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[ PRESS RELEASE ](技術)
2005-0073
2005年5月23日
東京大学生産技術研究所ナノエレクトロニクス連携研究センター
株式会社富士通研究所

波長1.55マイクロメートルの単一光子の観測・伝送実験に成功

〜量子暗号通信の長距離化やより高い伝送速度に向けたブレークスルー〜

東京大学先端科学技術研究センター・生産技術研究所ナノエレクトロニクス連携研究センター(注1)荒川泰彦教授グループと株式会社富士通研究所(注2)は、世界で初めて、波長1.55マイクロメートルの単一光子(注3)の観測・伝送実験に成功しました。波長1.55マイクロメートル帯は、光ファイバーの伝送損失がもっとも小さく、既存の長距離通信で広く用いられている波長帯であるため、今回の成果は、単一光子の応用分野となる量子暗号通信(注4)の長距離化や、より高い伝送速度を実現する上で、技術的に非常に重要と言えます。

本技術の研究開発の一部は、文部科学省の研究開発委託事業である「 ITプログラム〜世界最先端IT国家実現重点研究開発プロジェクト〜」の中の1課題である「光・電子デバイス技術の開発プロジェクト」によるものです。また、独立行政法人 物質・材料研究機構 ナノマテリアル研究所(注5)の協力も得ています。

【開発の背景】

インターネット上での電子商取引の普及に伴い、より安全性の高い通信に対する需要が高まっています。その中でも量子暗号通信は、盗聴の可能性をゼロにできる極めて安全性の高い究極の暗号通信として、世界中で活発に研究開発が進められています。

理想的な量子暗号通信の実現には、1パルスに含まれる光子を1個に制限できる単一光子発生器が必要となります。荒川教授グループと富士通研究所による研究グループは、3次元的に電子とホール(正孔)を非常に狭い空間に閉じ込めることができる量子ドットを用い、2004年7月、世界で初めて、1.3マイクロメートル帯での単一光子発生に成功しました。

一方、波長1.55マイクロメートル帯は、光ファイバーの伝送損失がもっとも小さく、既存の長距離通信で広く用いられている波長帯です。この波長帯での単一光子発生を確認することは、単一光子の応用分野となる量子暗号通信の長距離化や、より高い伝送速度を実現する上で非常に重要となります。

【開発した技術と実験結果】

波長1.55マイクロメートル帯の単一光子の観測・伝送実験を実現するために、量子ドット(注5)を有する半導体素子の構造をシミュレーションにより最適化し(図1)、同時に、設計どおりの構造を実現するためのプロセス技術を開発しました。このことにより、発生した光子の取り出し効率を高めた単一光子発生素子(図2)を実現しました。

今回開発した単一光子発生素子を用いて、単一光子発生検証実験を実施した結果、波長1.546マイクロメートルの単一光子発生と光ファイバーによる伝送を確認することができました。


図1 光子が特定の方向へ出力されている様子を示したシミュレーション

図2 今回作製した単一光子発生素子
QD Layerに量子ドット(QD: Quantum Dot)が存在する。

以上

注釈

(注1)ナノエレクトロニクス連携研究センター:
センター長 荒川泰彦、所在地 東京都目黒区。
(注2)株式会社富士通研究所:
社長 村野和雄、本社 川崎市中原区。
(注3)単一光子:
光は粒子性を持っており、単一光子は光の粒子1個を意味する。これ以上分割して光子の持つ情報をコピーすることができない。
(注4)量子暗号通信:
量子力学を利用して、解読に必要な秘密鍵を通信者間で安全に共有できる通信技術。実用化に最も近い方式がBB84と呼ばれる方式で、単一光子に鍵情報をのせて伝送する。
(注5)独立行政法人 物質・材料研究機構 ナノマテリアル研究所:
所長 青野正和、所在地 茨城県つくば市。

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