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コンピュータが新薬を作る
創薬の新時代を牽引する世界最高速の計算手法を実用化
【新薬開発と両者の取組みについて】種々の疾病には、巨大分子であるたんぱく質の異常作用が密接に関係しています。医薬品は、これら異常を来たした分子に結合して、その働きをコントロールすることで病気を直します。医薬品の標的になる分子のことを一般的に「標的分子」と呼ぶことから、医薬品の開発は、標的分子に最もよく結合する分子の発見であると言えます。 従来、このような分子を発見するためには、実際の組織や細胞を用いたり、あるいは多くの実験動物を用いたり、多くの資源や時間、人間を含めた動物の犠牲が必要とされてきました。そこで、こうした種々の犠牲や新薬開発の非効率さをできるだけなくそうと、最近では標的分子の立体構造を量子力学的原理に基づいて解析し、医薬品となり得る分子の選別をコンピュータにさせようという動きが注目されるようになりました。 この手法は「分子軌道法」と呼ばれ、ここ数年のゲノム情報の爆発的な増加と構造生物学の進展によって標的分子の立体構造が解明されるにつれ、実用化に向けていっそう期待されるようになりました。しかしながら、今までに発表された分子軌道法は、計算に膨大な時間がかかるものばかりであり、創薬をはじめ多くのバイオ・サイエンス分野への適用は絶望的でした。 富士通はこの程、時間のハードルを実質的に乗り越える、世界最速の分子軌道法による計算手法「LocalSCF法」を開発し、東海大学と共同でその実用性についての実証実験に成功しました。この手法を用いることで、新薬の開発者は標的分子の精密な構造を求めることができるだけでなく、標的分子と各種医薬品の相互作用の強さ、つまり医薬品としての強さを正確に予測することができるようになります。 【今回の実証実験の概要】抗エイズ・ウイルス剤開発の標的分子であるHIVプロテアーゼを用いてLocalSCF法の性能を検証しました。HIVプロテアーゼの働きを十分阻害する薬は抗HIV剤になり、現実的にこのタイプの医薬品が臨床的に使われています。富士通と東海大学は、現在臨床的に使用されている数種の阻害剤とHIVプロテアーゼの結合の仕方を、LocalSCF法を使って実用的な時間内で得ることに成功しました。 つまり、LocalSCF法を活用すれば、コンピュータ上での医薬品探索が医薬品開発現場のタイム・スケールの中で十分に可能になることを示しています。 【今後の展開】創薬の現場では、非常に多くの化合物について探索を行う必要があり、この過程には多くの時間と資源が必要になります。したがって、この過程に強力かつ迅速なコンピュータによる探索法を導入することは、医薬品開発のスルー・プットを大幅に向上させることにつながり、医薬品企業だけでなく社会全体の医薬品開発に要する負担を大きく軽減することになります。また、LocalSCF法などを活用したコンピュータによる探索法は、医薬品開発にかかる時間や経費の単なる節減だけではなく、近い将来には、副作用などの問題を未然に予測する手段としても活用されることが十分可能です。 富士通と東海大学は、今後も医薬品開発への貢献と技術の向上に邁進していきます。 【商標について】
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