PRESS RELEASE (技術)
2008-0092
2008年4月30日
株式会社富士通研究所
~先端LSIの用途ごとに適切なソフトエラー対策が可能に~
なお本技術の詳細は、4月27日から米国フェニックスで開催されている国際会議「2008 IRPS(International Reliability Physics Symposium)」にて発表します。
ソフトエラーは、二次宇宙線の中性子線や材料中の放射性不純物から放出されるα線(注5)などが、LSI中のメモリや論理回路に影響をおよぼし、ごく稀に誤動作を引き起こす現象です。特に中性子線はソフトエラーの3~8割を占める主要因となります。ソフトエラーは、LSIの高集積化にともない増加するため、今後、ソフトエラー対策がますます重要となります。
しかし、中性子線のエネルギー分布(注6)は緯度や経度、建物の遮蔽に影響を受けるため、測定位置により異なります。従って、最適なソフトエラー対策を行うためには、実際の利用現場におけるソフトエラー発生率の正確な評価が必要となります。従来のシミュレーション評価技術や高エネルギー加速器施設を用いたソフトエラーの発生率の評価方法は、利用現場における中性子のエネルギー分布を反映しない可能性があるため、実際の利用現場におけるソフトエラーの評価実験(ソフトエラー・フィールド実験)が重要になっています。
従来のソフトエラー・フィールド実験には、以下のような課題がありました。
ソフトエラーの発生率は、大気中の中性子線のエネルギー分布に依存し、さらに中性子線のエネルギー分布は、緯度・経度や高度、建物の遮蔽などにより変化します。しかし、実際の利用現場における中性子線のエネルギー分布を正確に測定することは困難でした。
1000個程度のメモリチップを1年間測定しても、数回~10回程度のエラーしか発生しないため、十分な統計精度を得ることが難しいという状況でした。
先端LSIの利用現場におけるソフトエラー発生率を、短期間で高精度に測定する技術を確立しました。開発した技術の特長は、以下の通りです。
中性子線の強度およびエネルギー分布を正確に測定する中性子線測定器と、ソフトエラー測定システムを組み合わせて同時に測定することで、中性子線の強度やエネルギー分布とソフトエラー発生率の関係を正確に評価することを可能にしました。さらに建物の内と外で中性子線測定を行なうことによって、建物の遮蔽効果がソフトエラー発生率におよぼす影響を評価しました。
ソフトエラーの発生率を高精度に評価するため、低地の10倍以上の中性子線の強度が推定された、すばる望遠鏡(注7)があるハワイのマウナケア山頂で測定を実施し、中性子線エネルギー分布測定に成功し、短期間で高精度なエラー発生数の統計データを取得することができました。
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東京とマウナケナ山頂で測定したところ、マウナケナ山頂での中性子線の強度は東京の約16倍、さらに遮蔽効果により東京の7.4倍という結果を得ました。また、マウナケア山頂で測定したソフトエラー発生率に、7.4分の1倍を掛けて算出した値は、東京で測定した従来のデータや計算値にほぼ一致しました。
さらに、マウナケア山頂における測定では、90ナノメートル(以下、nm)世代のSRAM 1024個のサンプルに対して約2,400時間の測定を行ったところ、36回ものソフトエラーを検出することができました。東京における測定期間の約8分の1の短期間で、高精度な評価結果を得ることができました。
今回開発した技術を適用して、65nm世代以降、45nm、32nm世代のLSIのソフトエラー発生率を評価します。これにより、ソフトエラーが増加する最先端LSIについても、用途ごとに適切なソフトエラー対策(対策の要・不要、材料の選択、回路方式の決定、など)を行なうための判断材料を提供することが可能になります。
以上
株式会社富士通研究所
シリコンテクノロジ開発研究所 第一インテグレーション開発部
電話: 0594-24-2640(直通)
E-mail: acmos-ask@ml.labs.fujitsu.com
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