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PRESS RELEASE (サービス)

2009年10月7日
富士通株式会社

費用と期間を抑えて企業貢献度が高いシステムを開発するために

要件定義の課題を解決する新手法を確立

当社は、システム開発で重要となる要件定義(お客様のビジネス要求をシステム機能に落とし込む工程)の本質的な課題である、(1)要件の目的や要件を決めるべき役割の曖昧さの排除、(2)経営層・業務部門・情報システム部門における納得性の高い合意形成、(3)要件を洗練させ、十分な検討を経た上で期限内に確定させるマネジメントの3点を根本的に解決するための3つの方法論を「新要件定義手法」として確立し、本日より、当社が手がけるシステム開発に「新要件定義手法」の適用を開始します。

当社は、経営への貢献、業務部門の業務効率向上、情報システム部門の運用負荷軽減を実現する効果的なシステムを費用や期間を抑えて開発できるよう、お客様の要件定義の精度向上を支援します。

背景

昨今、お客様のシステム開発に対するニーズは、業務効率化だけでなく、競争力強化を見据えたものに変化しており、システムへの要求がますます多様化しています。また、経営層や業務部門からの要求は、多岐に渡り複雑化しているため、お客様の情報システム部門は、ビジネス要求をシステムの機能に落とし込む要件定義の工程で、曖昧な要求を明確にしたり、誰もが納得できる形で合意形成することが極めて難しくなっています。さらには、膨らんだ要件を絞り込めずに、開発期間や費用が当初の計画を上回ってしまったり、要件を絞り込んだとしても、結果的に経営への貢献度が低いシステムになってしまうといった問題が数多く発生しています。こういったことから、システム開発における要件定義の精度向上の重要性は、いっそう増大していると考えられています。


【 システム開発・運用の流れ 】

「新要件定義手法」について


【「新要件定義手法」】

当社は、システム開発・保守などを年間約2万件手がけており、これらの実績を分析することにより、要件定義における本質的な3つの課題を導き出しました。そして、これらの課題を解決するための3つの方法を「新要件定義手法」として確立し、あわせて、具現化するためのデータベースやワークシートを開発しました。

  1. 要件定義の3つの課題
    1. 要件の目的や要件を決めるべき役割の曖昧さの排除
    2. 経営層・業務部門・情報システム部門において納得性の高い合意形成
    3. 要件を洗練させ、十分な検討を経た上で期限内に確定させるマネジメント
  2. 3つの方法論
    1. 要件の構造化

      【 要件の階層構造 】
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      各要件を3つの役割(「経営層」「業務部門」「情報システム部門」)と「目的」「手段」の繰り返し構造で整理し、5つの階層に要件を構造化します。この構造化によって、役割ごとに定義すべき要件、部門間で合意すべき要件が明らかになるとともに、要件の完全性(注1)が確認できるため、要件の曖昧さを排除することができます。


    2. 因果関係からみた要件の可視化

      【 ワークシートの例 】
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      1.で構造化した要件の関連を一目 で把握することのできるワークシートを用意しています。これにより、要件の充分性(注2)、妥当性(注3)などが客観的に分析可能となり、納得性の高い合意形成や優先順位づけによる要件の絞り込みに貢献します。


    3. 要件を成熟させるプロセス

      【 要件の成熟度評価の例 】
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      • 要件定義の作業を、経営層・業務部門・情報システム部門の間、関連する業務部門間、部門内の部門長・担当者間といった幅広い利害関係者間の調整を考慮した合意形成のための5つのフェーズ、12のタスクに分け、タスクごとに利害関係者間の合意形成を満遍なくとるための作業を定義します。
      • 各タスク完了時に、各要件の検討度合いを38の評価軸で評価することにより、要件の成熟度(要件の内容がどこまで洗練できているか)を把握し、適切なタイミングでの対策(内容検討が遅れている要件へのてこ入れ、期限内に検討しきれない要件を対象外とする、など)をとることによって、要件の確定にいたる過程をコントロールし、期限内に検討を収束させることに貢献します。
  3. メリット
    1. 費用や期間を抑えて企業貢献度の高い効果的なシステム開発を実現

      要件の優先順位をつけたり、重要な要件に絞り込むことができるため、システム規模の膨張を抑えながら、経営への貢献、業務部門の業務効率向上、情報システム部門の運用負荷軽減を実現する効果的なシステムを開発できます。

    2. 設計、開発、テスト、運用工程での手戻りを予防

      要件の妥当性や実現性などの要件品質を要件定義の段階で検証しながら進めることができます。要件が曖昧なまま見過ごされることによる、設計、開発、テスト、運用工程における手戻りを予防することができます。

    3. 全体最適の視点で利害関係者の納得性が高いシステムを開発

      経営層や業務部門のビジネス要求とシステム機能の因果関係をトータルに可視化し捉えることができるため、さまざまな利害関係者にとって納得性の高いシステムを開発できます。

当社では、2007年から、「ソフトウェア開発のものづくり革新」における「設計の革新」の一環として、要件定義の作業プロセスやドキュメントの標準化とそれらの普及活動や、一定規模以上のプロジェクトにおける要件定義ドキュメント診断の義務化、要件定義の専門家(ビジネス・アーキテクト)の養成(約300名)など、要件定義支援技術の向上に取り組んできました。これらの取り組みにより、要件定義ドキュメントの作成率を約80%まで向上させ、要件定義項目間の整合性の確保などの「形式品質」(注4) 向上に大きな成果を上げてきました。

今後は、「新要件定義手法」を用いることで、「形式品質」だけでなく、要件の妥当性、ビジネスへの貢献度などの「内容品質」(注5) を確保することを目指します。これにより、お客様のシステム開発の手戻りを防ぎ、経営や業務の求める真の目的に合ったシステムづくりを強力に支援していきます。

目標

2010年度末に100件のプロジェクトに採用

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 完全性:
「経営の目的」、「施策」、「業務要求」、「実現手段」、「システム機能」全ての階層において要件が関連づけられていること。
  注2 充分性:
上位の要件を実現するために必要な下位の要件が全て定義されていること。
  注3 妥当性:
下位の要件が貢献する上位の要件が定義されていること。
  注4 形式品質:
要件定義ドキュメントで守らなければならない記述ルールが守られているかどうかという形式的な品質。
  注5 内容品質:
要件の内容面での品質。例えば、定義された要件が経営の目的にあっているか、経営の目的を達成するために必要な要件が全て洗い出されているか、開発工程に進むほど要件が具体化され、かつ、実現可能であることが確認されているか、システムに実装すべき業務ルールが全て明確になっているかなどを指す。

本件に関するお問い合わせ

システム生産技術本部 SI生産革新統括部 情報化企画推進部
電話: 03-6424-6316(直通)
E-mail: sii-requirementtracer@ml.css.fujitsu.com


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