Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. インターネットを流れる音声・映像の体感品質を「見える化」

PRESS RELEASE (技術)

2007-0187
2007年9月5日
株式会社富士通研究所

インターネットを流れる音声・映像の体感品質を「見える化」

株式会社富士通研究所(注1)は、IP電話やインターネット上の映像配信など大規模なネットワークサービス向けに、ユーザーの体感品質(QoE: Quality of Experience)を定量化し、「見える化」する技術を業界で初めて開発しました。QoEとは、音声の聞こえやすさや映像の見やすさなどユーザーが感じる品質を示す指標のことで、これまでは高価な専用装置を使わないと定量化することは困難でした。今回、ネットワークに汎用パソコン程度の性能の計測装置(計測プローブ)を複数配置し、ネットワーク中でQoEを定量化する技術を開発しました。本技術により、大規模IPネットワークにおいても、低コストかつ高精度でQoEを「見える化」し、ユーザーの視点に立ったきめ細かなネットワークサービスの運用管理を行うことができます。

開発の背景

これまでネットワークの品質(QoS: Quality of Service)は、ネットワークで情報を運ぶ単位であるIPパケットの損失や遅延などで評価されてきました。しかし、IP電話や映像配信などのサービスが増えるにしたがい、QoSに加えてユーザーのQoEの良し悪しが、今後ますます重要になると考えられます。ネットワークサービスの品質を向上させ安定的に維持するために、ユーザーのQoEをリアルタイムに定量化することは、ユーザーの満足度向上につながる重要な要素となります。

課題

ネットワークサービスにおいて、同一のQoSであっても、たとえばIP電話におけるエコー・ノイズの有無や、配信映像の種類によるちらつきの目立ちやすさの相違など、ユーザーのQoEは異なる場合がありました。QoEを表す指標値はこれまでいろいろ提案されておりますが、音声や映像などのメディアごとに、元データと劣化データの両方を与えて指標を算出する専用装置が必要でした。この装置をインターネットのような大規模ネットワークにそのまま適用すると、個々のユーザーが装置を設置しなければならず、コスト的に現実的ではありませんでした。

開発した技術

ネットワークにおいて、個々のユーザーごとではなくユーザーの集約ポイントに、複数の計測プローブを配置する構成により、大規模ネットワークに対応した、IP電話や映像配信の QoEを低コストかつ高精度に定量化する技術を、業界で初めて開発しました(図1)。開発した技術の特長は次の通りです。



図1 開発した体感品質(QoE)の「見える化」技術の概要

  1. 通話音声のQoEを高精度に定量化

    IP電話などの音声通信のQoEを高精度に定量化するため、QoSだけでなく、通話音声の代表的な劣化要因であるエコーとノイズに着目した音響分析技術を新たに開発しました。周波数スペクトルの類似度を利用し、音声通話に混入したエコーを通常条件で99%、周囲音や相手の声が含まれる場合でも83%と高い確率で瞬時に検出できます。さらに、波形変動の特異点を抽出する技術により、通話音声に入り込んだ耳障りなノイズも検出できます。

  2. 配信映像のQoEをリアルタイムで低コストに定量化

    映像シーンにより異なるQoEの指標値を、リアルタイムに算出する技術を開発しました。映像配信サーバ側で、あらかじめ想定したパケット損失率(QoSの主な指標)に応じた映像のQoE指標値を映像シーンごとに算出し、それを共通のプロファイルとして全ての計測プローブに配布します。各計測プローブではこのプロファイルを利用し、実際に計測されたパケット損失率から配信映像のQoE指標値を求めます。高度な演算を映像配信サーバ側で行うため、各計測プローブでは低負荷でリアルタイムに高精度なQoEの算出が可能になります。

  3. QoSの正確な計測

    音声や映像のQoEを正確に評価するには、QoSの正確な計測が必要です。これまで、トラフィック量が計測プローブの処理能力を上回ると、QoSの指標であるパケット損失率を正確に計測することができませんでした。今回開発した技術では、計測プローブ内で発生するパケット損失を高精度に検知することができ、専用の測定器を使用しなくても正確なQoSの計測が可能になります。

効果

今回開発した技術により、計測プローブが汎用パソコン程度の性能で実現できるため、映像や音声のQoEを低コストかつ高精度に「見える化」できるようになります。ネットワークサービスの運用者がQoEをリアルタイムに監視することで、安定したネットワークサービスの提供が期待できます。また、異常を検知した時点の特徴量から、問題発生箇所の詳細な解析が可能になり、ネットワークサービスの品質劣化がユーザーに影響を与える前に、問題を早期に解決するという活用方法も考えられます。

今後

今回開発した技術を、今後、市場の拡大が予想される体感品質評価向けネットワークマネジメント製品に順次適用していく予定です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
サービスプラットフォーム研究センター
電話: 044-754-2765(直通)
E-mail: qoe@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。