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Japan
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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0160
2004年9月1日
株式会社富士通研究所
富士通メディアデバイス株式会社

世界最小、携帯電話向け北米PCS方式対応SAWデュプレクサの開発に成功

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)と 富士通メディアデバイス株式会社(注2)(以下、富士通メディアデバイス)は共同で、北米のデジタル携帯電話サービスである2ギガヘルツ(以下、GHz)帯PCS方式に対応する、世界最小のSAWデュプレクサ(注3)を開発しました。

本デバイスは、現在富士通メディアデバイスが販売している従来製品に対し、体積で36パーセントと大幅な小型化を達成しています。また、富士通研究所と独立行政法人産業技術総合研究所(注4)が共同で開発したプロセス技術を用い、熱歪みの小さい基板を開発することにより、温度による周波数特性の変化(注5)を従来製品の3分の2に改善しています。これらにより携帯電話の小型化、多機能化に貢献します。

本デバイスは、富士通メディアデバイスで製品化、2004年12月より販売を予定しています。

本技術の詳細につきましては、8月24日からカナダのモントリオールで開催されたIEEEの国際学会「超音波シンポジウム」(注6)で報告しています。

【開発の背景】

近年、携帯電話端末は小型・軽量化とともにテレビ機能搭載など多機能化が進んでおり、使用されている部品の更なる小型化、高性能化が求められています。携帯電話には、電波のノイズを除去するためのフィルターが搭載されており、富士通メディアデバイスでは、SAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)の技術を用いた小型で高性能のフィルターを販売しています。

携帯電話等に使用されるデュプレクサは、送信信号と受信信号を分離するデバイスで、高い性能と強い耐電力性が求められます。特に北米のPCS(Personal Communications Service)方式は仕様が厳しく、高性能のデュプレクサが求められています。富士通研究所と富士通メディアデバイスは、2002年にSAWの技術を用いて、世界で初めてPCS方式に対応したSAWデュプレクサ(幅5.0mm、奥行5.0mm、高さ1.5mm)を開発し、携帯電話の小型化、多機能化に貢献してきました。

【課題】

携帯電話の多機能化に伴い、PCS方式対応SAWデュプレクサには、さらなる小型化と高性能な電気的特性、送信電波の大きな電力に対応する耐電力性が要求されています。しかし、デバイスのサイズを小型にすると、配線密度が増加し配線間の電磁的な干渉の影響が大きくなります。また、電力がかかった際の熱密度が上がるため、デバイスの温度が上がり、寿命が短くなることや、温度による周波数特性の変化が大きくなり、挿入損失(注7)も増加するといった課題があります。

【本製品の特長】

今回、高度なSAW設計技術と、SAWデバイス用に新たに開発した熱歪みの小さい基板を用いることで、小型で高性能な2GHz帯PCS方式対応SAWデュプレクサを実現しました。

開発した技術は、以下のとおりです。

  1. SAW設計技術

    SAWチップ内の配線間の電磁界的な干渉の影響をシミュレーションにより解析し、配線レイアウト等を最適化しました。同時に、パッケージ解析ツールを用いてパッケージ内部の配線も最適化し、幅3.0mm、奥行3.0mm、高さ1.5mmと従来製品の36パーセント(体積比)の小型化を実現しました。

  2. 周波数温度特性補償技術

    富士通研究所と独立行政法人産業技術総合研究所が共同で開発したプロセス技術を用い、SAWデバイス用に新たに熱歪みの小さい基板を開発しました。これにより、2GHz帯で温度がマイナス30℃からプラス85℃へ変化した際の周波数特性の変化を、従来製品(タンタル酸リチウム基板)の9メガヘルツ(以下、MHz)から6MHzへと3分の2に改善しています。

【効果】

今回開発した技術により、PCS方式対応SAWデュプレクサを従来製品の36パーセント(体積比)に小型化しました。また、熱解析とSAW電極設計パラメータの最適化により、従来製品と同等の寿命(0.8ワットの連続波で5万時間以上、環境温度50℃)を保証し、挿入損失も0.5デシベル改善しています。

さらに、新たに開発した基板により、温度による周波数特性の変化を従来製品の3分の2に改善しています。

これにより、小型でも高性能なフィルター特性を実現しPCS方式の規格を満足させており、小型で多機能な携帯電話の開発に貢献します。

【今後】

今後、量産体制を整え、富士通メディアデバイスにて、2004年12月より量産、販売の予定です。これからもSAWデバイスの小型・高性能化により、携帯無線機器の軽量化・多機能化に貢献していきます。

以上

注釈

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 村野 和雄、本社 川崎市中原区
(注2)富士通メディアデバイス株式会社:
社長 白井 一成、本社 横浜市港北区
(注3)SAWデュプレクサ:
SAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)技術を用いたデバイスで、受信周波数用のフィルターと送信周波数用のフィルターをそれぞれ内蔵し、信号が相互に干渉しないように分離する。
(注4)独立行政法人 産業技術総合研究所:
理事長 吉川弘之、東京都千代田区
(注5)周波数特性の変化:
デバイスが扱う周波数帯の変化。変化が大きいと送信信号強度が弱くなることや受信感度の劣化をもたらす。
(注6)超音波シンポジウム:
2004 IEEE International Ultrasonics, Ferroelectrics and Frequency Control 50th Anniversary Conference
(注7)挿入損失:
デバイスに入力した信号の強度とデバイスから出力される信号の強度比で、デバイス内部で失われるエネルギー量を示す。

関連リンク

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