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[ PRESS RELEASE ](技術)
2004-0054
2004年3月29日
株式会社富士通研究所

モバイル機器のプログラム更新に適した差分圧縮技術を開発

株式会社富士通研究所(注1)は、携帯電話やPDAなどモバイル機器に特化した差分圧縮技術を開発しました。従来の差分圧縮技術と比較しても2分の1以下となる高圧縮性能により、モバイル機器のプログラム更新の時間短縮が可能となり、ユーザー利便性を向上できます。

本開発技術の詳細は、3月23-25日に米国、ユタ州、スノーバードで開催されるIEEE主催のData Compression Conference (DCC-2004)で発表しました。

【開発の背景】

携帯電話やPDAなどモバイル機器で利用されるプログラムの大規模化・高機能化に伴い、プログラムの仕様変更や機能追加に対応する機会が増えています。現在は、店頭あるいはパソコンのネットワークを利用してプログラムの更新を行う仕組みが確立されています。一方、いつでも、どこからでも更新ができる無線によるプログラム更新のニーズも高まっており、ユーザーの利便性を考えると、1分以内でのプログラム転送が求められています。

また今後は、組み込み型システムを主体にしたモバイル機器、情報家電、AV機器でも、無線を介して常にシステムを最新の状態に保つ機能が必要になると考えられています。

【課題】

モバイル機器のプログラム(数10MBの容量)を最大384Kbpsの無線速度でそのまま送ろうとすると数10分かかってしまいます。元データと更新データの差分だけを送る従来の差分圧縮技術を適用すれば、通常数分で送ることが可能です(注2)。しかし、今後の更新対象の増加やユーザーの利便性を考えると、さらに能力の高い差分圧縮技術が必要です。

また、従来の差分圧縮技術では、元データと更新データの異なる部分が短く交互に続く場合、極端に圧縮性能が低下するという問題がありました。

【開発した技術】

今回開発したのはモバイル機器に特化した差分圧縮と復元制御技術です。その特長は以下の通りです。

  1. RISC(注3)型プロセッサに特化した差分圧縮技術

    差分圧縮のアルゴリズムと符号化を、モバイル機器のCPUとして多く利用されているRISCプロセッサに特化させることで、高い差分圧縮効率を実現しました。RISCプログラムに特有な、同じ命令の繰返し、レジスタ変更の規則性といった特徴を積極的に利用しています。

  2. モバイル機器向け差分プログラム復元制御技術

    モバイル機器の限られたメモリリソースを効率的に利用しながら、差分復元段階での中断といった状況に対応できる差分プログラム復元制御技術を開発しました。更新に必要な元データをブロック化して効率良く保持・参照すると同時に、差分書き換えのタイミングをコントロールすることで機器の電源が切断されるような状況にも対応可能としています。

【効果】

RISC型プロセッサのプログラムを対象に圧縮性能を評価した結果、元データと更新データで異なる部分が短く交互に続くような場合を含め、元データの10分の1以下、従来の差分圧縮技術と較べても2分の1以下の圧縮性能を達成しました。また、復元途中からの復帰についても所定の時間内に復元できることを確認しました。

なお、今回開発したRISC型プロセッサに特化した差分圧縮技術は、2004年2月にNTTドコモグループより発売された「FOMA® F900i」に搭載され、遠隔ダウンロードによるソフトウェア更新システムに適用されています。

【今後】

今後、本技術の適用範囲を、より多くのモバイル機器やAV機器に拡げていく予定です。

遠隔ダウンロードによるソフトウェア更新システム
図 遠隔ダウンロードによるソフトウェア更新システム

【商標について】

「FOMA/フォーマ」は、株式会社NTTドコモの登録商標です。

以上

用語説明

(注1)株式会社富士通研究所:
社長 藤崎道雄、本社 川崎市
(注2)通常、数分で送ることが可能:
例えば、3MBの差分データを200Kbpsの実行転送速度で送るとした場合、約2分の所要時間がかかります。
(注3)RISC:
縮小命令セットコンピュータ(Reduced Instruction Set Computer)。マイクロプロセッサの設計様式のひとつで、プロセッサ内で処理される個々の命令を簡略化し、並行して複数の命令を処理することで、性能の向上を図っている。

関連リンク

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