Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

PRESS RELEASE (技術)

2006-0072
2006年4月19日
株式会社富士通研究所

次世代携帯端末の受信品質向上技術の開発に成功

株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所)(注1)は、2010年頃に実用化が見込まれる次世代移動通信システム(3GPP-LTE (注2))の携帯端末において、受信品質上問題となるマルチパス(注3)の状態を正確かつ少ない演算量で推定できる技術(仮想チャネル追加法)を開発しました。今回開発した技術により、理論上最も高精度な推定を従来に比べ約10万分の1の演算量で実現することができ、高性能な受信機を携帯端末に実装することが可能になります。

今回開発した技術は、次世代移動通信システムの受信品質の向上や、携帯端末のより快適な利用に貢献します。本技術の一部は3月に東京で開催された電子情報通信学会総合大会で発表しました。

背景

2010年頃の実用化を目指し、毎秒100メガビット(以下、Mbps)でのデータ伝送が可能な移動通信システム3GPP-LTE の研究開発が進められています。移動通信では、基地局から送られた電波が建物の反射などで携帯端末に届くまでに状態が劣化し(マルチパス)、受信品質に影響を与えます。特に高速データ伝送時に受信品質を上げるには、受信した電波のマルチパスの状態をより正確に推定する技術(チャネル推定)が重要になります。

富士通研究所のネットワーク関係ロードマップ
図:富士通研究所のネットワーク関係ロードマップ

課題

正確なチャネル推定を行うには、受信した電波から受信したい信号とマルチパスによる雑音とを高精度で効率的に分離することが求められます。広く使われている従来手法は、一定領域の雑音を単純に取り除くものですが、雑音と同時に受信したい信号の一部も除去されてしまい、推定精度は低くなっていました。また理論上最も高い精度でチャネル推定ができることが知られているMMSEアルゴリズム(注4)では、演算量が膨大となり携帯端末への実装は現実的ではありませんでした。

開発した技術

今回開発した仮想チャネル追加法は、受信した電波の有効領域の外側に仮想的な信号を新たに加えて処理してから、従来のように一定領域の信号を取り除くものです。これにより、受信したい信号と雑音との分離を、MMSEアルゴリズムと同等の高い精度で行うことができました。また、仮想的な信号を加えるにあたって、演算量の少ない計算手法を開発することで全体の演算量もMMSEアルゴリズムに比べて約10万分の1に大幅に削減できました。

効果

本技術により、3GPP-LTEにおいて高性能な受信機を携帯端末に実装することが可能になります。また、本技術は3GPP-LTEだけでなくWiMAX(注5)のような次世代無線LANにも適用が可能です。

今後

今後、3GPP-LTEの標準化仕様に合わせて2010年頃の実用化を目指します。


以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 村野和雄。
  注2 3GPP-LTE (3rd Generation Partnership Project, Long Term Evolution):
移動通信システムの標準化プロジェクト(3GPP)で検討されている次世代システム。3.9世代ともいう。
  注3 マルチパス:
基地局から送信した電波がビルなどの反射により複数(マルチ)の経路(パス)で携帯端末に届く状態。
  注4 MMSEアルゴリズム:
Minimum Mean Square Error(最小平均2乗誤差)推定。推定誤差が最小となるようなマルチパスの状態を計算するアルゴリズム。
  注5 WiMAX (Worldwide Interoperability for Microwave Access):
IEEE802.16(a,e)規格の愛称、または同規格に基づく機器の認証機関。異なるメーカー機器間の相互通信性認証も行う。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所 ワイヤレスシステム研究所 モバイルターミナル研究部

電話:046-839-5374(直通)
E-mail: adr-mt@ml.labs.fujitsu.com


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