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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0082
2004年5月17日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

遺伝子・化合物などを大量の細胞に注入する技術を開発

〜細胞レベルの機能解析を加速し、遺伝子治療・再生医療の研究に貢献〜

富士通株式会社と株式会社富士通研究所(注1)は、任意の物質を細胞へ注入するマイクロインジェクション(注2)法を自動化する技術を開発しました。これにより、遺伝子・化合物・タンパク質などを大量の細胞に注入することが可能になります。

本技術は、細胞レベルの遺伝子機能の解析に新たな手段を提供し、テーラーメイド医療(注3)につながる診断技術や画期的な新薬の開発、遺伝子治療や再生医療(注4)の実用化の可能性が広がります。

なお、本技術を用いた自動マイクロインジェクション試作機を第3回国際バイオEXPO(5月19日から5月21日 東京ビッグサイト)に参考出展いたします。

【開発の背景】

現在、バイオテクノロジー分野では、遺伝子機能解析のために、細胞内へ遺伝子などを導入し、タンパク質発現(注5)とそれによる細胞動態(注6)を観察することが広く行われています。

このような遺伝子機能解析では、細胞と導入分子の組み合わせを選ばずに、様々な物質を、大量の細胞に注入できることが必要となってきます。

【課題】

細胞内へ物質を導入する方法としては、遺伝子などを脂質で包んで細胞に接触させる手法や、電気・超音波などの手段で細胞膜に穴をあける手法があります。これらの手法は、細胞によって注入効率が異なる、物理的ダメージが大きい、注入量を制御できないなどの問題があります。

一方、マイクロインジェクションと呼ばれる手法は、上記問題はありませんが、顕微鏡下で一つ一つの細胞に注射針を刺すため、熟練性を要し、1日当り100個程度の細胞しか処理できませんでした。そのため、例えば、遺伝子機能解析の一つであるDNAマイクロアレイ(注7)に代表される網羅的な解析に用いることは困難でした。

【開発した技術】

今回開発した技術は、コンピュータ制御された注射針で連続的なマイクロインジェクションを可能にする技術です。開発技術の主な機能・特長は、以下の通りです。

  1. 細胞捕捉の自動化

    投入された細胞を、シリコンチップ上の多数の整列微細捕捉孔により吸引して捕捉します。現在は、シャーレ底面に設けたシリコンチップを用いて実施していますが、将来的には、微細流路を用いた連続大量処理も可能な技術です。

  2. マイクロインジェクションの自動化

    画像処理により注射針と細胞の位置関係を計測し、正確かつ、連続的なインジェクション処理ができます。シャーレ底面の傾斜補正、注射針のドリフト補正を4軸(X,Y,Z軸、挿入方向)でおこなうことにより、安定して確実な注入が可能となりました。

【効果】

開発した技術により、浮遊状態の直径10-30µmの細胞に対し、1細胞あたり約5秒のマイクロインジェクションが可能になったため、1日当たり5,000個以上の細胞が処理できるようになりました。人手を介さないことで、夜間の自動作業を行えば、より多くの処理も可能となります。また、蛍光体を用いて試行した結果、熟練者による人手と同じレベルの、注入率80%以上を実現する目処が得られました。

【今後】

インジェクション処理速度の向上(目標1s/細胞)を図るとともに、本年度中に、今回開発した自動マイクロインジェクション技術のユーザ評価を進め、その結果をもとに製品化を検討してまいります。さらに、創薬研究におけるハイ・スループット・スクリーニング(注8) や、テーラーメイド医療、細胞治療(注9)への適用を視野にいれた技術開発を行っていきます。

なお、本技術を用いた自動マイクロインジェクション試作機の開発にあたっては、NEDO(注10)「バイオ・IT融合機器開発プロジェクト」の助成を受けています。

【商標について】

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

用語説明

(注1)株式会社富士通研究所:
本社 川崎市、社長 藤崎道雄
(注2)マイクロインジェクション:
先端の直径が1マイクロメートル程度のガラス注射針に遺伝子や薬剤の溶液を入れ、これを細胞に刺入し、溶液を細胞内に導入する技術
(注3)テーラーメイド医療:
個人個人に合った医療。たとえば、これまで同じ症状を見せる患者には、決まった薬が一定量与えられていたが、テーラーメイド医療は、個人の遺伝子の微妙な違いを解析し、薬の効き目や副作用を事前に判断しようとするもの
(注4)再生医療:
機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器を修復し、その機能を回復する医療
(注5)タンパク質発現:
遺伝子が、細胞内で転写・翻訳の過程を通して、固有のタンパク質を生成すること
(注6)細胞動態:
細胞の大きさ、形、細胞内のタンパク質の動きや、細胞そのものの動き等の変化
(注7)DNAマイクロアレイ:
多数の遺伝子の発現を一度に捉えることが可能な手法
(注8)ハイ・スループット・スクリーニング:
ロボット等の機器を利用し、大量の化合物の薬理評価を短時間で自動的にこなし、創薬資源となるリード化合物を選別する技術
(注9)細胞治療:
ヒトの細胞を体外に取り出し、選別、活性化、増幅などの処理を行った後に体内に戻すことで、様々な疾病を治療する方法。遺伝子治療や再生医療も含まれる
(注10)NEDO:
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

関連リンク

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