[ PRESS RELEASE ](技術) |
2003-0207
2003年11月5日
株式会社富士通研究所 |
インターネット上の不正利用画像を検出する技術を開発
今回開発した技術により、企業のロゴマーク、キャラクタ、アイドルの写真などの画像の権利が侵害されるのを防ぐことができます。
なお、本技術は、現在、東京国際展示場で開催中の「第17回新聞製作技術展(JANPS2003)」に出展しています。また、12月3日〜4日にマイドームおおさかで開催される「富士通ソリューションフォーラム」でも公開します。
【開発の背景】
近年、アイドルの写真集をインターネット上に無断公開してサイト運営者が逮捕されたり、個人がTV番組をデジタル録画して、出演していたアイドルの画像をインターネット上に無断で公開する行為などが問題となっています。また、企業のロゴマークやキャラクタなどの画像がインターネット上で不正利用されることにより、企業のブランドイメージが損なわれたり、知的財産権が侵害される危険性も増えてきています。インターネットを利用している約半数のユーザが不正利用サイトに遭遇した経験があり、不正利用の多くが画像であるという報告もあります。そこで、インターネット上の画像の不正利用を防ぐための技術が重要となってきています。
【課題】
画像の不正利用を防ぐ方法として、画像の暗号化などにより特定のユーザだけに利用を制限する方法や、管理IDを予め画像ファイル内に埋め込んでおくことで不正利用をチェックする方法があります。これらの技術は、オリジナル画像の暗号化や管理IDの埋め込みなどの事前処理が必要です。そのため、事前処理が施された画像に対しては有効であるものの、そうでない画像(例えば既に公開済みの画像)の不正利用に対応することができないという問題がありました。
【開発した技術】
今回開発したのは、画像そのものから画像の内容を表す画像特徴(*2)を抽出し、その画像特徴を利用してインターネット上の不正利用画像を検出する技術です。
以下に本技術を利用した検出処理の流れを記します。(図1)(1)顧客から送付されたオリジナル画像を、(2)オペレータが登録します。(3)収集した画像の中からオリジナル画像と類似した画像が検索されます。(4)検索された画像は仮想三次元空間に分類配置され、オペレータは画像を閲覧したり、配置を変更することで、さまざまな観点から画像を絞込むことができます。(5)画像が掲載されていたWebページを表示します。

図1:検出処理の流れ
- 事前処理(暗号化や管理IDの埋め込みなど)が不要
画像そのものから画像特徴を抽出して不正利用画像を検出するため、予め画像を暗号化したり、画像に管理IDを埋め込んだりする事前処理が不要です。そのため、事前処理に必要なコストを削減できるだけでなく、既に公開済みの画像も検出対象とすることが可能です。
- さまざまな不正利用の画像に対応可能
類似画像検索により、収集した画像の中から画像特徴同士を比較してその類似度により、オリジナル画像と類似した画像を検索します。
このとき、収集した画像の全体だけではなく部分領域も検索対象とするため、単なる複製画像だけでなく、オリジナル画像を他の画像と貼り合わせたアイドルコラージュなどの改変画像も検出可能です。
また、類似画像検索で検索された画像を仮想三次元空間に分類配置することで、目視確認を容易にしているため、キャラクタなどを模倣した画像も検出可能です。
- 効率よく不正利用画像を検出可能
インターネット上の大量の画像に対して、多次元インデキシング技術(*3)により高速な類似画像検索を実現しています。また、Webページ解析技術(*4)によってWebページ上の画像と関連するテキストのペアを抽出しておくことで、類似画像検索で検索された画像を、さらにキーワードによっても絞り込めるため、効率よく検出することが可能です。
【効果】
図2のオリジナル画像に対して、図3は類似画像検索で検索された画像を仮想三次元空間に配置した例です。左上から横方向にオリジナル画像と色に関する画像特徴が似ている順に並べています。 図4は色に関する特徴が似ている画像同士が近くに集まるように配置した例です。オリジナル画像を特徴付けている青などの色に注目して絞り込めます。図5はキーワード「キティ」で絞り込んだ例です.Webページから抽出した画像に関連するテキストに、「キティ」が含まれている画像は手前に配置されているので大きく表示します。
インターネット上の実在サイトを対象とした実験では、個人のページ上に無断掲載された有名キャラクタの複製画像や、アダルトサイト上に無断掲載された人気アイドル歌手のCDジャケットの一部を切り取った改変画像を検出することができました。
【今後】
本技術の早期実用化を目指し、マルチメディア検索サービスへの適用やコンテンツホルダ向けの商用デジタル素材画像の利用傾向調査システムなど、幅広い応用に向けた検討と開発を進めていきます。
 | 図2:検出したいオリジナル画像の例 |
 | 図3:オリジナル画像と色に関する特徴が似た画像を左上から順に配置した画面例 [クリックすると拡大表示されます] |
 | 図4:色に関する特徴が似ている画像同士が近くに集まるように配置した画面例 [クリックすると拡大表示されます] |
 | 図5:キーワード「キティ」で絞り込んだ画面例 [クリックすると拡大表示されます] |
(C)1976,2003 SANRIO CO.,LTD. APPROVAL No. T4407093
以上
用語説明
- (*1)株式会社富士通研究所
- 社長:藤崎道雄、本社:川崎市
- (*2)画像特徴
- 画像から抽出した色や形状などの画像の内容を表す数値情報のことです。その情報は多次元のベクトルで表されています。
- (*3)多次元インデキシング技術
- 多次元のベクトルで表現された画像の特徴を予め構造化して整理しておき、大量の画像に対する特徴同士の比較回数を減らすことで、類似画像を高速に検索する技術のことです。当社が独自に開発した技術を用いています。
- (*4)Webページ解析技術
- Webページに対応するHTMLファイルを解析して、そのWebページに含まれる画像とその画像と関連性の高いテキストを抽出する技術のことです。富士通研究開発中心有限公司と共同で開発した技術を用いています。
関連リンク
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