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[ PRESS RELEASE ]
2003-0057
平成15年3月27日
株式会社富士通研究所

世界初! 構成を動的に変更可能なニューラルネットを用いた
ヒューマノイドロボットの動作学習に成功

株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、構成が動的に変化するニューラルネットワーク(*1)を用いて、ヒューマノイドロボットの効率的な動作学習が行なえるシステムの開発に世界ではじめて成功しました。

今回開発したシステムを用いると、複雑な制御を必要とするヒューマノイドロボットの動作生成がきわめて容易になり、ヒューマノイドロボットの応用開発が飛躍的に進むと期待されます。

なお、本システムの詳細は、4月3日から6日、パシフィコ横浜で開催される“ROBODEX2003”にて一般公開します。また、3月18日に静岡県浜松市で開催されたロボティクス・シンポジアで発表しました。

【開発の背景】

近年、人間共存型ロボット(*2)、特に、ヒューマノイドロボットの研究が盛んに行われており、近い将来、人間と共にさまざまな仕事をするロボットの実用化が期待されています。しかし、従来、ヒューマノイドロボットの制御や動作生成には、複雑な力学計算が不可欠で、高速のコンピュータを必要としていました。また、ロボットが実際に使われる場面や状況に合わせて、その動作を臨機応変に変更するためには、さらに高速のコンピュータが必要と考えられていました。

この問題を解決するために注目されたのが、生物のしくみを真似たニューラルネットワークによる制御法です。しかし、これまでのニューラルネットワークは、学習速度が遅く、動作を学習するのに、数日〜数ヶ月を要しており、多様な動作を効率よく学習することができませんでした。

【開発した技術】

今回開発したのは、脊椎動物で存在が確認された神経振動子(*3)を数学的にモデル化したCPG(Central Pattern Generator *4)を基本構成単位とし、これを組み合わせたニューラルネットワークの構造や結合状態を、数値摂動法(NP法:Numerical Perturbation Method *5)を使って最適化することで、ロボットの各種の動作を学習する「CPG/NP学習法」です。

また、この技術を使って、ヒューマノイドロボットにさまざまな動作を学習させるためのソフトウェア「ヒューマノイド動作生成システム」も同時に開発しました。

ニューラルネットワークの基本構成単位であるCPGの例を図1に示します。左図は正弦波信号を出力する機能を持ったCPGです。右図は基本正弦波を出力するCPGに、3次・5次といった高次の正弦波を出力するCPGを加算することで、さらに複雑な波形を作り出すニューラルネットワークの例です。このニューラルネットワークからの出力を使って、ロボットの関節を動かすことにより複雑な動作をさせることができます。

たとえば、図2に示す起き上がり動作では、CPG5個を用い、約20秒で動作を学習できました。また、歩行動作はCPG 9個、階段の昇降動作はCPG 39個を用いて、それぞれ学習時間約50秒、約80秒で実現できました。

図1 CPGの例とCPGを用いたNP法の模式図
図2 本手法を使って作成した起き上がり動作とそれを実現したニューラルネットワーク

今回開発した技術とシステムの特長は以下のとおりです。

  1. 従来にない柔軟な学習が可能
    動的に変更可能な複数のCPGからなるニューラルネットワークを用い、ヒューマノイドロボットの最適な動作を、NP法を使って探し出すことで、柔軟な動作学習が可能です。動作を学習するには、まず初期状態のニューラルネットワークを用いてロボットの動作を作り出します。これをあらかじめ設定した評価関数で評価し、動作の良し悪しを決定します。CPGおよびCPG間の結合係数を少しずつ変えながら動作を変化させ、うまく動作が生成できるまで続けます。その際、今回開発した方法では、必要に応じてNP法が新たにCPGを生成させたり、組み合わせを変えたりして、ニューラルネットワークの構造を動的に変えながら自動的に適切な運動を探し出します。
    単に結合係数だけでなくネットワークの構造そのものを変化させながら学習することで、複雑で多様な動作を学習させることが可能です。
  2. ソフトウェア規模が小さく、高速学習、高速実行が可能
    今回開発した手法では、動作制御に必要なソフトウェア規模は、従来の力学的手法に比べ10分の1以下と小さく、また、学習に必要な時間は理論上、10のマイナス30乗以下(20自由度のロボットの場合)と、きわめて短くなります。このため、ロボットが実際の環境の中で動きながら、適応的に学習していくことができ、臨機応変な動作生成が可能となります。
    図3に、この手法で作り出した階段昇降と文字を書く動作に対するニューラルネットワークを示します。
図3 「階段昇降」と「文字を書く」動作を学習したニューラルネットワーク
  1. ヒューマノイド動作生成システム
    今回の技術を効率よく利用するため、ヒューマノイド動作生成システムを試作しました。ニューラルネットワークの表示・編集部、ロボットシミュレータ部、実機インタフェース部から構成され(図4)、力学的な専門知識を持たない人でもヒューマノイドロボットの動作生成が自在にできるようになっています。ニューラルネットワークを記述するための専用のプログラミング言語(ニューラルネットワーク言語)も開発しており、ネットワークを直接、作成・編集することも可能です。

なお、このシステムは、富士通オートメーション株式会社(社長:網代 泰一、本社:栃木県塩谷郡喜連川町)が販売中のヒューマノイドロボット「HOAPシリーズ」の付属ソフトウェアとして、2003年中に提供を開始する予定です。

図4 ヒューマノイド動作生成システムのスクリーンショット

【用語解説】

*1 ニューラルネットワーク
人間や動物の神経網を数学的にモデル化したものです。文字認識、形状認識などに用いられ成果をあげています。
*2 人間共存型ロボット
鉄腕アトムのように人間と共存し、人間の役に立つロボット。工場にある産業用ロボットとは異なり、制御手法、安全性等にさまざまな研究課題があります。
*3 神経振動子
動物の中に存在し、周期的なリズムを発生すると考えられている神経系。
*4 CPG(Central Pattern Generator)
複数の神経振動子を組み合わせた神経振動子結合系で、ミミズやヤツメウナギのような動物で存在が確認されています。工学的には新しいタイプのニューラルネットワークです。
*5 数値摂動法(NP法:Numerical Perturbation Method)
解析的に解を求めることが困難な非線形系の解を近似的に求める解析手法に摂動法があります。古くは、惑星の軌道計算に用いられ、最近では流体力学や量子力学で用いられている手法です。数値摂動法(Numerical Perturbation Method)は、摂動法をコンピュータで数値的に処理する手法です。

【商標について】

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以 上

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