[ PRESS RELEASE ] (技術) |
2003-0204
2003年10月31日
株式会社富士通研究所 |
家庭やオフィスのPCを外出先から快適に利用する
ポケットサイズの情報端末を試作
近年、企業内においては、イントラネットの高度化による生産性の高いオフィス環境の構築が進み、また家庭内においても、ホームネットワークの導入やホームサーバ(*4)の利用など、パソコンの利用環境の高度化が進みつつあります。さらに、無線LANホットスポット(*5)やワイヤレスパケット網などの普及に伴い、場所・時間を問わず、外出先など、現実のユビキタスな環境下のユーザをサポートするITソリューションへの期待が高まっています。
このようなユビキタスネットワークやユビキタスコンピューティングの環境の進展に伴い、手軽に持ち運べ利用できるポケットサイズの情報端末により、外出先から家庭やオフィスのPCの環境をそのまま利用できる機能や、ユーザやユーザの場所・状況、周囲の身近なモノなどの情報を認識し、それに応じた情報サービスの提供を可能とするITソリューションが強く求められています。
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図1 試作した端末 |
【課題】
これらのユビキタス社会を支えるソリューションを実現する上で、従来のPDA(*6)や携帯電話などのポケットサイズ情報端末は、表示性能および品質、操作性などにいくつかの課題を抱えています。これまでの情報端末では、PCと比較してディスプレイの解像度が低いために、PCの画面を表示しコンテンツを閲覧する上で、縮小表示して全体を閲覧するか、ユーザが頻繁に画面のスクロールをおこなう必要がありました。
また外出先から家庭内ネットワークへのアクセスなどを可能にする、ユビキタスなネットワーク接続技術も現在整備されつつありますが、無線LANホットスポットなどからポケットサイズ情報端末により、家庭内のパソコンへのアクセスを実現するには、使い勝手、セキュリティ面などの運用面に課題があります。
【開発した技術】
今回、世界で初めてPCクラスの表示性能を持つ4インチSVGAディスプレイを搭載したポケットサイズの情報端末を試作するとともに、ネットワークサービス(*7)とホームゲートウェイ(*8)を連携させることで、宅外から宅内PCへのセキュアなリモートアクセスを実現する技術を開発しました。今回試作開発した技術の主な特長は、以下のとおりです。
- 4インチSVGA表示機能を実現したポケットサイズ情報端末 (図1)
フィールド・シーケンシャル・カラー方式(*9)を採用した当社独自の4インチSVGAディスプレイの搭載により、ポケットサイズの情報端末において、PC向けのコンテンツをそのまま利用可能としました(図2)。今回、高精細SVGA表示と合わせて、ハードウェアによる高速なズーム表示機能を開発し、スピーディかつ的確な情報閲覧を実現しました。
また、802.11b無線LANおよびBluetooth(*10)、IrDA(*11)機能を搭載し、LAN、PAN(*12)などとの接続、さらにコンパクトフラッシュカードソケットによるPHSなどの公衆網(WAN)への接続など、各種ネットワークへの接続を可能としました。
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図2 Webページ表示例
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- 宅外から宅内PCへのセキュアなリモートアクセス (図3)
ネットワークサービスとホームゲートウェイが連携し、自宅にあるPCに対して、外出先から簡単かつセキュアにアクセスする技術を開発しました。本技術により、Microsoft®社のリモートデスクトップ機能(*13)やVNC(*14)などのPCのリモートアクセス機能を用い、宅外から簡単かつセキュアに自分のPCへアクセスし、PC上の各種ファイルの閲覧やアプリケーションソフトの実行、制御が可能となりました。
図3 宅外から宅内PCへのセキュアなリモートアクセス
【効果】
今回試作した4インチSVGA表示機能が可能なポケットサイズ情報端末により、情報閲覧における一覧性と操作性が大幅に改善されるとともに、ユビキタスなネットワーク環境を利用した柔軟なITソリューションの展開が可能となります。さらに、宅外から宅内PCへのセキュアなリモートアクセス技術により、本ポケットサイズ情報端末を使い、いつでもどこでも、家庭やオフィスのPCに、簡単かつセキュアにアクセスし、そのPCの利用環境をそのまま快適に利用することが可能となりました。
これらの技術によって、ユビキタスな利用環境においても、ポケットサイズ情報端末により、パソコンと同じコンテンツやアプリケーションの閲覧や操作が可能となり、ユビキタスなソリューションを構築する際に、新たな専用コンテンツの作成やコンテンツ変換の必要がなく、シームレスで効率的なITソリューションの展開が可能となります。
【今後】
今回開発した、宅外から宅内PCへのセキュアなリモートアクセス機能をベースに、さらに携帯端末とPC、ホームゲートウェイ、ネットワークサービスなどが密に連携した、より利便性の高いビジネスソリューションを検討していく予定です。
また、ユビキタス社会の実現に向けて、非接触ICカードやRFIDといったデバイスのセンサ、位置情報に基づいたサービス連携のためのロケーション情報取得技術、より高精細画面に適したユーザ・インタフェースの開発などをおこない、ビジネス市場、コンシューマ市場ともにさまざまなソリューションの検討を進めていきます。
【商標について】
- 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
用語説明
- (*1) 株式会社富士通研究所
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社長:藤崎道雄、本社:川崎市
- (*2) SVGA
