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[ PRESS RELEASE ](製品・サービス)
2004-0111
2004年6月17日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

ダイレクトトンネルメモリの高速動作を実証

〜携帯通信機器の低消費電力化に貢献〜

富士通株式会社と株式会社富士通研究所(注1)は、ダイレクトトンネルメモリ(以下、DTM)(注2)の、書き込み時間10ナノ秒(以下、ns)(注3)以下の高速化と、データ保持時間10秒という長時間化を同時に実現しました。これにより、携帯通信機器向けに高速、低消費電力、低コストの大容量混載用メモリとして、SRAM(注4)など従来のメモリを置き換えることが期待されます。

DTMの開発にあたっては、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)より、委託研究「携帯通信機器用低電力メモリ:ダイレクトトンネルメモリの研究開発」を受託して実施しています。

なお、本技術の詳細については、6月15日からハワイで開催されている「2004 VLSI Symposia on Technology and Circuits」にて発表しています。

【開発の背景】

ネットワークを中心とするこれからのIT社会では,情報データ量が増大するだけでなく,いつでもどこでもアクセスできる携帯性が通信機器に求められています。携帯機器利用においては特にグラフィックス処理、オーディオ信号処理用途の大容量メモリ混載ASIC(注5)が急速に機能を拡張しています。

【課題】

現在混載用メモリとしてはSRAMが一般に用いられています。しかし、処理するデータ量が年々拡大しているためチップ内の大半を記憶素子が占めるようになってきています。これはSRAMがひとつの記憶素子に6つのトランジスタを用いるのでセルサイズが大きいことが要因であり、SRAMに代わる小型で高速、低消費電力、低コストの混載メモリが求められています。SRAMに比べ小型のDTMについては、富士通研究所による平成9年の開発以来、実用に向けた高速性、低消費電力性、低コスト性に関する研究開発を進めてきたものです。

【開発した技術】

DTMは極薄ゲート酸化膜と浮遊ゲート(注6)を有するメモリです。今回開発した技術の主な特長は以下の通りです。

  1. 高速性

    トンネル酸化膜を1.55ナノメートル(以下、nm)にまで極薄膜化することで、書き込み消去を10nsにまで高速化しました。極薄のトンネル酸化膜を用いるとダイレクトトンネル(注7)電流の効果が得られ、浮遊ゲートへの電子の書き込み、消去の高速化が図れます。

  2. 低消費電力性

    浮遊ゲートのポリシリコン中リン濃度を、従来の約10分の1にしてデータ保持時間を10秒にまで長くしました。これで浮遊ゲートに適度な空乏化が起こり、ゆるやかなバンドの曲がり(注8)が得られるようになります。その結果、蓄積電荷が容易に抜けずリフレッシュ間隔が約100倍長くなり、低消費電力化が図れます。

  3. 低コスト性

    ビットあたりの面積をSRAMの8分の1に小型化することで、低コスト化にめどをつけました。DTMでは自己整合プロセスで形成する1つのトランジスタでセルを構成できるので、セルサイズを縮小でき大幅なコスト競争力が見込まれます。製造プロセスはロジックプロセスと共通な工程が多く、工程数の増加は最小限に抑えられます。

【効果】

今回SRAM動作に迫る10ns以下の高速化を実現しました。また同時にデータ保持時間を10秒以上にすることにより約100分の1の低消費電力となります。さらにビットあたりの面積をSRAMの8分の1以下にすることができるため、低コスト化に有利です。

【今後】

今後、特性確保、基本設計を進めるとともに、工場でのプロセス整合性を確保するなど製品化開発を行った後、平成20年までに製品化を目指します。

図1 DTMの特長
図2 断面電子顕微鏡写真
図3 書き込み、消去特性
図4 データ保持特性

以上

注釈

(注1)株式会社富士通研究所:
本社 川崎市、社長 藤崎道雄
(注2)ダイレクトトンネルメモリ(DTM:Direct Tunneling Memory):
制御ゲートが浮遊ゲートの側壁に設けられた記憶素子。ゲート絶縁膜がダイレクトトンネル(注7)するほど薄い1-2nmのシリコン酸化膜であることが特徴。
ダイレクトトンネルメモリの基本構造の開発については、1999年12月2日に発表済。
(注3)ナノ秒:
ナノセカンド、10のマイナス9乗秒。
(注4)SRAM(Static Random Access Memory):
記憶保持のための動作を必要としない記憶素子。高速に動作するが、回路が複雑になり集積度を上げにくいという欠点をもつ。
(注5)ASIC (Application Specific Integrated Circuit):
ある特定の用途のために設計、製造される集積回路。
(注6)浮遊ゲート:
周囲を絶縁膜で囲まれた電極。絶縁膜を介して浮遊ゲートに電荷を出し入れし、情報を記憶する。
(注7)ダイレクトトンネル:
絶縁膜が非常に薄くなると、量子効果によって電子があたかもトンネルを抜けるように絶縁膜を突き抜ける。この現象をダイレクトトンネルと呼ぶ。
(注8)バンドの曲がり:
シリコンは電子の存在することのできないギャップをはさんでエネルギーの低い価電子帯とエネルギーの高い伝導帯からなるバンド(帯)状のエネルギー分布をもっている。シリコンに電圧が加わると、空乏化により電荷が追い払われてバンドの曲がりが生じる。

関連リンク

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