PRESS RELEASE
2007年3月29日
国立大学法人東京工業大学
株式会社富士通研究所
~超小型の光通信デバイス実現に前進~
本技術は、将来の超小型光通信システムに向けて開発したもので、文部科学省の科学技術振興調整費、産学官共同研究の効果的推進(マッチングファンド)を利用して達成されたものです。
なお、本技術の詳細は、5月23日より京都で開催される第24回強誘電体応用会議(FMA-24)、および5月27日より奈良県で開催される強誘電体応用国際会議(ISAF2007)で発表します。
ユビキタス社会において、大容量で高速な光通信システムの小型化、低価格化がますます求められています。現状の光通信システムは、光信号を処理するデバイスと、電気信号を処理するシリコンLSIによるデバイスとを別々に製造し、組み合わせています。これら2種類のデバイスをシリコン基板上に一体化した小型の光通信用デバイスが実現すれば、光通信システムのさらなる小型化、低価格化が可能となります。
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シリコン基板上に光スイッチや変調器などの通信用デバイスを実現するにあたっては、まず電気光学効果(注3)を持つ材料を基板上に形成し、その中に光を伝播させることが必要となります。すぐれた電気光学効果を持つ材料として、強誘電体(注4)であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛 (注5))が知られています。しかし、シリコン基板上に直接PZTの単結晶膜を形成すると結晶の乱れによる伝播損失が大きく、これまで光を伝播させることは困難でした。
今回、シリコン基板の表面に、3層構造(注6)の中間層を導入し、その上にPZT単結晶膜を形成しました(図1)。これによって、PZTとシリコンの反応や原子配列の乱れをおさえ、原子が規則正しく配列した高品質の強誘電体PZTの単結晶膜を形成する技術を開発しました。
(1) | 光通信で用いられる波長(1.55マイクロメートル)の赤外光で、PZT単結晶膜の伝播損失を、1センチメートル当り1デシベル(1dB/cm)以下と、従来の約10分の1にまで抑えることができました。さらに、シリコン基板上に形成した光学結晶膜に赤外光を伝播させることに、世界で初めて成功しました。 | |
(2) | 電気光学効果の大きさを表す電気光学定数(注7)は、赤外光で1ボルト当たり76ピコメートル(76pm/V)の値を確認しました。この値は、現在光変調器として広く使用されているニオブ酸リチウム単結晶の約3倍です。 |
今回開発した結晶成長技術を利用し、各種の光デバイスをシリコン基板上に形成する技術の開発を進めます。
以上
国立大学法人東京工業大学 大学院理工学研究科 材料工学専攻 篠崎研究室
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株式会社富士通研究所 基盤技術研究所 新材料研究部
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