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ハフニウム・アルミネート
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開発した技術は、ゲート絶縁膜の実効的な厚さが1ナノメートルを切る65ナノメートル世代などの次世代半導体LSIを実現するのに有効な技術になると期待されます。
本技術の関連発表は、3月27日から神奈川大学で開催された応用物理学会で行いました。
CMOSトランジスタは、高性能化のため微細化が進み、ゲート絶縁膜は近い将来1ナノメートル以下になることが予想されています。
従来、CMOSトランジスタにはゲート絶縁膜としてシリコン酸化 (SiO2) 膜が用いられてきましたが、この膜厚が1ナノメートル程度になると、1) 絶縁性能の低下によりリーク電流が増えるため消費電力が増える、2)ホウ素などの不純物が上部のゲート電極から絶縁膜中へ拡散する、といったトランジスタとしての性能や信頼性を低下させる新たな問題を生みます。そのため、現在、高誘電率ゲート絶縁膜の開発が活発に進められています。
高誘電率ゲート絶縁膜は、SiO2膜に比べて誘電率が高いため電気的特性を劣化させずにゲート絶縁膜としての実効的な厚みを薄くすることが可能です。しかし、従来検討されてきたハフニウム酸化物(HfO2)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、アルミニウム酸化物(Al2O3)などの材料では、絶縁性、熱的安定性、誘電率などの特性を全て満足する性能を有するものが得られませんでした。たとえばハフニウム酸化物では、誘電率では優れた特性を持つものの、500℃で結晶の格子が整列してしまい、このことによって生じる漏れ電流によって十分な絶縁性を得ることができませんでした。またアルミニウム酸化物では、絶縁性にはすぐれているものの誘電率が十分に高くはありませんでした。このため、すべての特性を満足する混合系材料の組成を最適化する手法の開発とこれによる材料開発が望まれていました。
当社は、これまでの高誘電率ゲート絶縁膜の有する問題点を解決するために、混合系材料であるハフニウム・アルミネート(HfAlO)に着目し、分子動力学シミュレーション(*2)と実験とによってその組成比を最適化することに成功しました。
まず分子動力学シミュレーションにより、HfAlO膜のアルミニウム組成比が20%以上であれば熱処理による結晶化を抑制でき、絶縁特性を改善できる可能性があるという見通しを得ました(図1)。
実際にアルミニウムの組成比を系統的に変えたHfAlO膜を作成し、X線回折で結晶構造を調べた結果、アルミニウムの入らないハフニウム酸化物(HfO2)では500℃の成膜直後ですでに結晶化しているのに対し、少なくとも20%程度のアルミニウムを混合することで結晶化が抑制され、800℃の熱処理においても結晶化が進行していないことを見出しました(図2、図3)。
さらに、CMOSトランジスタの重要な指標であるゲートリーク電流を調べたところ、アルミニウム組成比が20%で最小となっていることが明らかになりました。(図4)。誘電率においてもハフニウム酸化物に劣らないことを確認しています。 以上のことから、ハフニウム酸化物に対してアルミニウムを20%程度添加したハフニウム・アルミネート絶縁膜が、次世代CMOSデバイスに適用する高誘電率ゲート絶縁膜として有望であることを見出すことができました。
今後は本技術をさらに発展させ、熱的安定性の一層の向上とCMOSトランジスタの電気的特性の向上などの技術課題に取り組み、次世代CMOS LSIの開発を加速してまいります。
図1 シミュレーションによる熱処理後の結晶化の様子。アルミニウムを20%以上含むHfAlO膜では結晶化が抑制される。 |
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図2 X線解析スペクトル。アルミニウムを添加することでHfO2結晶による信号は観測されなくなる。 |
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図3 トランジスタのゲート構造形成後の断面写真 |
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図4 リーク(漏れ)電流もアルミニウム組成比20%で最小となる |
以 上
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