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グリッドコンピューティング用ミドルウェアにより、
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今回開発した技術により、大量のシミュレーションの実行時間および工数を大幅に短縮することが可能となります。製造業における設計期間の短縮やコストの削減、金融業におけるリスク管理シミュレーションの精度向上など、さまざまな分野への応用が期待されます。 本研究開発は、IT基盤「TRIOLE」を支えるコア技術(「自律」「仮想」「統合」)開発の一環としておこなっています。
グリッドコンピューティングは、地理的に分散した、複数の性能の異なるサーバやPCなどのコンピュータ資源を、ひとつの高性能なコンピュータとして利用可能とする仮想化技術として研究開発が進められているものです。これにより、既存のコンピュータ資源を有効に活用した大量の計算が実行可能になると期待されています。
その応用については、超高速な処理が求められる演算を複数のスーパーコンピュータを利用して実行するなど、大学や研究機関がおこなう科学技術分野が中心でした。
今回の開発は、グリッドコンピューティングが、実際のビジネスの現場で利用可能なことを具体的に示すためのものです。ターゲットは、大量のシミュレーションを実行している製造業としました。
製造業では、設計期間の短縮や高信頼設計のために、多くの種類のシミュレーションを大量に実行しています。しかし、処理内容の異なる複数のシミュレーションを同時に効率的に実行できない、期間や費用の面から十分なシミュレーションを実行できない、などの問題がありました。シミュレーションが十分におこなえないために、開発の後工程での不具合や再設計といった問題が発生する場合もありました。
また、従来のグリッドコンピューティング用ミドルウェアでは、サーバシステムのリソース管理は可能でしたが、依存関係のあるジョブの柔軟な実行管理と連携しながら、リソースの有効活用やデスクトップPCとの連携をおこなうことはできませんでした。このため、企業内システムを活用しながら実際の装置設計のためのシミュレーションがおこなえるミドルウェア技術が求められていました。
上記の問題を解決するために、グリッドコンピューティング用のミドルウェアに求められる課題をまとめると以下のようになります。
今回開発したグリッドコンピューティング用のミドルウェアは、「オーガニックジョブコントローラ」と「グリッドリソースマネージャ」からなる、企業内のIT資源を仮想化するための技術です。開発した技術の特長は以下の通りです。
今回開発したグリッドコンピューティング用のミドルウェアを用いて、富士通研究所と富士通生産技術本部は共同で、CAD-GRIDシステムを構築し、海外向けUMTS基地局装置開発のためのシミュレーション業務に適用しました。なお、今回の実験では、従来生産技術本部が利用していたシミュレーションプログラム自体には全く手を加えていません。
実験は表1に示すコンピュータリソースを利用しておこないました。表2に示すように、シミュレーション期間を3分の1に短縮し、さらにシミュレーションに要する作業工数を従来の10分の1以下に削減することに成功しました。
使用したマシン | CPU 数 | 設置場所 |
PRIMEPOWER(Solaris) | 16 CPU | 富士通生産技術本部 |
PCクラスタ(Linux) | 45 CPU | |
PRIMEPOWER(Solaris) | 62 CPU | 富士通研究所 IDCラボ |
Organic Server (Linux) | 200 CPU |
シミュレーション規模 | |
投入ジョブ数 | 4,720 本 |
計算処理時間合計 | 31,000 時間 |
シミュレーション実施期間 | |
今回の実験期間 | 2003年2月24日〜4月30日(66日間) |
従来環境での所要日数 | 200日(約7ヶ月) |
シミュレーションに要する作業工数 | |
今回の作業工数 | 0.8人月 |
従来環境での作業工数 | 10.5人月 |
今回開発したグリッドコンピューティング用のミドルウェアによって、製造業における設計作業のように複雑かつ膨大な演算量を必要とするシミュレーションや、金融業におけるリスク管理・デリバティブ計算のように短時間に多数の計算を必要とするシミュレーションについて、期間短縮やコスト削減が図れるため、企業の生産活動や意思決定をより迅速におこなえるようになると期待されます。また、コンピュータ資源の有効活用によって、従来は期間やコストの面から利用しにくかった分野でもシミュレーションが利用されるようになると期待されます。
今後は、対象をノイズ解析・熱解析シミュレーションに拡大して社内実証実験を継続すると共に、製造業以外へ対象分野を拡大し、併せて、社外での実証実験もおこなう予定です。
なお、「オーガニックジョブコントローラ」の開発の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成(テーマ名「高信頼・低消費電力サーバの研究開発」)を受けておこないました。
以上
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