞や交通事故の防止、車の運転によるCO2の排出の低減などのために、道路交通の円滑化が重要な課題となっています。それに対して、カーナビによるVICS(注2)サービスやETCの設置、高速道路料金の見直しなどが施行されているほか、信号情報の事前通知やロードプライシング(注3)などの新たな施策も検討されています。

これらの施策の効果は、適用場所や状況によって大きく異なるため、それぞれの場合について有効な方法を事前に検証する必要があります。しかし実際の道路上での事前検証は多くの場合で困難であるため、交通施策の効果や影響を仮想環境上で評価できる交通シミュレーターが開発されています。さらに、交通施策が実際のドライバーに与える影響を検証するためには、運転体験による評価が必要となります。

課題

交通シミュレーターでの運転体験によって交通施策の効果や問題点を正しく評価するためには、少なくとも数キロメートル四方の市街地道路を対象として、数千台から数万台の車両の詳細な挙動をリアルタイムに再現することが必要です。しかし、そのためにはドライバーの挙動から、経路選択、運転操作や車体の物理的な運動、車両間の相互作用など、膨大な量の計算が必要となるため、従来の交通シミュレーターではリアルタイムに計算ができず、運転体験の実現は困難でした。

開発内容

今回、広域の道路上にある数万台の車両の詳細な挙動をリアルタイムにシミュレーションするとともに、毎秒60フレームのドライバー視覚映像を生成することにより、その中の車両1台に仮想的に乗車して運転することを可能にしました。


図2. 広域道路交通シミュレーターでの運転体験実現技術
拡大イメージ

数万台の車両の挙動をリアルタイムにシミュレーションするために、広域の道路を複数の領域に分割してそれぞれの領域を並列に計算します。このとき、領域の境界をまたがった車両の移動や車両間の相互作用も正しくリアルタイムに同期します。また、ドライバーの挙動や経路選択、運転操作や車体の物理的な運動などについては、階層化した車両挙動計算モデルにもとづいて階層ごとに計算の量や頻度を変え、リアルタイムでの計算を可能にしました(図2)。

さらに、ドライバー視界映像の生成に必要な結果を毎秒60回収集し、リアルタイムで映像を生成します。これらにより、体験者は広域道路での走行を仮想的に体験できます(図3)。


図3. 運転体験環境

効果

今回開発した技術により、広域の道路で交通施策のシミュレーションをおこない、運転体験によりドライバーの視点で評価することができます。これにより、安全で快適、かつ、環境にやさし く、利用者も納得できる交通環境づくりを支援できます。

交通施策の例として、CO2排出量削減のため、なるべく加速や減速をせずに信号を通過できる推奨速度をドライバーに通知するサービスを、東京都の銀座中央通り約2キロメートル区間についてシミュレーションし、運転体験による評価を行いました。その結果、通知方法や通知タイミングによって運転のしやすさやCO2削減効果が変わることがわかりました。通知方法を改善することにより、運転しやすく効果の高いサービスを短時間で検証することができました。

今後

交通状況センシングやテレマティクス(注4)を用いた交通誘導などのサービスの評価に適用し、サービスの具体化を支援します。また、シミュレーション範囲の広域化と、評価対象となるサービスの拡大を進め、都道府県や地方レベルでの広域交通施策の検証への適用を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
  注2 VICS:
Vehicle Information and Communication System。渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションなどの車載機に表示する情報通信システム。
  注3 ロードプライシング:
特定区域の通行車両への課金により交通流入を抑制する交通施策。
  注4 テレマティクス:
車両に携帯電話などの通信システムを利用してサービスを提供すること。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ITS研究センター
電話: 078-934-2429(直通)
E-mail: itssim-press@ml.labs.fujitsu.com


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