PRESS RELEASE
2009年7月17日
独立行政法人理化学研究所
富士通株式会社
新システムはスカラ型単独で構成
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長、以下、理研)は、文部科学省が推進する「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト(補足1)(次世代スーパーコンピュータプロジェクト)の一環として開発を進めている次世代スーパーコンピュータの新システムを、スカラ型単独で構成することを決定しました。
新システムの開発は、理研と富士通株式会社(代表取締役社長:野副州旦、以下、富士通)が共同で実施し、性能目標10ペタFLOPS(フロップス)達成と2012年完成など、当初目標の達成を目指します。
理研は、次世代スーパーコンピュータの開発主体として2006年9月から概念設計を開始し、2007年に概念設計が終了、評価を経て開発を推進してきました。当初、システム構成は、スカラ部(補足2)とベクトル部(補足2)からなる複合システムでしたが、ベクトル部の開発を担当していた日本電気株式会社が、2009年5月に製造段階への不参加を表明したことにより、複合システムの実現が困難な状況となりました。
一方、同プロジェクトを推進している文部科学省では、プロジェクトの中間評価作業部会において、システム構成について技術的な観点から評価が行われました。この結果も踏まえ、理研は、次世代スーパーコンピュータのシステム構成について検討し、文部科学省に報告、評価を経て、新たなシステム構成を決定しました。
新システムは、当初目標どおり、LINPACK性能10ペタFLOPSの達成と、2012年の完成と共用開始のスケジュール実現を前提に検討し、スカラ型単独の構成としました。次世代スーパーコンピュータには、45nm半導体プロセス(補足3)を用いた、現時点で世界最高速(128ギガFLOPS)のCPUを採用し、ノード間ネットワークは、広帯域な通信経路を持つ直接結合網(補足4)としました。このシステム構成により、低消費電力かつ大規模な並列計算機システムの構築が可能となります。また、理研においては、登録施設利用促進機関(補足5)などとも協力し、ベクトル型のユーザーに対して充実した支援サポートを提供できるよう、検討していきたいと考えています。
次世代スーパーコンピュータは、文部科学省が2006年度から推進してきた「次世代スーパーコンピュータプロジェクト」の一環として、理研が開発主体となって次世代スーパーコンピュータ開発実施本部を組織し、世界最高性能の達成を目指して開発を進めているシステムです。
理研は、2007年4月にスカラ部とベクトル部からなる複合システム構成案を取りまとめ、これまで順調に開発を行ってきましたが、ベクトル部の開発を担当していた日本電気株式会社が2009年5月13日に詳細設計以降の試作・製造段階への不参加を表明したことにより、複合システムの実現が困難な状況となりました。
一方、文部科学省では、次世代スーパーコンピュータプロジェクトに関する中間評価を実施し、システム構成に関して技術的な観点から評価が行われ、この結果も踏まえて、理研はシステム構成を見直し、文部科学省に報告、評価を経て、新システム構成を決定しました。
新システムは、スカラ型スーパーコンピュータとなり、分散メモリ型並列計算機(補足6)システムになります。具体的な構成は以下のとおりです。
CPUには、富士通が設計した45nm半導体プロセス技術によるCPU(SPARC64™ VIIIfx、8コア、128ギガFLOPS)を採用します。このCPUは高性能と省電力を両立させており、CPUあたり128ギガFLOPSの計算性能は汎用CPUとして現時点で世界最高性能です。また、エラーリカバリ機能(補足7)を持っており、運用性の向上に寄与します。
計算ノード間を接続するネットワークは、次世代スーパーコンピュータの構成に最適な直接結合網のネットワークを採用しました。一般的に直接結合網は、システム規模の自由度・拡張性が非常に高い反面、システムの耐故障性や運用性に難点を持つことが知られていますが、今回開発したネットワークでは、多次元メッシュ/トーラスという結合方式を採用し、自由度・拡張性と耐故障性・運用性を両立しています。
また、このネットワークは、隣接したノード間で広帯域の通信路を持ち、さらに、プログラミング時の論理的なネットワーク構成イメージとして、3次元までのトーラスネットワーク(補足4)を構成することができます。これにより、ユーザーは、科学技術計算によく現れる隣同士のデータを使うアプリケーションを、効率的に実行することが可能となります。
エラーリカバリ機能を有するCPUやネットワークの性能を十分発揮するシステムソフトウェア群も併せて開発しています。特に、基本ソフトウェア(OS:オペレーティングシステム)にはLinuxを採用するとともに、標準規格に準拠した言語(コンパイラ)や、標準的な通信ライブラリを装備します。
超大規模システムを安定的に運用するためには、構成部品の信頼性を高めることはもとより、万一部品が故障してもシステム全体がダウンしないようにすることが極めて重要です。エラーリカバリ機能を持つCPUや耐故障性や運用性に優れたネットワークを採用することで、全国の研究者・技術者に次世代スーパーコンピュータシステムを安定して提供することを可能にしました。
次世代スーパーコンピュータは、試作・評価を経て、2010年度から据付を開始し、2010年度末には一部稼働、2012年に完成、共用を開始する予定です。
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次世代スーパーコンピュータは、当初、スカラ部とベクトル部という2つの演算部から構成される複合システムとして設計が進められてきましたが、新しいシステム構成ではスカラ型単独のスーパーコンピュータとなりました。このことにより、現在、ベクトル型スーパーコンピュータを利用しているアプリケーションを、次世代スーパーコンピュータにおいて効率的に実行可能なアプリケーションにするために、書き換えなどの調整が必要となります。現在、文部科学省において登録施設利用促進機関が行う利用者支援業務のあり方について検討が進められていますが、理研では、こうした関係機関などとも協力し、ベクトル型のユーザーに対して充実した支援を提供していきたいと考えています。スカラ型単一のシステムになったことによるユーザーへの影響は、文部科学省の次世代スーパーコンピュータ中間評価作業部会において限定的であると評価されています。
以上
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[問い合わせ先]
独立行政法人理化学研究所
次世代スーパーコンピュータ開発実施本部
開発グループ システム開発チーム
チームリーダー 横川 三津夫(よこかわ みつお)
電話: 048-467-9265 Fax: 03-3216-1883
企画調整グループ 企画調整チーム
川井 和彦(かわい かずひこ)
電話: 048-467-9267 Fax: 03-3216-1883
[報道担当]
独立行政法人理化学研究所
広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 Fax: 048-462-4715
富士通株式会社
広報IR室
Tel: 03-6252-2174 Fax: 03-6252-2783
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