FUJITSU
Worldwide|サイトマップ
THE POSSIBIliTIES ARE INFINITE
Japan
元のページへ戻る本件に関するお問い合わせ先
[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0129
2004年7月5日
株式会社富士通研究所

ネットワークサービスの安定運用を支える性能診断技術を開発

株式会社富士通研究所(注1)は、ネットワークサービスの安定運用をサポートするために、ネットワークの性能劣化に対する問題を分析し、原因を探索する技術を開発しました。

今回開発した技術により、IPネットワークを流れるパケットの詳細な挙動分析に基づいて、レスポンス悪化などのネットワークの性能問題の原因と箇所を迅速に発見することが可能となり、問題発生時の早期解決が実現できます。

今回開発した技術は、ネットワーク運用管理者が、ネットワークサービスを安定して提供するとともに、運用管理コストを削減するためのものです。

なお本技術は、7月7日から9日の3日間、東京国際フォーラムで開催される「富士通ソリューションフォーラム2004」に展示します。

【開発の背景】

現代の社会生活や企業経営において、ITシステムは欠かせない存在となっており、システムダウンなどの重大なトラブルは、計り知れないほどの影響や損害をもたらします。システム全体を常に安定に保ち、信頼性を向上させるためには、その土台を形成するネットワークサービスの安定運用が一つのポイントとなります。

【課題】

これまで、ネットワークサービスの安定運用には、ルータやサーバなどの構成機器がカウントしている送受信データ量などの統計情報や、障害を検知した時の障害情報などを管理システムが収集して、集中管理を行う方法が採られてきました。しかし、Webアクセスが遅い、IP電話の音声品質が悪いなど、動いてはいるが性能的に問題があるような現象は、考えられる原因が多岐に渡ることから集中管理だけでは十分に対応できなくなっており、データを運ぶパケットの流れを分析することが必要になってきています。

【開発した技術】

今回開発した技術は、ネットワークを流れる個々のIPパケットの流れを観測し、その特性を分析することで、レスポンス悪化などの性能問題の原因とその箇所を特定する技術です。従来の単なる測定ツールとは異なり、詳細な問題分析と原因特定が可能であり、その特長は以下のとおりです。

  1. パケット通信理論に基づく詳細な性能分析技術

    性能問題の状況を定量的に把握する技術です。ネットワーク上のパケットの流れを観測し、端末やサーバにおけるパケット送受信処理(プロトコル処理)も含めて、ネットワーク全体を総合的に分析することにより、性能問題を定量的に把握します。ラウンドトリップタイム(注2)、パケットロス率(注3)、ウィンドウサイズ(注4)などの性能パラメーターを計測・分析し、これらの値から、そのネットワーク上で正常なプロトコル処理が行われていると仮定した場合のスループット値(注5)を推定して、実測スループット値との比較を行います。また、あるパラメーターの値を変えることを試みることで、スループット推定値の変化量を算出することもできます。これらにより、分析結果の理論的根拠を示すことが可能になるとともに、どのパラメーターの改善がどの程度の効果を生み出すかを定量的に把握できます。

  2. 検査パケットの投入・分析による性能劣化原因の探索技術

    性能問題の原因と箇所を特定する技術です。パケット転送の状態をテストするための専用パケット群をネットワークに送出し、そのパケットの挙動を分析することにより、性能劣化の箇所と原因を特定します。特定のパケット長やパケット間隔を持つパケット群を送信した際に発生する特徴的な現象を観測することで、パケットロスの発生区間や、全二重・半二重設定の不整合(注6)などの機器設定ミス、ルータのメモリ容量不足、伝送品質劣化などの箇所と具体的な原因を推定・提示することが可能です。これにより、交換すべき機器や設定確認すべき箇所の絞り込みが容易になり、迅速な問題解決が可能となります。

【効果】

今回開発した技術を、サーバやパソコンに搭載可能なソフトウェアとしてツール化し、現場での適用検証を行いました。これまでの検証において、異常ルータの検出や不良アクセス回線の特定など、従来の集中管理方法では発見できなかった性能劣化原因の探索に効果を発揮することが実証できました。富士通株式会社のサポート部門でも本技術の実運用を開始しています。

【今後】

今後、本技術を富士通株式会社のIT基盤「TRIOLE(トリオーレ)」(注7)の中に組み込んでいく予定です。さらに、IP電話の音声品質などを対象としたサービス品質設計・監視技術や、異常トラフィックに起因する大規模障害の予兆検知・阻止技術なども融合し、ネットワークサービスを常に健全な状態に保つ技術として体系化していきます。

性能診断技術の適用シーン
図 性能診断技術の適用シーン

以上

注釈

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 村野和雄、本社 川崎市中原区
(注2)ラウンドトリップタイム:
パケットの往復にかかる時間。
(注3)パケットロス率:
送信したパケットのうち、回線エラーなどの原因により通信途上で消失したパケットの割合。
(注4)ウィンドウサイズ:
送信したデータが受信側の端末やサーバなどに到達した時、受信側は送信側にデータが到達したことを知らせる。これを確認応答というが、送信側がこの確認応答を待たずに、連続して送信できるデータの大きさをウィンドウサイズという。ウィンドウサイズを大きくとれば、データを効率的に送ることができる。
(注5)スループット値:
単位時間当たりのパケット処理能力値。
(注6)全二重・半二重設定の不整合:
データの送信と受信を同時に行うことのできる通信方式を全二重通信、データの送信と受信を交互にしか行えない通信方式を半二重通信という。対向するネットワーク機器などに、誤って異なる通信方式が設定されていた場合、パケットロスが多くなり、一般に通信速度は低下する。
(注7)TRIOLE(トリオーレ):
社会・企業活動に要求される「ビジネスの成長・拡大」「スピーディーな業務構築」「システムの安定運用とTCO削減」を実現する富士通のIT基盤。

関連リンク

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。

元のページへ戻る ページの先頭へ

All Right Reserved, Copyright (C) FUJITSU