PRESS RELEASE (技術)
2006-0165
2006年10月19日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
本技術の詳細は10月15日から19日まで香川県高松市のサンポート高松で開催されている国際会議ISOM2006(International Symposium on Optical Memory)にて発表します。なお、本研究は、平成14年度に経済産業省から(財)光産業技術振興協会が受託したプロジェクト「大容量光ストレージ技術の開発事業」(平成15年度から独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト)の一環として行われました。
デジタルコンテンツの増加にともない、パソコンや家電市場においても年々HDDの大容量化が求められています。HDDの記録方式として、垂直磁気記録方式(注3)の開発が行われていますが、さらに1平方インチあたり1テラビット以上の記録密度の実現に向けて、磁気記録と、光による熱記録を併用した熱アシスト磁気記録の研究開発が活発化しています。このためには、データの書き込み時に、HDDの記録媒体上の微細な領域に効率的にスポット状の光(熱)を加えることのできる素子が必要になります。
図1 開発した光素子の構造 |
この目的の光素子の実現には、各種の方式が提案されていますが、この光素子を、HDD記録・再生ヘッドと一体化する必要があります。低コスト化を考えると、通常のHDD記録・再生ヘッドの作製で用いられるような、ウェーハ基板に薄膜を形成することで素子を積み上げて、大量に作製する技術と同じプロセスで、光素子も作ることが望まれています。しかし、従来の薄膜で作製した光素子では、ビームが十分に絞れないことや、ビームの形状が歪みを持つなどの問題があり、高い光利用効率を持った100nm以下のスポット径は得られていませんでした。
今回、HDDヘッドと同様な薄膜形成プロセスで、17パーセントという高い光利用効率をもち、88nm x 60nmと微細なビーム径を有する光素子を実現しました(図1)。
光学の薄膜で、微細な光スポットを発生させるために、光透過層を、複数の層ではさんだ積層型の光素子を考案しました。
光透過層は、ある条件で光を通すようにした薄膜で、可能な限り薄くし、高効率に光を通せる材料(Ta2O5 :酸化タンタル)を組み合わせました。入射光を薄膜で絞るため、簡単でスポット径の制御も容易な構造です。さらに外側の層や横方向に入射した光を、光透過層に集めるような構造を薄膜の積層構造で実現し、光の強度を強くしました。
このような構造の光素子を実現するにあたり、設計時点で厳密な電磁界計算を行い、最適な構造を設計しました。ここでは、FDTDシミュレーター「Poynting for Optics」(注4)を使用しました。
図2 今回得られた光スポット |
今回作製した光素子に波長400nmの光を入射し、光スポットを測定した結果、88nm x 60nm(半値全幅)(注5)という微細なスポットが得られたことを確認しました(図2)。積層型で、100nmを下回る光スポットは世界で初です。今回開発した技術により、熱アシスト磁気記録用HDDヘッドに適した光素子が可能となりました。
今後、この光素子を、記録用、再生用HDD ヘッドと一体化し、2012年頃の実用化(製品化)を目指します。また、大容量化に向けたさらなる光スポットの微細化や、他分野への応用を進 めていきます。
以上
電話: 046-250-8369(直通)
E-mail: multilayer@ml.labs.fujitsu.com
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