PRESS RELEASE (技術)
2006-0108
2006年6月16日
株式会社富士通研究所
富士通株式会社
~現行の90nm世代に比べてチップ面積と消費電力が4分の1に~
株式会社富士通研究所(注1)と富士通株式会社は、45ナノメートル(以下、nm)世代のロジックLSIの実現に必要な低消費電力化技術を開発しました。
本技術により、従来の45nm世代向け技術に比べて消費電力を約30%低減でき、現状の90nm世代と比べてチップ面積と消費電力をそれぞれ約4分の1にすることが可能となります。今後ますます多機能となる各種デジタルAV機器向けの画像処理チップや、マルチコア化が進むマイクロプロセッサなどへの適用が考えられます。
なお、今回の技術の詳細は、米国ホノルルで6月13日から開催される半導体の国際学会、Symposium on VLSI Technologyにて発表しました。
2008年ごろから実用化が予想されている45nm世代ロジックLSIでは、速度性能だけでなく、集積度を増大させるために低消費電力化と長寿命化を実現する技術がますます重要となってきています。素子の微細化による性能向上が難しくなり、学会などでは、新材料や新構造が提案されています。しかし、新材料や新構造を多く採用すると新たな製造プロセスも必要となり、高コストの原因となっていました。
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ロジックLSIの基本構造であるCMOSトランジスタの低消費電力化には、信号電流が流れるチャネル部分の抵抗(チャネル抵抗)や、ソースやドレイン部分の余分な抵抗(寄生抵抗)の低減と、ゲート絶縁膜からのリーク電流(漏れ電流)の低減が有効です(図1)。今回、以下の3つの従来材料と従来構造の延長技術の組み合わせで、低消費電力化を実現しました。
スリットを導入することで、トランジスタ上部のカバー膜からチャネル部へかかる圧力を大きくする工夫を施しました。チャネル部へのひずみを大きくすることで、チャネル抵抗を低減させ、信号電流を増加させました(図2)。
窒素濃度の高い絶縁膜はリーク電流を減らす一方、信頼性を維持できる寿命が短いという問題点がありました。窒素が低濃度の絶縁膜と高濃度の絶縁膜の2層構造とすることにより、ゲートリーク電流を半減させるとともに、寿命も約100倍向上させました。
高温で、ミリ秒単位の短時間での熱処理を加えるレーザースパイクアニール(注3)技術を適用することで、ソースやドレイン部分での不純物拡散を抑制し、寄生抵抗を半減させました。
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上記の3つの技術の組み合わせにより、これまでの45nm世代の技術と比べて、同じ信号電流(同じクロック周波数)とリーク電流で、電圧を1Vから0.85Vに低減可能となり(図3)、これは30%の消費電力低減に相当します。現在量産中の90nm世代のLSIと比べると、面積と消費電力を約4分の1にできます。45nm世代でも、コスト競争力のある従来と同等の材料と構造により、従来技術以上の低消費電力化が実現できました。
これにより、現在のLSIと同等の処理を低消費電力で行ったり、同等の消費電力で複雑な処理を行ったりできます。例えば、ワンセグ放送や次世代DVDなどで注目されているH.264規格(注4)の映像圧縮復元処理LSIに適用した場合、安価な携帯ビデオカメラでも高精細で高画質な映像を記録することが可能になるとともに、長時間の撮影が可能になると考えられます。
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今後、本技術を使ったロジックLSIの量産化技術開発を行い、低消費電力(高集積)で長寿命の45nm世代システムLSIを実現していきます。
以上
電話: 042-532-1253 (直通)
E-mail: c2project-ask@ml.labs.fujitsu.com
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