Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

PRESS RELEASE


2006年12月20日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
独立行政法人 情報通信研究機構

ペタスケールシステムインターコネクト用
光パケットスイッチ技術の開発に成功

富士通株式会社(以下、富士通)と株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所(注1))は、次世代のペタフロップス(注2)級スーパーコンピュータシステムにおける、各計算ノード(注3)間の接続(インターコネクト)に適用可能な光パケットスイッチ技術を開発しました。

今回開発した光パケットスイッチ技術により、ペタスケールインターコネクト用に必要な10ナノ秒(1億分の1秒)以下のスイッチ速度を実現しました。これにより、インターコネクト部のスイッチ素子数、光電気変換モジュール数、接続ケーブル数を削減することが可能となり、次世代スーパーコンピュータにおけるシステムの低消費電力化、運用性の向上に大きく貢献します。

今回開発した光パケットスイッチについては、12月20日に開催される「PSIシンポジウム2006」において動展示します。この光パケットスイッチは、国立大学法人九州大学、財団法人 福岡県産業・科学技術振興財団、財団法人 九州システム情報技術研究所と富士通および富士通研究所が共同で進めている、文部科学省委託研究「ペタスケール・システムインターコネクト技術の開発」 (代表 九州大学 村上和彰教授) の成果であるインターコネクト向け光パケットスイッチ構成およびシステム制御と、日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、国立大学法人名古屋大学および富士通が共同で進めている独立行政法人 情報通信研究機構(以下、NICT、(注4))の委託研究「高機能フォトニックノード技術の研究開発」の成果である半導体光増幅器(SOA) (注5)を用いる超高速スイッチング技術の成果に基づいて実現されたものです。

背景


図 今回開発した光パケットスイッチ

次世代スーパーコンピュータは、特に原子・分子レベルでのデバイスシミュレーションや、たんぱく質の構造解析などのバイオテクノロジー分野への応用において、ペタフロップス級の計算能力が期待されています。

現在、スーパーコンピュータでは、計算ノード間の接続に電気クロスバースイッチ(注6)が広く用いられています。しかし、これをペタフロップス級のシステムに適用すると、電気スイッチ台数、接続ケーブル数が莫大な数になり、消費電力の増加や、システム構築の複雑さが課題になります。この解決手段として、広帯域、低損失、細径の伝送媒体である光ファイバーを用いる光インターコネクト技術が有望視されています。


課題

光ファイバーを用いるインターコネクトにおいて、帯域幅を飛躍的に増加させる波長多重技術(注7)と光信号を電気に変換せずに切替動作を行う光スイッチ技術は、インターコネクトシステムの簡素化、低消費電力化に非常に有効と考えられます。しかし、電気メモリ素子に相当する光メモリ素子が存在しないために、光パケット信号の制御が複雑になるのに加え、現在実用化されている光スイッチはミリ秒程度の切替速度しか持たないため、複数の計算ノード間でパケット状のデータが交換されるスーパーコンピュータ間の接続利用には適していませんでした。

開発したシステム

今回、2x2ポート(2入力、2出力)構成での光パケットスイッチを開発し(図)、パケット長1.2マイクロ秒の光パケット信号が切替動作することを確認しました。その特長は以下の通りです。

  1. 光スイッチの制御を行うアービター部や、各計算ノードからのデータを光パケット信号に変換する光パケット変換部を開発しました。これにより、光スイッチング処理において課題となる、光パケット信号のスケジューリング、パケット信号単位でのスイッチシステム同期、光パケット信号転送を可能にしました。

  2. 半導体光増幅器(SOA)を用いた超高速光スイッチ構成を採用しました。これによりペタスケールインターコネクト用に必要な、10ナノ秒以下のスイッチ切替速度を実現しました。

効果

今回開発した光パケットスイッチを用いることにより、従来の電気スイッチのみに比べて、スイッチ台数は約16分の1、ファイバー数は約16分の1、消費電力は約3分の2、ラック数は約半分に低減可能です。これにともなう運用性の向上により、ペタスケール規模のインターコネクトシステムの構築が容易になります。

今後

実システムへの導入に向け、今回開発した光パケットスイッチ技術の多ポート化(256ポート規模)、スイッチポートあたり毎秒テラビットクラスへの広帯域化とともに、システムの小型、安定化、保守運用性の向上を進めます。

また、本技術を、大容量化が進む広域ネットワーク(WAN)、構内ネットワーク(LAN)などの幅広いネットワーク分野へ適用範囲を広げる予定です。


以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 ペタフロップス:
1秒間に1,000兆回の浮動小数点演算ができる演算能力。
  注3 計算ノード:
相互接続することで、スーパーコンピュータを構成することが可能な演算装置。
  注4 独立行政法人 情報通信研究機構:
理事長 長尾 真。
  注5 半導体光増幅器(SOA):
Semiconductor Optical Amplifierの略。インジウムリンなどの化合物半導体で作られた光増幅素子。駆動電流を制御することにより、高速光ゲート素子として利用可能。
  注6 電気クロスバースイッチ:
入力線と出力線を格子状に配置し、その接点のオン・オフによって電気信号のスイッチングを行う方式。
  注7 波長多重技術(WDM):
Wavelength Division Multiplexingの略。 1本の光ファイバーに異なる波長の光信号を多重する方式。

本件に関するお問い合わせ

富士通お問い合わせ先

[技術に関するお問い合わせ先]
株式会社富士通研究所 ネットワークシステム研究所 フォトニックシステム研究部
電話: 044-754-2643(直通)
E-mail: photonic-ic@ml.labs.fujitsu.com

NICTお問い合わせ先

[委託研究に関するお問い合わせ先]
情報通信研究機構 連携研究部門 委託研究グループ 萩本、城戸、江見
電話: 042-327-6011
Fax: 042-327-5604


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