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PRESS RELEASE (サービス)

2010年4月1日
富士通株式会社

人工衛星を利用したアジア太平洋域災害管理システム
「センチネルアジアSTEP2」が本稼働

当社は、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(理事長:立川 敬二、本社:東京都調布市、以下、JAXA)様が事務局を務める「センチネルアジア(注1)STEP2」システムを構築し、3月31日より本格稼働しました。

本システムは、アジアにおける防災・減災活動を支援するため、JAXA様などアジア各国の政府機関が保有する地球観測衛星で取得した衛星画像を、衛星を保有しない国を含めアジア各国の防災機関へ、衛星やインターネットの通信を利用し配信するものです。

これによりアジア各国は、近年多発している台風、洪水、地震、津波などの大規模自然災害時に、各国がより迅速に防災活動に取り組むことが可能となります。2009年10月から2010年3月までの試験運用間に、12月25日のフィリピン マヨン山噴火の被害状況把握などにおいて使用され、有効情報であることが実証されています。

本システムには、インターネット環境が十分に整備されていない地域にも配信できるよう、当社の高速ファイル転送ソリューション「BI.DAN-GUN(ビーアイドットダンガン)(注2)」を衛星やインターネットの通信機能に組み込み、高速なファイル転送を実現しています。

「センチネアルアジアSTEP2」システムの概要

「センチネルアジアSTEP2」システムは、これまでのSTEP1システムをさらに発展させ、地球観測衛星画像をインターネット上のWebサイトで閲覧できる仕組みから、センチネルアジアプロジェクトに参加している各国の防災機関に情報配信できるよう、新規に開発したものです。災害などの緊急時には、各国からの要求を、STEP2システムを通じて受け付け、画像の提供を行います。STEP2システムの衛星とインターネットの通信には、当社の高速ファイル転送ソリューション「BI.DAN-GUN」を組み込みました。その結果、遠距離間の通信や回線品質が不十分な環境で転送効率を高められ、インターネット環境が十分に整備されていない地域にも、確実な衛星画像配信を実現しました。本システムによって、衛星画像を迅速かつ確実に配信することが可能となり、今後、より多くの国にとって災害状況の早期把握などへの活用が期待できます。なお、本システムは、2009年10月より試験運用を開始し、2010年3月31日より本格稼働を開始しました。


【マヨン山の南東側斜面の拡大図】
左:溶岩流出後(2009年12月15日観測) 右:溶岩流出前(2009年11月9日観測)

「センチネルアジアSTEP2」の新サービスとハード構成

  1. 地域サーバの設置(タイ・フィリピン)

    東南アジアなどの国からもセンチネルアジアのシステムにアクセスしやすいよう、日本の中央サーバ以外に、タイとフィリピンに地域サーバを設置しました。これにより中央サーバと同じ災害情報を地域サーバからもダウンロード、閲覧することができます。

  2. 中央サーバから地域サーバへの災害情報の定期配信

    各国の防災機関が必要な時に災害情報をダウンロードや閲覧できるよう、森林火災情報、雨分布画像、気象衛星画像などを、中央サーバから地域サーバに5分ごと(注3)に衛星通信またはインターネット通信を使用して定期配信しています。

  3. 災害時の緊急配信(衛星通信「WINDS」、インターネット通信を使用)

    定期配信だけではなく、災害発生時などの緊急時にアジア各国から要求があった場合、災害地域の緊急観測を行います。取得した衛星画像は、緊急観測を要求した機関やそれぞれの国の衛星画像の解析機関に、衛星通信またはインターネット通信を使用して配信します。

  4. 衛星写真に地図を重ねて表示する「WEB-GIS」サービス

    衛星写真画像中の災害地域がよりわかりやすくなるよう、地図や標高、土地利用情報などのコンテンツを重ね合わせて表示できる「WEB-GIS」サービスです。画面分割が可能であり、災害前後の比較を容易にしました。

  5. 外部機関から取得した森林火災、雨分布などの情報の定期配信サービス

    気象庁、東京大学、オーストラリア、タイやシンガポールの研究機関より、雨分布画像、森林火災情報、気象衛星画像を取得し、地域サーバや各国の機関に定期配信します。

センチネルアジアSTEP2のハード構成

システム構築にあたり、当社製品であるPCサーバ「PRIMERGY」を9台、ネットワークディスクアレイ「ETERNUS NR1000」、高信頼基盤ソフトウェア「PRIMECLUSTER(プライムクラスタ)」を導入しています。

試験運用における緊急配信の使用実績

  • 2009年10月4日 フィリピンにおける洪水
  • 2009年10月6日 ネパールにおける洪水
  • 2009年11月2日 ベトナムにおける洪水
  • 2009年12月16日 スリランカにおける洪水
  • 2009年12月25日 フィリピンにおける火山噴火
  • 2010年2月23日 インドネシアにおける地滑り
  • 2010年3月9日 ブータンにおける森林火災

今後のセンチネルアジアの発展

2009年度にネパール、キルギス、フィジー、台湾が加わり、23ヶ国・地域、58機関、9国際機の参加へと拡大しています。また、国際災害チャータ(注4)との連携も始まりました。今後、国際社会における存在感がますます高まり、我が国の科学技術外交、アジア貢献の重要施策として発展することが期待されています。

当社は今後もJAXA様を始めとする宇宙関連機関向けのシステム開発や気象庁様を始めとした社会インフラシステムの構築から培った開発・運用技術などの経験を活かし、ITによる国際貢献をサポートしていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 センチネルアジア:
2005年にJAXA様が提唱し、アジア太平洋地域宇宙機関会議(略称APRSAF)が推進する国際プロジェクトであり、地球観測衛星などの宇宙技術を有効活用し、自然災害の被害が集中するアジア太平洋域の防災・危機管理に資する活動として、現在、23カ国、58機関、9国際機関が参加しています。
  注2 BI.DAN-GUN:
日本と欧州の間でFTP(注5)の約20倍の性能を実測し、一般的なWAN高速化装置と比較しても約1.5倍、回線品質が十分に確保できないASEAN間でもFTPの約7倍の性能を達成しており、通信回線の品質に左右されない、高速かつ確実なファイル転送を実現する、高速ファイル転送ソリューションです。回線品質の確保が十分でない地域とのインターネット通信や、国際衛星通信などに効果を発揮します。
  注3 5分ごと:
定期配信の頻度は、取得するデータの種類によって異なります。
  注4 国際災害チャータ:
宇宙機関を中心とする災害管理に係る国際協力枠組み。正式名称を「自然または人為的災害時における宇宙設備の調和された利用を達成するための協力に関する憲章」といいます。1999年7月、仏国立宇宙センター(CNES)および欧州宇宙機関(ESA)によって発表され、翌2000年6月、両機関長の署名を持って発効しました。
  注5 FTP:
File Transfer Protocolの略。インターネットなどのTCP/IPネットワークでファイルを転送するときに使用するプロトコル。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

TCソリューション事業本部 TC戦略室
電話: 03-6252-2550(直通)


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