PRESS RELEASE (技術)
2007-0247
2007年12月12日
株式会社富士通研究所
富士通株式会社
~32nm世代に必要な配線の低抵抗化と信頼性の確保の両立に成功~
なお、今回の技術については、米国ワシントンD.C.で12月10日から開催されている半導体の国際学会、IEDM(International Electron Devices Meeting)にて発表しました。(講演番号19.6)
マイクロプロセッサの高性能化や携帯情報端末の多機能化、小型化などにともない、ロジックLSIには、高性能化、高集積化、省電力化が要求され、LSIに用いる多層配線においても、微細化が推し進めらています。例えば、現在開発段階にある32nm世代ロジックLSIでは幅50nmの銅(Cu)配線が予定されています。LSIの高性能化のためには、このような微細な配線において、配線抵抗の上昇を抑えるとともに、配線の劣化を抑制し高い信頼性を確保する技術が重要となってきます。
45nm世代までのLSIで用いられるCu配線は、Cuを保護するためにバリアメタルで周りが覆われています。バリアメタルは絶縁膜中へのCuの拡散や絶縁膜からCuへの酸素の侵入を抑制するために必要なもので、バリアメタルを厚くすれば信頼性を確保することができます。しかし32nm世代のような微細なCu配線に対してバリアメタルの占める割合が大きくなると、配線抵抗が増加してしまうため、配線抵抗の低減と信頼性の確保をいかに両立させるかが課題となっています。
今回、超薄膜のバリアメタル上にマンガン(Mn)を添加したCu配線を形成することで、配線抵抗の低減と高信頼性の確保を両立させることに成功しました。この配線構造(図1)は以下のような工程により作製されます。
図1 開発した多層配線構造 |
このMn析出層がバリアメタルの酸化を抑制するため、超薄膜のバリアメタルで、従来のバリア性能を維持することが可能になりました。
本方式を用いた多層配線技術により、従来の45nm世代まで用いられていた、Cu配線とバリアメタルを組み合わせた方法に対して、バリアメタルを3分の1に薄膜化し、配線抵抗を効果的に低減し、国際半導体ロードマップ(ITRS(注3))において提示されている、32nm世代の標準的な配線抵抗値を満たすことが可能になります。またLSIの配線における経年劣化の要因となるエレクトロマイグレーションに対する耐性寿命は従来の47倍に向上し、32nm世代の高集積で微細な配線に適用できるだけの高い信頼性を確保することができます。
上記の技術開発により、32nm世代以降のロジックLSIに適用する多層配線技術に目処をつけることができました。今後、この技術をさらに発展させ、高性能、高集積、低省電力なLSIを提供していきます。
以上
株式会社富士通研究所
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