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PRESS RELEASE (技術)

2009年5月11日
富士通株式会社

大規模ネットワークに対応したアドホック通信技術を開発

~センサーネットワークの運用コストも大幅削減~

当社はこのほど、大規模ネットワークの構築や障害発生時の修復を自動的に行う新しいアドホック通信(注1)技術を開発しました。本技術は、既存のアドホック通信方式の通信品質を向上させ、通信機器の接続台数を1,000台規模まで増やすことが可能です。また世界で初めて、ネットワークや通信機器の障害時やトラフィックの増大時に他の通信経路に迂回することで、自動的に通信を修復・維持することが可能になりました。本技術により、環境・省エネ分野などにおいて多数のセンサーを利用して情報を収集するセンサーネットワーク(注2)をより現実的なものにし、運用コストを大幅に削減できます。


開発の背景

近年、環境・省エネ意識が高まる中、CO2 排出量の見える化や消費電力量などの情報を随時収集し最適なエネルギー供給を実現する「スマートグリッド(注3)」や、CO2排出量の見える化に向けた取り組みが活発化しています。この取り組みを実現するには、電力使用量や温室効果ガス排出量など現場の状況を広範囲にわたって正確かつタイムリーに把握することがポイントになります。

このような現場の状況を把握する新たな手段として、多種多様なセンサーを設置しネットワークを介して情報を収集するセンサーネットワークが注目されています。

例えば、2009年10月開設予定の富士通館林データセンター新棟では、電力消費量の4割を占める空調制御のコストを削減するため、センサーネットワークを活用します。1,000台を超えるサーバラックとラック周辺の温度や風向をセンサーで測定し、大規模なネットワークを介して収集した情報をもとに空調をきめ細かくコントロールすることで、さらなる省エネ化を目指しています。


課題

従来、ネットワークを構築する場合、接続される通信機器の登録や通信経路の設定を人手で行っていました。また、機器の故障やケーブルの切断といった障害が発生した場合、ネットワーク管理者へ障害情報が通知され、保守担当者が現場に駆けつけていました。

データセンターなどで求められる大規模なセンサーネットワークを実現するには、ネットワーク構築にかかるコスト、さらにセンサーの追加や設置環境の変化、ネットワーク障害発生時の対応にかかるネットワークの運用コストが大きな課題となります。

ネットワークの運用を容易にする従来技術として、通信経路を自動的に発見してネットワークを構築するアドホック通信方式が研究されています。しかし、通信機器が大量になると、通信経路を発見するための制御パケットがネットワークを圧迫するため、実用では50台程度が限界でした。


開発した技術

上記課題を解決するため、以下のような機能により通信経路を自動的に形成・変更する通信技術を新たに開発しました(図 1)。


図1 新開発のアドホック通信技術
  1. 大規模経路自動検出機能

    個々の通信機器が隣接する機器との通信品質に関する様々な情報や死活状態を常に監視することで、品質の高い通信相手を選択します。互いの機器が情報を交換し合い、ネットワーク全体で最適な通信経路を自動的に形成できます。

    今回、独自アルゴリズムにより、機器が情報交換を行う際に発生する制御パケットの発生を大幅に削減することに成功し、通信品質を安定させたまま1,000台規模のアドホック通信が可能になりました。ゲートウェイ増設により、ネットワークの更なる拡張も容易です。

  2. 高速自己修復機能

    個々の通信機器が隣接する機器との通信品質などを監視した上で最適な通信経路を学習し、状況に応じて通信品質の安定した通信経路に瞬時に切り替えます。

    これにより、世界で初めて、ネットワークや通信機器のなどの障害発生時あるいはトラフィック増大時に、個々の通信機器が自動的に他の通信経路を選択して通信を修復・維持することが可能になりました。


効果

本技術により、1,000台規模のセンサーネットワークの実用化が可能になりました。また、機器の追加や障害の発生、環境変化にも柔軟に対応でき、自動的に通信を修復・維持します。

今回開発したアリゴリズムは、有線式、無線式、両方式に適用可能であり、無線LAN、特定小電力無線など、様々な通信メディアに応用できます。

今後

富士通館林データセンター新棟において、1万台のセンサーで構成されるセンサーネットワークの実証実験を行い、性能品質の検証と改善を実施します。来年度より、当社ネットワーク機器やデバイス製品への搭載を目指します。これに先立って、お客様やセンサーメーカー様向けに、評価キットなどの開発ツールを2009年度下期から提供する予定です。

また、本技術方式の普及を目指し、標準化団体への提案も行っていく計画です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 アドホック通信:
通信機器同士が自動的にネットワーク網を構築し、バケツリレー式にデータを目標まで伝達する通信技術。
  注2 センサーネットワーク:
通信機能を持った多種多様なセンサーを連携させ、モノや環境などの状態を自動認識し、タイムリーかつ適切な対処が可能になる技術。
  注3 スマートグリッド:
IT技術を活用して消費電力量などの情報を通信・制御することにより、効率的なエネルギー供給・管理を実現する次世代エネルギー網。

本件に関するお問い合わせ

富士通株式会社
ビジネスインキュベーション本部企画部
電話: 03-6252-2283(直通)
E-mail: bikikaku-contact-sensornet@ml.css.fujitsu.com



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