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パソコンのディスプレイ画面で標準的に使われるモードの一つで、800×600ピクセルの解像度のこと。
- (*3) ユビキタス
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本来、「至るところにある、遍在する」という意味の英語。1989年にXerox社のパロアルト研究所が提唱したユビキタスコンピューティングの概念を指す。生活や社会の至る所にコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して動作することにより、人間の生活を強力にバックアップする情報環境のこと。
- (*4) ホームサーバ
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家庭内に設置されたサーバのこと。データ保存機能や各種ネットワークサービス機能などを持つ。
- (*5) ホットスポット
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無線LANやBluetoothなどのアクセスポイントを設置し、無線でのインターネット接続サービスを不特定多数の利用者に提供している空間のこと。
- (*6) PDA (Personal Digital Assistance)
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個人情報管理を主目的とした小型携帯端末装置。
- (*7) ネットワークサービス
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インターネット上でおこなわれる各種サービス。
- (*8) ホームゲートウェイ
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公衆のインターネット網と家庭内のネットワークとを仲介するゲートウェイのこと。
- (*9) フィールド・シーケンシャル・カラー方式
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参考文献:
- 2003年SID 44.2: Super-High-Resolution FLC Display Based on Field Sequential Color Method with Low Driving Voltage
- 2001年日本液晶学会討論会 2PC10 : 強誘電性液晶のTFT駆動に及ぼす蓄積容量の効果
- 2000年SID 52.1 Invited Paper: A 254-ppi Full-Color Video Rate TFT-LCD Based on Field-Sequential-Color and FLC Display
- 1999年 AM-LCD A Full-color FLC Display Based on Field Sequential Color with TFTs
- (*10) Bluetooth
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Ericsson、IBM、Intel、Nokia、東芝の5社が中心となって提唱している携帯情報機器向けの近距離無線通信技術。ノートパソコンやPDA、携帯電話などを、ケーブルを使わずに接続し、音声やデータをやりとりすることができる。
- (*11) IrDA
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赤外線を利用した近距離のデータ通信方式。通信可能距離0.2〜1m、通信速度115.2kbps〜4Mbps。主にデスクトップコンピュータとノートパソコンなどの携帯型コンピュータを接続するのに使われるが、最近ではコンビニエンスストアの決済などの通信手段として使われている。
- (*12) PAN (Personal Area Network)
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BluetoothやUWBなどの近距離無線通信方式のこと。基地局やアクセスポイントが不要で、インフラを持たない場所で安価にネットワークを構築することができ、ある限られた域内での簡易なネットワークの構築の手段として有効である。
- (*13) リモートデスクトップ
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Microsoft Windows® XP Professionalに搭載されている、遠隔地からのWindowsの操作を受け付ける機能。クライアントはWindows XPにはあらかじめインストールされているほか、Windows 9x/NT/2000、CE.NETへのインストールが可能。4〜6kbpsと低速な回線でも軽快に動作するため、電話回線などを通じて利用することもできる。
- (*14) VNC (Virtual Network Computing)
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ネットワークにつながった他のコンピュータの画面を遠隔操作するソフトウェア。イギリスのOlivetti Research Laboratory(1999年1月にAT&T Laboratoryが吸収)が開発し、フリーソフトウェアとして無償で配布している。操作される側(サーバ)はWindows 95/98、Windows NT、UNIXに対応している。操作する側(クライアント)は、Javaアプレットを実行できるWebブラウザに対応しているため、Webブラウザが動作するOSであれば何でもよい。LANでの使用を想定しているため、電話回線などの低速な回線では実用的ではない。
関連リンク
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