[ PRESS RELEASE ] (技術) |
2004-0014
2004年1月26日
株式会社富士通研究所
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高濃度燃料で長時間駆動可能なマイクロ燃料電池を開発
【開発の背景】
ノートPC・PDA・携帯電話などの携帯機器は、その高性能化・高機能化に伴い、消費電力が年々増大しています。しかし、現在主流として用いられているリチウムイオン電池の容量は既に限界に達しつつあるため、より高い容量のエネルギーデバイスの開発が急務となっています。
携帯機器への利用を想定したマイクロ燃料電池は、燃料にアルコールなどを用いるもので、リチウムイオン電池に比べて重量あたり5倍から10倍のエネルギーを蓄積することが可能です。
また、マイクロ燃料電池では、移動中など電源が使用できない状況でも燃料を注ぎ足すだけで安価に機器が連続して利用できるようになるため、ユーザーの立場からも利便性が大きく向上します。燃料電池は環境負荷の低減にも寄与すると考えられています。
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試作したマイクロ燃料電池システム |
【課題】
マイクロ燃料電池の小型軽量化には、燃料ポンプや送気ファンなどを用いないパッシブ型システムが適しています。パッシブ型システムにおいては、燃料を希釈・循環することなく燃料電池に導入するため、長時間の駆動を可能とするには高いメタノール濃度の燃料に対応する必要があります。
マイクロ燃料電池を構成する固体電解質材料には、従来、主にフッ素樹脂系の材料が用いられてきました。しかし、フッ素樹脂系の固体電解質材料は、燃料のメタノール分子が電解質材料を透過してしまうメタノールクロスオーバーという現象が顕著で、高濃度の燃料を使用した場合、発電中に燃料が失われて発電容量が下がったり、メタノールと空気の副反応により発電される電力が著しく低下したりするという問題がありました。
【開発した技術】
今回開発したのは、燃料電池のMEA(注3)において、メタノールクロスオーバーを低減する材料技術です。メタノール透過速度が低い芳香族炭化水素系の固体電解質材料の表面に、高活性な白金系ナノ粒子触媒を高密度に固定化したメタノールブロック性の電極触媒層を形成することで、フッ素樹脂系材料を用いた従来のMEAに比べ、トータルのメタノールクロスオーバーを10分の1に低減しました。
【効果】
今回開発した材料技術により、従来は使用不可能であったメタノール濃度30%の高濃度燃料を直接使えるようになり、パッシブ型燃料電池の高容量化が可能となりました。
開発したMEAを用いた燃料電池には、希釈することなく30%のメタノール水溶液を注入して発電することができます。また、厚さ15ミリメートルと極めて薄型の燃料電池システムで、15ワットクラスの高い出力を実現しました。
今回開発した材料技術により、30%濃度のメタノール燃料を300ミリリットル用いた場合、ノートPCであれば8〜10時間、駆動することが可能となります。
【今後】
今後、さらなる高性能材料の開発と製造技術の改良によって、より小型で長時間駆動可能なマイクロ燃料電池の開発を進めてまいります。
以上
用語説明
- (注1) 株式会社富士通研究所:
- 社長 藤崎道雄、本社 川崎市
- (注2) パッシブ型システム:
- 燃料ポンプや送気ファンなどを使わず、重力や自然対流のみで燃料や空気を供給し、発電するシステム。機器の小型軽量化に適する。
- (注3) MEA (Membrane Electrode Assembly):
- 電極触媒層と固体電解質材料の膜を複合化した発電ユニット。燃料電池システムにおける最少構成単位となる。
関連リンク
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