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極薄のCMOSゲート絶縁膜中の微量窒素を精密解析株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎)は、CMOSトランジスタのゲート絶縁膜(*1)中に微量に混入されている窒素原子の濃度と結合状態を解析する新技術を開発いたしました。 開発した技術は、フッ酸水溶液中でエッチングすることによって得られるゲート絶縁膜の水素化表面を表面赤外分光法(*2)で観測するもので、この手法を用いると、薄膜化が進むゲート絶縁膜中に混入させた窒素の深さ方向の存在量と、その結合状態を次々世代と言われる45ナノメートル(nm)世代の半導体まで解析することが可能になります。 【開発の背景】CMOSトランジスタの高速化、微細化に伴い、将来のゲート絶縁膜は1nm以下の薄さになることが予想されます。このような極薄膜になると、絶縁膜を介した不純物の拡散や絶縁性能の低下といった問題が起き、LSIの正常な動作の妨げになってしまいます。このような問題を解決するために、90nm世代以降の先端CMOSデバイスのゲート絶縁膜には、従来用いられてきたシリコン酸化膜(SiO2)に微量の窒素原子を混入させた膜が採用されています。 しかし、半導体に混入された窒素原子は、膜中だけでなく、シリコン基板との界面にも存在し、この界面にある窒素によって、デバイス性能が損なわれてしまうため、導入する窒素の量と存在する位置を精密に制御する必要があります。窒素を導入するには、シリコン酸化膜形成後に窒素プラズマ、または窒素を含むガス中にさらす方法が一般的ですが、同じ濃度の窒素を導入しても、その導入効果に大小があるため、窒素原子の結合状態も含めた制御が必須となってきています。 また、絶縁膜中の原子を分析する従来方法であるX線光電子分光法(XPS)や2次イオン質量分析法(SIMS)では、極薄膜中にある原子の深さ方向の存在量やその結合状態を知ることは非常に困難でした。 【開発した技術】当社は、窒素を導入したゲート絶縁膜をフッ酸溶液に浸すと、ゲート絶縁膜自身が溶解するのと同時に膜中に存在する窒素原子が表面に露出し、溶解反応により切断された表面側の結合手に水素原子が吸着し、窒素-水素(NH)結合が形成されることを見出しました(図1)。溶解量をパラメータとして、露出表面におけるNH結合の振動の吸収量を表面赤外分光法で検出すれば、ゲート膜中から界面までの窒素原子の存在量がわかり、さらにその熱振動数から窒素に結合している原子、化学構造までもが特定できます。
この現象を利用して、以下に示すゲート絶縁膜中、及び界面に存在する窒素の検出方法を開発し、極薄ゲート絶縁膜中にわずかに導入させた窒素原子の、膜中と界面における結合構造、及び存在量の解析に初めて成功しました。
フッ酸水溶液中で、窒素を混入したゲート絶縁膜をわずかに溶解した後の表面赤外分光スペクトルを図2に示します。図から波数が少ない部分にNH構造による吸収が観測でき、酸化膜中の酸素原子の位置に窒素原子が置換された構造A(図3)が存在していることがわかります。フッ酸水溶液中でエッチングする時間を長くしても膜表面が露出している間はピーク波数に変化はありません。しかし、シリコン基板が露出し始めると、NH構造による吸収のピークが低波数側にシフトし、シリコン基板と直接結合した構造B(図3)が出現した証拠が得られました。吸収量に着目すると、ゲート絶縁膜中での窒素濃度は一定で、界面にも膜中とほぼ同量の窒素が存在することがわかりました(図4)。
開発した技術は少なくともゲート絶縁膜の厚さが0.5から0.8nmと予想される次々世代の45nm世代まで適用可能と考えられ、今後の最先端LSIの開発に活用していく予定です。 【用語解説】以 上 関連リンク
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