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世界初!ナノワイヤーを用いた高速・高感度なたんぱく質検出法を開発
今回開発した技術は、将来の高度なユビキタス・ヘルスケアを目指した基礎研究の一環として進めているものです。DNAを人工的に組み上げて作ったナノメートルサイズの構造体と半導体技術を融合させた全く新しいタイプのたんぱく質センサーチップにより、たんぱく質とたんぱく質の相互作用を解析する分析機器や、感染症や疾患で生じる非常にわずかな量のたんぱく質の変化を捉える簡易検査キットの実現を目指します。 なお、今回開発した技術は、文部科学省からの委託研究「ナノテクノロジーを活用した人工臓器・人工感覚器の開発」およびミュンヘン工科大学との共同研究の成果を利用しています。 【開発の背景】近年、重症急性呼吸器症候群 (SARS)、西ナイル熱、牛海綿状脳症 (BSE)、新種トリインフルエンザなど、様々な新しい感染症への懸念が高まっています。このような感染症の流行に対して、いち早く状況を把握し対策を講じるには、感染に関係するたんぱく質を迅速かつ高い信頼性で検査・分析する技術が欠かせません。 一方、体内のたんぱく質を網羅的に調べて病気の状態や原因を探るプロテオーム(注3)研究の進展に伴って、ガンマーカーたんぱく質のように疾患の目印となるたんぱく質を決定しようとする研究が加速されています。今後、その成果を医療や健康管理の現場で役立てるためには、疾患のマーカーとなるたんぱく質を、簡便かつ迅速に分析する技術を確立しておくことが重要です。 【課題】従来、微量なたんぱく質の検出には、BSEの1次スクリーニングに用いられているELISA(注4)のように、特定のたんぱく質とだけ結合する抗体を利用した免疫学的な手法が用いられてきました。しかし、この方法では、対象となるたんぱく質(抗原とも呼ばれる)と抗体の結合反応を繰り返す必要があり、たとえばELISAでは測定に6時間以上かかるなど、迅速に結果を求めることができませんでした。 【開発した手法】今回開発したのは、人工的に合成したDNAナノワイヤーを用いた定量的なたんぱく質の検出法です。開発した検出法の特長は下記の通りです。
【効果】DNAナノワイヤープローブを構成する抗体のモデルとしてビオチン(注5)を、検出の対象となるたんぱく質としてアビジン(注6)を用いて、今回開発した手法を検証しました。アビジン添加後、約60秒で、1リットル当り1フェムトモル(注7)の濃度まで正確にアビジンを検出でき、従来の代表的な手法であるELISAに比べ、100倍の速度、100倍の感度となることを実証できました。また、1リットル当り1フェムトモル(10-15 mol/l)から10ピコモル(10-11 mol/l)までの5桁の感度範囲で、極めて定量的に検出が可能であることを確認しました(図1)。なお、今回開発した検出法の条件を最適化することにより、試料添加後20秒以内での計測が可能となる見込みです。 【今後】今回開発した手法の研究開発に加え、抗体と標的たんぱく質の結合シミュレーションや、人工抗体の作製に関わる研究を進め、これらを半導体技術と組み合わせることで、DNAナノワイヤーを用いた、たんぱく質センサーチップの実現を目指します。 以上 注釈
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