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PRESS RELEASE (技術)

2010年11月8日
株式会社富士通研究所

企業内のWebアプリケーションを部品化して再利用する技術を開発

部品化に必要な時間を従来の約10分の1に短縮

株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所)(注1)は、企業内のWebアプリケーションを部品化し、他のサービスと組み合わせて利用するマッシュアップの技術を開発しました。従来の企業内Webアプリケーションは開発時に部品化を想定して作られていない場合が多く、Webアプリケーションの機能を部品化するための仕組みであるインターフェースが提供されていません。このため、企業内のWebアプリケーションどうしを組み合わせて再利用するには手間と時間がかかっていました。

本技術によって既存のWebアプリケーションを簡単に部品化して再利用できるようになります。これにより、部品化の工数と開発時間を従来の約10分の1に削減し、ユーザが希望するサービスをいち早く提供できます。


図1 マッシュアップ技術による改善イメージ

開発の背景

企業を取り巻く市場の変化が激しくなっており、企業内の業務システムも市場の変化に合わせてスピーディーに変化させる必要があります。しかし、市場が変化するたびにシステムを再度開発するのでは、開発に時間がかかってしまい、変化に対応するスピードが足りません。企業内のシステムについては、既存の機能を部品化してそれぞれを独立させ、他の複数の部品化されたサービスと組み合わせて利用することで、新規に開発する範囲を最小限にとどめることが求められています。

マッシュアップとは

マッシュアップとは、既存のWebアプリケーションを部品として用い、他のWebアプリケーションと組み合わせることによって、あたかも単一のサービスのように利用することです。地図や乗換え検索などのWebアプリケーションでは、提供しているサービスを部品として利用するインターフェース(API)が公開されています。これにより、さまざまなWebアプリケーションを部品として組み合わせることができます。たとえば、Webアプリケーションで提供される地図のインターフェースを利用することで、地図上にショップの情報を表示することができます。一方、企業内の業務システムを部品化し、それらを組み合わせたり、社外のWebアプリケーションと組み合わせたりすることをエンタープライズマッシュアップと呼び、クラウド時代の新しい開発手法として注目されています。

課題

たとえば、ユーザがWebアプリケーション利用する場合、スケジュール表や在席確認表にそれぞれログインし、IDやパスワードを入力して、最終的にOKボタンを押して結果を得ます。もし、スケジュールと在席表が1つのアプリケーションとして提供されるなら、ユーザが毎回IDやパスワードを入力することや、OKボタンを押す手間を省くことができます。

スケジュールや在席確認といった機能を部品化するためのインターフェースが用意されていれば、それらの機能を互いに組み合わせて利用できます。しかし、企業内の業務システムの多くは、開発時に他の業務システムと連携することを想定していないケースが多く、部品化するために必要となるインターフェースが提供されていません。そのため、システム開発者は、部品化するのに必要なインターフェースを作る作業が必要になります。

さらに、業務システムではIDやパスワードによる認証や、なりすましを防ぐためのセッション管理など、セキュリティを確保するための技術が用いられており、ユーザごとに異なる値(パスワード番号など)が使われているため、Webアプリケーションを部品化するにはセキュリティにも配慮が必要です。

開発した技術

今回、エンタープライズマッシュアップを簡単に行う技術と、セキュリティを確保した上で機能を部品化する技術を開発しました。これにより、部品化に要する時間を、従来と比べて約10分の1に短縮することができるようになります。

開発した技術の詳細は以下の通りです。

  1. 通信データを記録することでエンタープライズマッシュアップを容易に行う技術

    ユーザが部品化したい業務を実行する際に、ブラウザからサーバへ送信される通信データを記録・解析しておき、後で記録した手順を自動的に実行することによって業務を部品化するものです。たとえば、あるWebページ(A)にアクセスして名前を入力し、次に表示されたWebページ(B)で住所と郵便番号を入力してOKボタンを押すと、プログラムが(A)で入力された内容と(B)で入力された内容を記録しておき、それらのWebページへのアクセスと入力処理を次回からプログラムが自動的に実行できるようにします。

  2. セキュリティに配慮して部品化する技術

    上記により部品化されたWebサービスについて、利用者ごとに入力する値が変わるIDやパスワード、システムが自動的に付加するセッションIDを、プログラムが開発者に自動的に候補を提示して確認を促します。これによって、記録時のIDをそのまま再生することを防ぎ、IDなどのセキュリティを保ち、作成された部品を安全に使えるようになります。

今回開発したシステムの構成を図で説明します。(図2)

まず、開発者Aが部品化したい処理を実行します(1)。この開発者Aが操作を実行した際に発生する通信データを記録します(2)。次に、エディタを用いて、記録した通信データから利用者のIDなど値が変わる部分をパラメーターとして切り出し、汎用的な部品に変換します(3)。そして、この部品を実行サーバ上に配置してプログラムから実行できるようにします(4)。

以上で、部品化の作業は完了です。利用者Bは実行サーバにある部品(4)にアクセスすると、実行サーバ上のプログラムが手動で操作を実行したのと同じ結果を返し、利用者Bは手動で操作したのと同じ結果を取得することができます。


図2 今回開発した技術
拡大イメージ

効果

本技術により、従来は部品化して再利用することが困難であった企業内のWebアプリケーションについて、従来よりも約10分の1の時間で部品化することが可能になります。これにより、市場のスピードにあった迅速な業務開発やシステム再構築を実現します。

今後

さまざまな業務システムに適用させ、実用化に向けた検証を行っていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ソフトウェア&ソリューション研究所 ソフトウェアイノベーション研究部
電話: 044-754-2675 (直通)
E-mail: webapi@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。