[ PRESS RELEASE ](技術) |
2005-0081
2005年6月6日
株式会社富士通研究所 |
45ナノメートル世代LSI向け多層配線技術を開発
〜世界初!ポーラスLow-k材料を全面採用〜
本技術の詳細は、6月6日〜8日に米国サンフランシスコで開催される国際配線技術会議 (IITC2005:2005 IEEE International Interconnect Technology Conference)で発表します。
図1 銅・NCS多層配線の断面透過電子顕微鏡写真 (左はLSI多層配線のイメージ)
【開発の背景】
LSIの微細化によって顕著になる配線間の寄生容量(注2)は、LSIの動作速度を低下させる要因となります。配線間の寄生容量を下げるためには、絶縁材料として誘電率の低い材料を用いる必要があり、そのための技術開発が世界中で進められています。
富士通研究所では、すでに65nm世代LSI用として、機械的強度と低誘電率をあわせ持つNCSを触媒化成工業株式会社と共同で開発し、絶縁膜の一部に適用して耐久信頼性と実装信頼性を実証しています。45 nm世代LSIでは、配線間の寄生容量がさらに増大することが予想されるため、NCSを用いた多層配線のプロセス技術の開発を進めてきました。
【課題】
65nm世代LSIではNCSを一部に適用するだけでLSI高速化に十分な配線性能が得られます。しかし、45nm世代LSIの要求性能を得るためには、配線の微細な部分に使われる絶縁膜の全てにNCSの適用を拡大することが必要です。一方、一般にポーラス材料は膜内に空孔(ポア)を持つため強度が低く、適用を拡大すると、外部からの機械的なストレスや、熱ストレスに対する銅配線の信頼性の確保が難しくなります。
【開発した技術】
今回、多層配線の微細な部分の絶縁膜全てにNCSを適用するプロセス技術を開発し、銅配線とNCSによる多層配線の開発に成功しました。(図1)
平均サイズ1 nmのポア構造を実現することにより、強度低下や絶縁不良の原因となる大きな空隙(ボイド)の発生を抑制し、配線の信頼性を向上させました。
熱ストレスの影響をシミュレーションにより検証し、NCSの優位性を確認しました。
配線層間の密着性を強化するプロセスを新規に開発しました。
あきる野テクノロジセンターの最先端半導体製造ラインで、NCSに最適化した微細加工条件を開発しました。
【あきる野方式について】
今回開発した技術は、あきる野方式の一環として開発しています。
次世代LSIの開発、実用化には、材料技術、プロセス技術、設計技術などの要素技術開発と、それらの密接な連携によるインテグレーションが不可欠です。富士通研究所は、富士通株式会社と共同で、以下のようにして開発の効率化を実現しています。
研究所を中心に要素技術開発を進め、インテグレーションの段階で研究所と事業部合同の特別チームを結成し、事業部の開発ラインを用いてプロセスインテグレーションを進め、研究所から事業部へのシームレスな技術移管を行います。
開発初期から量産装置による検討を進めるとともに、開発ラインで初期量産まで行うことで、量産時の課題を早期に抽出します。課題の解決に当たっては、研究所からさらなるサポートを行います。
テクノロジー完成時には特別チームを事業部に移管します。特別チームは生産性や信頼性のなどの量産技術完成時まで活動を継続します。
【効果】
今回開発した技術を用い、銅配線とNCSによる3層配線の試作に成功しました。
機械的強度については、実用レベルの信頼性を確保できました。また、熱ストレスについては、NCSの熱膨張係数が配線金属である銅に近いため、従来の約2分の1程度に低減できることが確認できました。
NCSの高いプロセス適合性と信頼性が確認され、45nm世代LSIの多層配線形成が可能であることを実証しました。
【今後】
本開発技術を次々世代のLSI高速化に向けた有力な手法として、製品適用に向けた検討を進めていきます。
以上
注釈
- (注1)株式会社富士通研究所:
- 社長 村野和雄、本社 川崎市中原区。
- (注2)寄生容量:
- 配線と絶縁膜がコンデンサの働きをしてしまうために生じる電気容量。絶縁膜の誘電率が高いと誘電分極が大きくなるため寄生容量も増大する。
関連リンク
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