Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

PRESS RELEASE (技術)

2006-0059
2006年4月7日
株式会社富士通研究所

世界初! 大容量化を支えるHDD向け潤滑剤を開発

株式会社富士通研究所(注1)は、世界で初めて、ハードディスクドライブ(以下、HDD)のディスク媒体の潤滑剤に含まれる分子の高さを制御し、従来の70%以下に低減する技術を開発しました。この技術を適用することで、ディスク媒体と磁気ヘッドとの隙間を現行の10ナノメートル(以下、nm)より小さくすることが可能になり、データの読み書きの精度を上げることで、HDDの高信頼性に貢献します。将来的には1平方インチあたり1テラビット(以下、Tbit/inch2)の高密度HDDの実現を支える技術の一つになります。

本技術の詳細は、5月15日から東京で開催されるトライボロジー会議で発表します。

開発の背景

ディスク媒体や磁気ヘッド材料の技術の進歩によって、年々HDDの高密度化・大容量化が進んでいます。それに伴い、ディスク媒体と磁気ヘッドの間で確実にデータの読み書きを行う技術も必要となっています。記録密度を上げるに従って、ディスク媒体と磁気ヘッド間の隙間(浮上隙間)をより小さくし、データの読み書きの精度を上げる必要があります。

HDDのディスク媒体の表面には、ディスク媒体と磁気ヘッドが接触しても壊れないよう、また不純物が付きにくいように潤滑剤が塗布されています。現行の潤滑剤の分子の高さは2nm程度であり、約10nm(注2)の浮上隙間に対し、無視できない大きさとなってきています。さらなる高密度化・大容量化に向けて、磁気ヘッドをさらに媒体に近づける必要があり、そのためには潤滑剤の分子の高さも低くする技術が求められています。

課題

潤滑剤の分子の高さを低くするために、小さい分子量の潤滑剤材料を用いると、潤滑剤がディスク表面から蒸発しやすく、また潤滑剤が磁気ヘッドへ付着することで信頼性が低下してしまう問題があります。そこで、分子量が大きくて蒸発しづらく、かつ分子の高さの低い潤滑剤の材料を開発する必要があります。

開発した潤滑剤技術
図:開発した潤滑剤技術
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開発した技術と効果

今回、分子量の小さい潤滑剤分子を複数個連結し、連結部に保護膜と連結しやすい吸着基を導入する技術を開発しました(図)。吸着基により分子が垂直方向に伸びるのを抑制でき、分子の高さを低くすることができます。また、複数の分子を連結することにより、トータルの分子量が大きくなり潤滑剤の蒸発を抑えることができます。

その結果、現行の潤滑剤に比べて70%以下の分子の高さで、かつ蒸発しづらい潤滑剤の実現に成功しました。本技術は、分子量を大きくしても、分子の高さはほとんど変化しないという特長も持っています(注3)。また、潤滑膜の製造プロセスも従来と変わりありません。

今回開発した技術は、今後のHDD大容量化における高信頼性に貢献できると考えられます。特に、現行の浮上隙間10nmより小さい隙間で効果が発揮されると予想されます。

今後

今後は、2010年以降の実現を目指している1Tbit/inch2の記録密度のHDDに向け、本技術の実用化を目指します。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 約10nm:
ヘッドをジャンボジェット機にたとえると、地表の0.6mm上を浮上することに相当する。
  注3 分子量4,000の時、現行潤滑剤では分子の高さ約3nmに対し、新技術では分子量1,000の分子を4つ連結させても、分子の高さ約1.3nmを実現。

関連リンク

技術に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所 基盤技術研究所 新材料研究部

電話: 046-250-8261
E-mail: info-tribology@ml.labs.fujitsu.com


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