Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

PRESS RELEASE (技術)

2006-0206
2006年12月22日
株式会社富士通研究所

次世代混載メモリReRAMのスイッチング高速化に成功

~データの消去、書き込みで従来の3倍以上の速度を達成~

株式会社富士通研究所(注1)は、次世代の不揮発性メモリ(注2)の一つである、ReRAM(抵抗メモリ)(注3)のスイッチング速度の高速化に成功しました。今回、シリコンプロセスで用いられている窒化チタン(TiN)膜を熱酸化するという方法で実現したReRAM素子により、消去、書き込み共に従来の3分の1以下である3ナノ秒(以下、ns)以下で動作を確認しました。今後、フラッシュメモリ代替として高速、低消費電力、低コストな混載メモリ(注4)として実用化を目指します。

背景

現在、フラッシュマイコンのように、ROM(読み出し専用メモリ)ではなくフラッシュメモリのような不揮発メモリを混載することで、ソフトウェアを後から書き換えられるようにしたLSIが主流となってきています。しかし、フラッシュメモリは、2010年頃に微細化の限界に達すると予想されており、フラッシュメモリの代替となる次世代不揮発性メモリとして、各種のメモリの研究が行われています。

ReRAMは、電圧を加えることで抵抗の値が変化する材料を素子として用いたメモリです。ReRAMは、微細化に適していること、製造コストが低いことから、フラッシュメモリ後継の一つとして注目されています。

課題

混載メモリでは、メモリの消去や書き込み速度が全体の処理スループットに大きく影響を与えます。フラッシュ代替の不揮発性メモリとしては、高速な消去、書き込み速度が必要です。

ReRAMは、素子の材料によって、スイッチング時間、特にリセット(Reset)と呼ばれるメモリ消去の速度が大きく異なります。これまでのReRAMでは、かなり複雑な材料を用い、速い消去時間を可能にする方式のものでも、その速度は高々10nsでした。

技術の概要


図 試作したReRAM素子の構造と電子顕微鏡写真

今回、ReRAM素子として、窒化チタン(TiN)の膜の上に、従来より高めの温度で熱酸化する方法で酸化チタン(TiO2)膜を形成したものを作成しました(図)。これは従来のシリコンプロセスで用いられている材料と、比較的簡単な成膜方法で作成できました。

作成した素子で測定したところ、データ消去(Reset)時間は3ns以下、データ書き込み(Set)時間も3ns以下と、従来の倍以上の速度で高速にスイッチング動作することを確認しました。また、5nsと高速な電圧パルスの電圧を変えることにより、一つの素子に多値(0,1の2つ以上の値)を記憶させることが可能なことも分かり、4値書き込みの実証も行いました。


効果

シリコンプロセスで用いられている材料と簡単な成膜方法により、低コストで高速な混載メモリ向けReRAM素子を試作しました。フラッシュメモリ代替として、より微細な不揮発性メモリをReRAMで実現することができれば、携帯機器などのさらなる高性能化が見込まれます。

今後

ReRAM素子の微細加工技術の開発、読み出し・書き込み回路の設計など、組込みメモリとしてのReRAM技術の実用化に向けた研究開発を推進していきます。


以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 不揮発性メモリ:
電源を切っても内容を保持できるメモリ。
  注3 ReRAM (抵抗メモリ):
Resistive Random Access Memory。記憶素子に電圧を加えた際に生じる巨大な抵抗変化を利用するメモリ。
  注4 混載メモリ:
ロジックと同一チップに混載されたメモリの総称。通常書き換え可能なメモリを指す。

本件に関するお問い合わせ

技術に関するお問い合わせ先

株式会社富士通研究所 シリコンテクノロジ開発研究所 混載メモリ開発部
電話: 046-250-8215(直通)
E-mail: emd-md@ml.labs.fujitsu.com


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