PRESS RELEASE (技術)
2008年12月17日
株式会社富士通研究所
富士通マイクロエレクトロニクス株式会社
~パワーアンプとCMOSロジック制御回路の1チップ化を可能に~
株式会社富士通研究所(注1)と富士通マイクロエレクトロニクス株式会社(注2)は、CMOSロジック(注3)プロセスを用いて、ワイヤレス機器向けパワーアンプに適した高耐圧トランジスタを開発しました。今回、世界で初めて、45ナノメートル(以下、nm)世代のCMOSプロセスを用いて、トランジスタの耐圧を10ボルト(以下、V)まで向上させることに成功し、WiMAX(注4)のような高周波向けのパワーアンプに適用可能な高出力特性を有するトランジスタを開発しました。この技術により、パワーアンプとCMOSロジック制御回路を1チップに集積することが可能となり、高性能で低コストなパワーアンプを提供することが可能となります。
なお、本技術の詳細は、米国 サンフランシスコで12月15日から開催されている半導体の国際学会、「2008 IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM)」にて発表しました。(講演番号19.1)
ワイヤレス機器向けパワーアンプは、高周波領域で高出力電力が要求されるため、現在は、ガリウム砒素(GaAs)などの化合物半導体が使われており、汎用的なCMOSロジック半導体を用いた制御回路とは別のチップとして実装されています。これらを1チップに集積することができればモジュールの低コスト化に結びつき、WiMAXやLTE(注5)などに対応するワイヤレス機器を広く普及させることができると考えられています。このためCMOSロジック技術と親和性が高く、WiMAXなどで要求されるパワーアンプの出力性能を満たすことができるトランジスタの開発が必要になります。
WiMAXなどの高周波向けパワーアンプに要求される出力電力を実現するためには、通常のCMOSロジックプロセスを用いたトランジスタでは耐圧が十分ではありません。このため、CMOSロジックプロセスとの親和性を保ちながら、トランジスタの破壊につながるドレイン付近の電界を緩和させた構造を実現し、トランジスタの高耐圧化を図る必要があります。また、一般的に高耐圧構造は、トランジスタのオン抵抗(注6)を上昇させてしまい、高周波領域で十分な性能を得ることが困難になるため、耐圧を向上させながら、オン抵抗の上昇を抑制することが課題となります。
上記の課題を解決するために、次のような特長を持つ新構造のトランジスタを開発しました。(図1)
図1 開発したトランジスタの構造 |
従来、CMOSトランジスタで耐圧を向上させるには、ゲートとドレインの間隔を広げるという方法が採られていましたが、その方法に比べても、上記の構造によりゲートとドレインの間隔を広げる必要がないためオン抵抗の上昇を抑えることができます。
また、この構造のトランジスタは、通常の3.3VのI/Oトランジスタ(注7)の製造工程に、LDD領域を形成する工程と専用のチャネル領域を形成する工程を追加するのみで製造でき、既存のプロセスに対して親和性が高いと考えられます。
図2 パワートランジスタの特性 (測定周波数 2.1GHz, ゲート幅0.32mm) |
今回、45nm世代の製造技術で、通常の3.3Vの I/Oトランジスタに本技術を適用したところ、世界で初めて、耐圧を6Vから10Vに向上させることができました。パワーアンプ向けトランジスタの特性としては、最大発振周波数が43ギガヘルツ(以下、GHz)で、ゲート幅1 mmあたり0.6ワット(以下、W/mm)の最大電力を達成(図2)し、今回開発したトランジスタが、WiMAX向けパワートランジスタとして十分な性能を有していることを確認しました。また基本的な信頼性評価を行い、良好な結果を得ています。
上記の技術開発により、先端的なCMOSロジック技術にパワーアンプ向け高耐圧トランジスタを搭載する目処をつけることができました。今後、この技術をさらに発展させ、パワーアンプと制御回路の1チップ化を図り、低コストで高性能なパワーアンプモジュールの提供を実現していきます。
以上
富士通マイクロエレクトロニクス株式会社
共通技術本部 共通テクノロジ開発統括部
電話: 042-532-1488 (直通)
E-mail: cmos-pa@ml.labs.fujitsu.com
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