PRESS RELEASE (技術)
2009年4月17日
株式会社富士通研究所
~世界初!動いている手のひらから認証が可能に~
株式会社富士通研究所(注1)はこのほど、世界で初めて、動いている手のひらからでも静脈認証が利用できる撮影技術を開発しました。本技術により、1,000分の1秒(以下、1ミリ秒)程度の撮影時間で従来と同等の高い認証精度を確保することができます。この結果、手のひらがセンサーの上を通過するだけで認証を行うことが可能な、軽快な手のひら静脈認証を実現できます。
図1 手のひら静脈認証装置 |
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近年、企業や金融機関での情報漏洩やなりすましによる被害防止のため、利用者の本人認証を行う技術として、生体情報を利用するバイオメトリック認証技術の普及が進んでいます。
当社は富士通株式会社と共同で、バイオメトリック認証技術のなかでも、「高い認証精度」「体内情報を利用するため偽造が困難」などの優れた特長を持つ手のひら静脈認証技術を開発し、非接触型手のひら静脈認証装置「PalmSecure(パームセキュア)」(図1)として販売、金融機関の本人認証や企業でのPCログイン、入退室管理などに活用されています。現在、セキュリティを重視する多くのお客様から、より多様な用途への適用が期待されています。
これまでの手のひら静脈認証技術では、センサー上に手のひらをかざして静脈画像を撮影していました。さらに多様な用途に活用するためには、手のひらをかざす動作だけでなく、手のひらをセンサー上でスライドさせたりタッチさせるような感覚で認証できるなど、さまざまな操作に対応することが必要です。そのためには、手のひらがセンサー上を通過するだけでも認証可能な、手のひら静脈画像を撮影する技術が効果的です。
上記の課題を解決するために、手のひらをかざした状態で撮影する従来方式に対して、手のひらが動いている最中でも、被写体ぶれを生じないような高速シャッターで撮影する新しい方式を開発し、認証装置を試作しました。(図2)
本方式は以下の2つの要素技術で構成されています。
今回、1ミリ秒程度の短時間の撮影で十分な画質を得られるように、照明の制御および撮影用光学系の構成を最適化しました。この結果、歩く速度に相当する毎秒1メートル程度の手のひらの動きに対しても、被写体ぶれのない鮮明な画像を撮影することが可能になりました。
さらに、試作した高速撮影モジュールで撮影した連続撮影画像の中から認証に最適な画像を自動的に識別できる機能を新たに開発しました。
この機能により、従来と同じ認証ソフトウェアを利用することが可能となり、認証時間の増加なしで、動いている手のひらからの高精度な認証を実現しました。
試作基板サイズ 9 cm × 7 cm 図2 高速撮影を実現した 手のひら静脈認証装置の試作機 |
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試作機 | |
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露出時間 | 1ミリ秒 |
フレームレート | 毎秒30フレーム |
対応可能な手の動き | 毎秒1メートル(歩く速さ) |
手のひらを近づけていく動作の中で認証が行われる。 図3 新しい手のひら静脈認証の利用イメージ |
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今回開発した撮影方式により、歩く程度の速度で手のひらが動いていても、従来と同等の画質で静脈の画像が撮影可能であることを確認しました。本技術により、これまでの「体内情報であるため偽造が困難」「外部条件の影響を受けにくいため、高い適用率を実現」「非接触であるため、利用者の抵抗感が少ない」という優れた特長と高い認証精度を継承したうえで、手のひらがセンサー上を通過するだけで認証が可能な、使い勝手の向上した手のひら静脈認証を実現できます。
これにより、たとえば、非接触ICカードを駅の改札にかざすような軽快な感覚(図3)で、手のひら静脈による本人認証を行うことが可能となります。さらには、オフィスや官公庁、病院など、セキュリティと利便性が求められるさまざまなシーンにおいて、簡単で高精度な手のひら静脈認証の容易な展開が期待できます。
撮影モジュールの小型・低コスト化など、実用化のために必要な課題解決に向けた技術開発を進め、製品化を目指します。
以上
株式会社富士通研究所
画像・バイオメトリクス研究センター
電話: 044-754-2679
E-mail: fabio-hsc2009@ml.labs.fujitsu.com
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