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[ PRESS RELEASE ](技術)
2005-0020
2005年2月9日
富士通株式会社

携帯電話で地上デジタル放送を長時間視聴できる技術を開発

〜デルタシグマ方式の低消費電力アナログデジタル変換器〜

当社は、地上デジタルテレビ放送(注1)や地上デジタルラジオ放送(注2)を受信する携帯電話向けに、デルタシグマ(以下、ΔΣ)方式(注3)を採用した低消費電力のアナログデジタル(以下、AD)変換器を開発しました。

このΔΣAD変換器により、携帯電話に搭載するチューナーの消費電力を、現在の約3分の1から6分の1となる30ミリワット(以下、mW)に低減することが可能となり、携帯電話で地上デジタル放送を長時間視聴することに貢献します。さらにOFDM復調器(注4)とのワンチップ化により、携帯電話の小型化も期待できます。

本技術の詳細は、2月6日から米国サンフランシスコで開催されている国際固体素子回路会議(ISSCC2005:2005 IEEE International Solid-State Circuit Conference)で発表します。

なお、本技術は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)からの委託により研究開発を進めています。


今回開発した
低消費電力アナログデジタル変換器

【開発の背景】

2003年12月より開始された地上デジタルテレビ放送では、携帯電話などでの受信を可能とする放送(1セグメント放送)が2005年度末より開始される予定です。また、地上ラジオ放送 もデジタル化が予定されており、2003年10月より実用化試験放送が開始されています。

【課題】

地上デジタルテレビ放送や地上デジタルラジオ放送を、携帯電話で長時間視聴するためには、チューナーやOFDM復調器の低消費電力化が必要です。チューナー部分において大きな電力を消費するのはアナログフィルターと高周波増幅器です。アナログフィルターを消費電力の低いデジタルフィルターに置き換え、さらに高周波増幅器の可変利得機能(注5)の一部をAD変換器に取り込むことで、チューナー部分の消費電力を大きく低減できます。しかし、アナログフィルターをデジタルフィルターに置き換えるためには、構成上AD変換器を高精度化する必要があります。また、可変利得機能を取り込むためにAD変換器内に増幅回路を追加すると、AD変換器内の消費電力が増えてしまいます。

【開発した技術】

今回開発したのは、携帯電話で地上デジタル放送の長時間視聴を可能とする低消費電力のΔΣAD変換器です。0.11マイクロメートル(以下、μm) CMOSを用いて作製しました。特長は次のとおりです。

  1. ΔΣ方式による高精度化

    広いダイナミックレンジ(注6)を実現するΔΣ方式を、地上デジタル放送受信用に世界で初めて採用し、AD変換器を高精度化しています。

  2. 可変分解能による低消費電力化

    分解能(注7)が可変になるΔΣAD変換器を開発し、増幅回路を追加することなく可変利得機能を実現しました。本技術により消費電力を増やすことなく、ΔΣAD変換器に可変利得機能を追加できました。

  3. 新たな位相補償回路による低消費電力化

    ΔΣAD変換器を安定動作させるための位相補償回路(注8)の構成を見直し、容量素子と抵抗素子による位相補償回路を開発しました。これによりΔΣAD変換器内に用いられる増幅回路の数を従来の2分の1にし、低消費電力化を実現しました。

【効果】

今回開発したΔΣAD変換器は、1.2ボルト(以下、V)電源動作で3.5mWの低消費電力を実現しています。現在開発されている地上デジタル放送対応携帯電話で100〜200mWになっているチューナーの消費電力を30mWに低減することができ、これにより携帯電話で地上デジタル放送を長時間視聴することに貢献します。さらにOFDM復調器とのワンチップ化により、携帯電話の小型化も期待できます。

【今後】

今回開発したΔΣAD変換器を採用した小型で低消費電力なチューナーを1年以内に製品化する予定です。

以上

注釈

(注1)地上デジタルテレビ放送:
ここでは日本の地上デジタルテレビ放送規格 ISDB-T に従った放送を指す。
(注2)地上デジタルラジオ放送:
ここでは日本の地上デジタルラジオ放送規格 ISDB-TSB に従った放送を指す。
(注3)デルタシグマ方式:
AD変換器の方式のひとつ。高速なサンプリングとループ構成により高精度なAD変換器を実現できる方式として知られており、音声用AD変換器の方式として広く使われている。
(注4)OFDM復調器:
地上デジタルテレビ放送および地上デジタルラジオ放送で採用されているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing: 直交周波数分割多重)変調波の復調器。
(注5)可変利得機能:
増幅器の利得(増幅の割合)を可変にする機能。微弱な信号を受信するためには増幅器で大きな信号に増幅する必要がある。しかし、増幅器の利得が一定のままでは、強い信号が入力された場合にも増幅してしまい、受信機の処理能力を超えてしまう。そのため、入力信号の強さに応じて利得を変える必要がある。
(注6)ダイナミックレンジ:
扱うことができる信号の大きさの最大値と最小値の比を表す。
(注7)分解能:
アナログ信号をデジタル信号に変換する際のアナログ信号の最小設定幅。
(注8)位相補償回路:
信号の時間的な遅れ(位相遅れ)を修正する回路。

関連リンク

  • 高解像度画像データを表示今回開発した低消費電力アナログデジタル変換器 (JPEG: 230KB)

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