Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

PRESS RELEASE (技術)

2007-0002
2007年1月9日
富士通株式会社

屋内向けの高精度位置測定システムを試作

~アクティブUWBタグを用いて、17センチメートルの精度を実現~

当社は、国立大学法人横浜国立大学(注1)、富士通コンポーネント株式会社(注2)と共同で、超広帯域無線技術UWB (注3)を用いた高精度な測位システムを開発しました。

本システムは、インパルス電波 (注4)を送信する小型のアクティブUWBタグ、タグからの電波の到達時間を高精度に測定するUWB基地局から実現しました。

本技術により、屋内における人やモノの位置を17センチメートル(以下、cm)の精度でリアルタイムに測定することが可能となり、オフィスにおける在席管理や、店舗における顧客の動線や荷物の位置管理など、人やモノの位置に基づくサービスの実現に貢献します。

本技術の詳細は、米国カリフォルニアで1月9日から11日まで開催される無線技術の国際学会、IEEE Radio and Wireless Symposiumにて発表します。なお、本研究の一部は、総務省の戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)「UWBインテリジェント測位センサーネットワークの研究開発と医療・ホーム・オフィスへの応用」の委託研究で実施したものです。

背景と課題

携帯電話などにGPSが搭載され、位置情報を用いたさまざまなサービスが実現されつつあります。しかし、GPSは屋外でしか使用できないため、さらなるサービス拡充に向けて屋内で人やモノのIDと位置を正確に測定する手段が求められています。

現在、パッシブRFIDタグやアクティブRFIDタグにより、屋内で人や荷物などを識別することが可能となっていますが、RFIDタグでは電波が届く範囲にタグがあることは分かるものの、タグの正確な位置は分かりませんでした。無線LANも同様に数メートルの誤差があります。また、超音波では精度は高いが測定範囲が数メートル程度という問題がありました。

技術の概要

UWBは非常に広い周波数帯域を使用する無線通信技術で、ワイヤレスUSBのような高速通信だけでなく、高精度に電波の伝播時間を測定できるという特長があります。今回開発したUWB測位システムでは、タグからの電波が複数のUWB基地局に到着する時間差からタグの位置を高精度に測定することができます。その特長は以下です。

  1. 小型UWBアクティブタグ : UWBの一種であるインパルス電波を送信する小型、低消費電力のアクティブタグを開発しました。タグは、送信機能のみを実装し、必要回路を間欠駆動することで小型、低消費電力を実現しました。タグを人やモノに付けることで、人やモノのIDと位置を正確に測定することが可能となります。

  2. 高精度で時間を測定できるUWB基地局 : UWBタグからの電波の到達時間を、330ピコ秒(ピコは1兆分の1)という高分解能で測定できるUWB基地局を開発しました。また、基地局間の距離を高精度に測定する機能を実現することで、基地局の初期設定を容易に行うことができるようになりました。

UWB基地局(上)(サイズ:100mm×100mm×40mm)と
UWBアクティブタグ(下)(サイズ:45mm×28mm×15mm)

効果

上記技術を組み合わせた測位システムを開発し、屋内の一般のオフィスと同等の実験環境において、固定または移動するタグ位置の測定実験を行いました。その結果、平均誤差が17cmと世界最高レベルの精度でタグの位置を測定できることを確認しました。システム的には同時に500個程度までのタグの位置を測定することが可能です。

今後

本技術により人やモノの高精度な位置を測定できるようになると、以下のような位置情報サービスが実現可能となります。

  1. 倉庫や店舗での荷物の正確な位置管理
  2. オフィスにおけるノートPCなどの設備の所在管理や使用履歴管理
  3. オフィスにおける社員の入退室管理や在席管理
  4. 店舗でカートの位置情報をリアルタイムに測定することによるお客様の動線把握
  5. 工場での作業員の動線管理や工具、部品の位置管理

今後、オフィスや店舗など実際の利用環境において本技術によるサービス適用性を検証し、さらなる精度向上に向けた技術開発を進めます。


以上

注釈

  注1 国立大学法人横浜国立大学:
学長 飯田嘉宏、所在地 神奈川県横浜市。
  注2 富士通コンポーネント株式会社:
代表取締役社長 小野統造、本社 東京都品川区。
  注3 超広帯域無線技術UWB:
Ultra Widebandの略称。非常に広い帯域の電波を使用する無線通信技術。無線電力が広帯域に拡散されているため、帯域当たりの無線電力は非常に低くなっている。ただし、現在、UWBはセンサーネットワーク用途では日本国内では制度化されていない。
  注4 インパルス電波:
ナノ秒(ナノは10億分の1)オーダーの非常に短い時間幅の電波を使用する。電波の到達時間を高精度に求めることができるため、高精度な測距・測位を行うことができる。

本件に関するお問い合わせ

富士通株式会社 パーソナルビジネス本部 ソリューション開発統括部

電話: 046-250-8224 (直通)
E-mail: uwbpos-ask@ml.labs.fujitsu.com


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