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生体タンパク質の光物性を予測可能なソフトウェアを開発
今回開発したソフトウェアは、網膜のタンパク質が特定の波長を吸収するメカニズムを分子・電子レベルで解明するために有用なツールで、色素を含む樹脂材料や新たな原理の感光材料の設計にも応用が期待できます。 なお、開発したソフトウェアの詳細は、9月27日から開催された分子構造総合討論会2005(江戸川区総合区民ホール)にて発表しました。 【背景】近年、計算化学シミュレーションを用いた生体物質の予測技術が注目を集め、生体タンパク質の働きを分子・電子レベルで解明することができるようになってきました。中でも、光を感じるタンパク質のロドプシン(注3)は、Gタンパク質共役受容体(注4)の一種で立体構造も明らかになっていることから、新薬開発におけるシミュレーションなどで幅広く研究されています。 【課題】分子構造から光物性を予測するには、少なくとも分子サイズの3から4乗に比例する計算時間とメモリサイズが必要となるために、ロドプシンなどの大きい分子サイズのタンパク質全体を直接計算することは困難でした。従来はタンパク質のうち光活性部分のみを中心に計算していましたが、不活性部分の影響を十分に考慮できないため予測精度が低くなるという問題点がありました。 【開発した技術】今回開発したのは、タンパク質の活性部分の光物性を不活性部分の影響を考慮して計算できるように改良したソフトウェアで、以下の3つの技術からなります。
【効果】ロドプシンなどレチナールを活性部位として持つタンパク質10種について、レチナールの吸収波長(λ)のシミュレーションによる計算値と実測値とを比較しました(図2)。その結果、実測値との差が-9ナノメートルから+15ナノメートルと、従来手法(40ナノメートル程度の差)に比べて極めて小さいことが実証できました。 開発したソフトウェアは、レチナールを持つタンパク質の光物性を極めて高精度に予測できるので、網膜のタンパク質が光に反応するメカニズムを分子レベルで理解するための基礎研究のツールとして有用です。また、本ソフトウェアは、樹脂中に分散した色素の波長計算にも原理的に適用可能なため、新たな感光材料や、機能性有機色素の材料開発を支援することが期待できます。 【今後】今回開発したソフトウェアは、2005年12月以降、分子軌道計算ソフトウェア「MOS-F V7」として製品化し、計算化学ソフトパッケージ「MOPAC(注5)シリーズ」にバンドルする予定です。 富士通はバイオ・ナノテク材料などのシミュレーションに使われる計算化学ソフトウェアを自主開発製品として20年以上継続して開発、提供してきました。これらは、研究開発の現場で生まれたシミュレーション技術をソフトウェアパッケージ提供部門に積極的にフィードバックすることにより得られたものです。本研究開発もその一環であり、今後も引き続き有用な研究開発、製品開発・提供を続けていきます。
【商標について】記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。 以上 注釈
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